Vol.87 Clif Magness / July 2018

Clif Magness

自身の活動はもちろん、共同作曲者やプロデューサーとして数多くの音楽プロジェクトにて素晴らしい実績を築いてきたクリフ・マグネス。クインシー・ジョーンズとの “THE PLACES YOU FIND LOVE” ではグラミー賞を共同受賞し、ジャック・ワグナーの代表曲となった”ALL I NEED”(1984年)、ウィルソン・フィリップスのヒット曲”Impulsive”(1990年)、日本のロック・ファンにもお馴染みのジャーニーのスティーヴ・ペリーのアルバム「FOR THE LOVE OF STRANGE MEDICINE」やアヴリル・ラヴィーンのヒットアルバム「LET GO」など数多くのミュージシャンの作品にその名を連ねている。

また、ジェイ・グレイドン、グレン・バラードとの作品「PLANET 3」(1991年) においてはボーカル、ソングライティングでAOR、ロック・ファンを魅了している。音楽界で多大な実績を誇るクリフが自身のニュー・アルバム「LUCKY DOG」をリリース。新作「LUCKY DOG」は、クリフの魅力であるクリアーなボーカル、キャッチーで爽快なメロディ、重厚なコーラス、そして曲を最高に惹きたてるアレンジで彩られた楽曲が満載の素晴らしいAOR、ROCKアルバムとなっている。
新作「LUCKY DOG」についてクリフに訊いた。

Interview / Text  Mamoru Moriyama
Translation         Hiroshi Takakura

Muse On Muse (以下MM) : 新作「LUCKY DOG」では、あなたの魅力であるクリアーなボーカル、キャッチーで爽快なメロディ、重厚なコーラス、そして楽曲を最高に惹きたてるアレンジで彩られた楽曲が満載の素晴らしいAOR、ROCKアルバムとなっています。このタイミングでソロ・アルバムを制作しようと考えた理由をお聞かせ下さい。
Clif Magness (以下CM) : 素晴らしいフィードバックをありがとう。SNSが定着した事によって「Solo」や「Planet 3」といった作品が好きな熱狂的なファンと直接やり取りできるようになり、ファンが新しいクリフ・マグネスのLPを求めてくれたんだ。そういった声を聞く事によってまた作品を作りたいっていう新たな気持ちが芽生えたんだ。

MM : あなたは様々な楽器をプレイできるマルチ・ミュージシャンとしても知られています。アルバムにおけるギターをはじめとした各パートはあなたがプレイしているのでしょうか?
CM : ほとんどが自分で演奏したけど、息子のエヴァンも何曲かでギターを弾いている。良き友人であるトミー・デナンダーも「Shout」で強烈なギターソロを弾いてくれた。「Ain’t No Way」でドラムを担当したのはジョシュ・フリーズで「Nobody But You」でバグパイプを吹いてくれたのはプレストン・ハワードだ。

MM : あなたとジェイ・グレイドン、グレン・バラードのプロジェクト Planet3には日本に根強いファンもいます。例えば、今回の作品に対してジェイにギターで参加してもらうことを考えたりはしましたか?
CM : 残念ながらグレンとジェイとはレコーディングのスケジュールが合わなかったんだ。

MM : アルバムに収録する楽曲の準備はどのように進めたのでしょうか?
CM : まず最初にマーク・ミューラーにコンタクトを取ったんだ。彼とはずっと一緒に仕事してきて、アルバム「Solo」では「If We Can’t Do It」、「It’s Only Love」、「What’s A Heart To Do」の3曲を共同プロデュースした。今アルバムではまず「Ain’t No Way」のイントロのギター・リフと直後のヴァースとコーラス部分を書いて、マークに一緒に作詞をしてもらうよう頼んだ。この曲がアルバムの土台となる音色と、アルバム全体の方向性を示してくれたんだ。

MM : あなたが作り出す曲は、時にはとてもキャッチーであり、時には美しく、哀愁を帯びるといった・・曲が持つ万人受けする秀逸なメロディが印象的です。それらは如何にして生み出されるのでしょうか?
CM : 自分はクインシー・ジョーンスの会社クエストに所属しているプロデューサーだったんだ。クインシーは常に「メロディーこそがキングだ!」と言っていた。ビートルズが残した全ての曲も自分にとっては凄く感情的だから、そういった曲を聞いて育った事も影響していると思う。自分は音楽を聞いた時にエモーショナルになりたいんだ。だから自分の曲を聞いたリスターも同じ思いをして欲しいし、そういう作品を作るようにしているよ。

MM : アルバムでは”Unbroken”、”Rain”、”My Heart”などの美しい楽曲から、”Aint No Way”、”Shout”などのようにデフ・レパードなどのファンにもアプローチするような素晴らしいロック・ナンバーが揃っています。
CM : 音楽、特にアルバムを聞く時には人生と同じようにアップダウンや緩急が必要だと思っていて、もちろんこのアルバムでも変化や強弱が必要だった。ライブでのパフォーマンスも同じだね。

MM : “Love Needs A Heart”ではボーカル・デュオが印象的です。
CM : ロビン・ベックの事は昔からずっと大好きで、このプロジェクトは彼女と一緒に曲を書いてデュエットできる良い機会だった。シェリー・アダムスとの曲もそう。Facebookを通じて彼女達とコンタクトを取って、一緒に曲を作る事ができた。テクノロジーの恩恵を借りて、自分のヴォーカルはカリフォルニアで、ロビンの声入れはフロリダで行った。

MM : アルバムの各曲で聴くことができるコーラスワーク、美しいハーモニーはあなたらしさの一つでもありますが、それらについてあなたが影響を受けた原点となるアーティストはいますか?
CM : 両親が歌手だったんだ。母は聖歌隊のリーダーで、母の聖歌を教会で聞いて育ったからその影響が大きいと思う。ロック歌手で影響を受けたのはマンフレッド・マンのクリス・トンプソンやフリーとバッド・カンパニーのポールロジャースやグランド・ファンクのマーク・ファーマー達だ。もちろんビートルズもね。

MM : アルバムに収録さあれているどの曲においても楽曲映えさせるリズム・ギター、そしてメロディックさが秀逸なギター・ソロが素晴らしいのですが、楽曲におけるギターのあり方についてプロデューサー的観点からのあなたの考えをお聞かせ下さい。
CM : 幸運な事に自分の人生の中で色々な時代の様々なギターと機材を使用する事ができた。アコースティックからエレキ、時代毎のエフェクトやプロセッサー、アンプもそうだね。レコーディングにしてもアナログを経てデジタルも経験したんだ。「Lucky Dog」の全てにKemper Profilerアンプを使用している。セッティングの再現性が高くてレコーディングの作業を早めてくれるんだ。

MM : アルバムではハードなサウンドからクリーンなサウンドまで適材適所で巧みにバランスよく構築されています。
CM : それもKemper Profilerが全てやってくれるんだ。

MM : あなたはこれまでにスティーヴ・ペリー、アヴリル・ラヴィーンといった数多くのミュージシャンに楽曲を提供し、クインシー・ジョーンズとの “THE PLACES YOU FIND LOVE”ではグラミー賞も授賞しています。 彼らと仕事をしてきた中で特に印象に残っているエピソードを教えて下さい。
CM : 私は超が付くほどのジャーニーの大ファンだったから、スティーヴ・ペリーと一緒に曲を作ったのはエキサイティングだったね。ユニークだったのはスティーヴがスタジオで作業している時は常にヘッドフォンをしていて、彼が聞く彼自身の声には常にリヴァーブが激しくかかっていたって事。彼はキャリアのほとんどで大きな会場でライブしてきたから、大きな会場で響くようなリヴァーヴで自分の声を聞く事によってその雰囲気を再現する事ができるんだと思う。

それと言うまでもなくクインシー・ジョーンズと一緒に仕事をした全ての出来事が最高だったね。彼が僕達に話してくれたエラ・フィッツジェラルドやフランク・シナトラ、カウント・ベイシーと一緒に働いていた体験には感動した。彼のスタジオには撮影部隊が常駐していて、常にビデオを撮影していたのも印象に残ってる。

アヴリルに関しては彼女がスターになるなんて思ってもみなかったよ。当時まだ16歳で、曲を描いている時はもの静かで優しい女の子だったんだ。

MM : 自身の曲ではなく、他のミュージシャンに提供する楽曲を制作する際にあなたが心掛けていることは何でしょうか?
CM : 私が他のアーティストに曲を提供する時の考え方は、彼らの曲は彼らの曲だって事だ。音、曲から生まれる物語、例えばファンと握手したりCDにサインしたりといった出来事の当事者やその音楽と共にツアーを廻るのは僕ではなく彼らだ。製作が終われば自分の仕事は終わりだけど、彼らにとってはキャリアが続く限りその曲と付き合って行くって事を理解する事だね。

MM : あなたが作曲やレコーディングなどの音楽制作時に使用している機材を教えて下さい。
CM : DAWは1997年からProtoolsを使用していて、音楽制作においてProtoolsよりも良いプラットフォームがあるとは思わない。自分の秘密はRodeの昔のマイクを使う事。Rodeのマイクはアヴリル・ラヴィーンやケリー・クラークソン、マリー・プレスリー、ケイティ・ペリー、ジュディス・オーウェン、ジョー・ボナマッサ、ザ・ヴェロニカズ、タイラー・ヒルトン、Mozzella、ヴァネッサ・アモロシ、ボー・バイス、クレイ・アイケン、 ザ・コーリング、ミッシー・ヒギンス、アイディーナ・メンゼル、カラ・ディオガルディ、ランドン・ピッグ、Oタウン、ビリー・アイドル、シャルロット・マーティン、ジェシカ・シンプソン、ハンソン、, ジュリア・マイケルズ、マリエ・ディグビー、 ザ・アージ、GOB、イル・スカーレットとタイラー・ワード、そしてもちろん僕自身のレコーディングでも使用したよ!

MM : 今後の予定について教えて下さい。
CM : 「Lucky Don」のアルバムは7月13日に世界同時発売(国内盤は7月4日)になる。アルバムの反響を受けて世界中でのライブを計画すると思う。同時に次回作の準備を始める予定だ。

MM : ファンへのメッセージをお願いします。
CM : ファンの皆さん、君たちが「Solo」や「Planet 3」を聴いた時の感覚をもう一度思い起こす為にこのアルバムを作ったんだ。皆さんにとってエキサイティングで特別な作品になってくれると嬉しいよ。いつもサポートをありがとう!

Clif Magness official site : http://cliftonmagness.com/


Clif Magness / LUCKY DOG

1. Ain’t No Way
2. Don’t Look Now
3. Unbroken
4. Like You
5. Love Needs A Heart
6. Nobody But You
7. Maybe
8. Shout
9. Rain
10. All Over My Mind
11. My Heart
12. Nobody But You (Acoustic Version) JAPANESE BONUS TRACK

PRODUCED BY: Clif Magness
STUDIO: Silverblue Studio
RECORDED BY: Clif Magness
MIXED BY: Clif Magness
MASTERED BY: Keith Blake