SUPERTRAMPへの参加や、数々の有名アーティストのアルバム、そして映画・TVドラマ等のサントラへの参加などLAのスタジオシーンで活躍中の凄腕ギタリスト、ミュージシャンであるCarl Verheyen (カール・ヴァーヘイエン)。 ここはCarl自らがギターに関する様々な質問に答えるコーナーです。
Question :
あなたはフロイドローズなどのロック・タイプ式のトレモロではなく、ヴィンテージタイプのトレモロを使っています。 ヴィンテージタイプのトレモロはロック式タイプよりもチューニング、ピッチをキープすることが難しいように思われますが、チューニング、ピッチをキープするために何か工夫している点はありますか?
Answer :
僕のアドバイスとしては「弦の張力と、ボディ裏のブリッジのスプリングの張力を同じにする」ことをお勧めするよ。 弦のテンションは低音弦側と高音弦側とでは違ってくる。だから弦のテンションとのバランスを取る為にボディ裏のブリッジを支えているスプリングを低音弦側、高音弦側で調整するんだ。 この方法が君たちの参考になるとうれしいよ。
今回CarlがアドバイスしてくれたトレモロのセッティングについてLsLのCarl Verheyen Signatureギター “CV Special”を扱っているZENBU JAPANの代表 井上氏より補足してコメントを頂きました。
<ZENBU JAPAN 代表 井上氏のコメント>
Carlのギターのセッティングに関しては、フローティング状態でダウンおよびアップの何れもがスムースに行え軽快なヴィブラート操作が可能なことに加え、Carl Verheyen独自のセットアップとしてフローティング状態(=通常チューニングの状態)から目一杯アップした際に(=ブリッジ・プレートがボディ・トップに密着するまでアームアップした状態)、1E・2B・3Gの各弦の開放が下記のようにアップするよう上げ幅を固定(プリセット)したセットアップとすることが要求されています。
1E: 半音 (E→F)
2B: 1音 (B→C#)
3G: 1音半(G→B♭)
このセットアップはスプリング・ハンガーの取付けネジの深さを変えることによるスプリングの張力調整によって行い、弦の張力とスプリングの張力が釣り合い、且つフルにアップした時に上記の上げ幅が得られるよう微調整を繰り返します。
また、スプリング・ハンガーの取付けネジの深さが左右同一でないのは、1弦側と6弦側の弦の張力の違いに合わせたもので、ダウンおよびアップの状態からの「戻り」の良好さとバランスを意識したものですが、個体によって若干の差異が生じるようです。 これだけの上げ幅を確保するためには一般的なフローティング・ブリッジのセッティング(ブリッジ・プレートとボディ・トップ面にケント紙1枚程度の隙間を設ける程度)よりもブリッジ本体が弦の張力によってヘッド側へより引っ張られた状態とする必要があり、さして特別なことではありませんがこの状態に合わせて6本のスタッド・スクリューの高さを調整しています。これによって、軽いヴィブラートからストリングス・ベンダー的な使い方までが可能になりますが、上げ幅を多く取ることによって同時に微妙なチューニングの修正が行いやすくなります。 これは各々のプレイヤーのトレモロの使い方によりますが、弦の装着方法やナット溝の調整を含め正しくセットアップされた楽器において、大幅なアーム・ダウンによるチューニングの狂いをアーム・アップで修正する方法はトレモロを多用するプレイヤーの多くが行っているものと思われ、ことCarl Verheyenにおいてはその奏法を見る限り殆ど無意識に修正しているようです。
また、特徴的なのは弦の巻き方です。プレーン弦(1、2、3弦)は変わりはありませんが4、5、6弦のラウンド弦はチューニングキーポストの下部から上部に向かって巻いています。通常はこのようなことはしませんがベンドアップダウンの時のスムースな弦移動を目的としているようです。
Carl VerheyenのSignatureギター “CV Special”についてのお問合せ先
ZENBU JAPAN 電話 06-6441-2263 http://www.zenbu-jp.com/
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