Vol.86 Angel Vivaldi / June 2018

Angel Vivaldi

Angel Vivaldi (エンジェル・ヴィヴァルディ)は、自身のYoutubeチャンネルの登録者数が11万、2012年に投稿のミュージック・ビデオ “A Martian Winter” が現時点で視聴回数620万回、その他の楽曲でも視聴回数が数十万回の単位に達しているなどインターネットを中心とした情報発信により多くのギター・ファンからの注目を集めているミュージシャン、ギタリスト。
エンジェルの音楽には、テクニカル、シュレッドといった高度なギター・テクニックはもちろん、それらテクニックを適材適所で使用することで楽曲映えさせる抜群のセンス、ヘヴィで激しい楽曲の中でさえキャッチーで美しい旋律が華麗に舞うさま等、真にアートを感じさせられる。
目下の最新作である「SYNAPSE」では、ゲストにNita Strauss(Alice Cooper)や、Gus Gを迎え入れるなどの話題性、そしてエンジェルの持つ卓越した作曲能力、ギターテクニック、センスが遺憾なく発揮されておりリスナーを強烈に惹きつける作品となっている。
音楽的なバック・グランドや目下の最新作「SYNAPSE」についてエンジェルに訊いた。

Interview / Text  Mamoru Moriyama
Translation         Hiroshi Takakura

Muse On Muse (以下MM) : このインタビューを通じてあなたに初めて接する音楽ファンもいるかと思います。
Angel Vivaldi (以下AV) : ハロー!ニューヨーク出身のソロ・ギタリストのエンジェル・ヴィヴァルディだ。

MM : 音楽に興味を持った当時の年齢やきっかけについて教えて頂けますか?
AV : 13才の時に音楽に夢中になって、15歳の時にニルヴァーナに憧れてギターを始めたんだ。カート・コバーンの様にバンドに所属しながら曲を書きたいと思ってたから、楽器だけ弾こうとは考えた事もなかったんだけど、少しづつリード・ギターの演奏に集中するようになったんだ。

MM : その当時に影響を受けていたミュージシャン、ギタリストを教えて下さい。
AV : メタリカのカーク・ハメットの存在がギター・ソロを弾きたいと思ったきっかけだね。そこからエリック・ジョンソン、イングヴェイ・マルムスティーン、スティーヴ・ヴァイ、ジョー・サトリアーニなどを聴いていた。Testamentは大好きだったし、Tool、Chevelle、 Breaking BenjaminやBlink-182みたいなバンドにも夢中になったね。ハウスに代表される90年代初期のダンスミュージックの時代に育ったし、サルサ、メレンゲ、バチャータみたいな伝統的なラテン音楽も聴いていた。僕はそれら全ての音楽に影響を受けて、今でもその影響は自分の音楽の中に生きている。

MM : あなたは従来からのロックギター奏法はもちろん、現代的なハイ・テクニカルでシュレッドな奏法も身に付け楽曲で効果的に使用しています。それらテクニックはどのように取り組み、現在の高いレベルまで昇華させたのでしょうか?
AV : ギターでの作曲を含めて、努力できる事は全て真剣にやってきた。音楽を始めた時周りにはほとんどサポートしてもらえなかったから難しい挑戦だったけど、今はギタリストとして成長した自分に満足しているよ。

MM : ギタープレイのみならず作曲でも卓越した才能を発揮していますが、作曲能力に関してはどのように取り組み、向上させたのでしょうか?
AV : カート・コバーン、メタリカ、ジョー・サトリアーニ、シェヴェル、ソイルワーク、クリードや他にも数え切れない最高のソング・ライター達の曲を弾く事によって、どうやって曲を書くのか、アレンジするかを自然に学んだんだ。どのパートに一番心を動かされたかを分析して、自分の曲にそういったアイデアを当てはめていくイメージだ。ギターを初めた最初の2年間はそうやって人の曲を聴きながら学習していったんだ。それに飽きてくると自分の音楽を表現するようになった。やればやるほど自分の個性的なサウンドとスタイルが築き上がって来たと思う。もちろん今でも進化の途中だよ!

MM : 現時点での最新作である「SYNAPSE」は、アルバムのトレイラー動画からして芸術性を持った素晴らしい内容です。コンセプトについてお聞かせ下さい。
AV : 「Synapse」は最高にヘヴィーなアルバムさ。アルバムのコンセプトは脳内にある9つの神経伝達物質に関してで、その9つの物質を9つのトラックで表現している。ミュージック・ビデオとコンセプトも密接な関係にある。このビデオは、アルバムカバーの撮影と同時に撮影されたもので、この9つの脳内伝達物質を映像でも表現したかったんだ。

MM : アルバムの曲作り、レコーディングはどのように進められたのでしょうか?
AV : まず9つの曲に9つの色を割り当てたんだ。そしてその曲を書いている時は、割り当てた色にスタジオを塗り替えた。色によって俺の精神状態と浮かび上がるメロディーに大きな影響が出てくるんだ。9つの物質それぞれが引き起こす感情やイメージを表現する為に生活習慣も変えていったんだ。例えばある曲を書く作業は夜だけに行い、ある曲は昼だけ、この曲はジムの後で、他のは恐ろしく眠くなった時に書くといった感じだ。すごく複雑だったけど論理的なやり方だった。

リード・ギター、キーボードとベースは俺の自宅スタジオで録音した。ドラムとリズム・ギターはディリンジャー・エスケープ・プランのギタリストであるケヴィン・アナトレッシアンのスタジオで録った。”Dopamine”と”Oxytocin”ではザ・アルゴリズムのレミ・ガジェーゴに手伝ってもらってキーボードの音をオーバーダブしたんだ。制作の過程は映像に残してあって、「ブリンギング・ザ・シナプス」というドキュメンタリーとして今秋にリリースされる予定さ。

MM : 幻想的かつヘヴィで疾走感を持った”Adrenaline”により聴き手は一気にあなたの世界に惹きこまれます。
AV : これは俺のお気に入りの曲なんだけど、皮肉な事に一番演奏するのが難しい曲でもある。BPMが早く、アグレッシヴかつ美しいメロディーが含まれた曲にしたかったんだ。アドレナリンの色は赤さ。だから赤い部屋の中で曲を作るっているとすごくクリエイティブなアイデアが生まれるし、「赤」の力を借りてすごく集中する事ができる。ジムで激しい運動をした後にスタジオに戻って曲を書くとアドレナリン全開で曲を書く事ができるんだ。

MM : Nita Straussが参加している”Serotonin”はメロディックさと軽快さを併せ持った秀逸なナンバーです。
AV : 前作「アウェイ・ウィズ・ワーズ」の制作時期から”Serotonin”のイントロは頭にあったんだ。曲を仕上げるのに十分なアイデアができるまでに何年もかかったけどね。脳が活動的でポジティブな状態で曲を書きたかったから、壁の色を緑にペイントしただけではなくスタジオ中に観葉植物を置いて、朝から午後にかけての時間帯で作曲したんだ。その効果が見事に曲に反映されていると思う。ニタ・ストラウスの参加やこの曲のミュージック・ビデオもうまく曲に華を添えてくれた。

MM : この曲でのダンサーを従えた映像には新鮮なインパクトがありました。
AV : このアルバムは色や脳内物質についてだけの作品ではないんだ。人生の中の様々な情熱を受け入れるというテーマも含まれている。この曲の場合は振り付けさ。多くの人は知らないと思うけど俺はダンスと体操を6年間やっていたんだ。当時はギターの才能もありしダンスも上手いから両立させるのは難しい事じゃないって思ってたんだ。人生で最大の過ちだったと思うよ。このビデオでのダンスも絶対できない思ってたんだけど、なんとか決心して4ヶ月みっちり練習した結果、踊れるようになったんだ。

MM : “Oxytocin”ではGus Gが参加しています。
AV : ガスと俺は2016年にダブル・ヘッドライナーとして一緒にツアーを回った仲なんだ。気の合う奴と同じバスでツアーを廻ってると、お互いに色々な意味でインスパイアされるんだ。曲名の”Oxytocin(オキシトシン)”は「繋がり」の働きをする分子だから、Gus Gとやるのはパーフェクトなアイデアだと思ったんだ。彼のギターが入る部分は、ニタ・ストラウスとの”Serotonin”やオリー・ハーバーとの”Dopamine”と同じように、特別に彼のスタイルに合わせて作曲したんだ。

MM : アルバムでは全曲に渡って現代的なテクニカルでシュレッドなテクニックが盛り込まれていますが、聴き手がそれらに飽きることはありません。それはあなたの卓越したメロディセンスや曲の構成、展開力による曲自体のクオリティの高さによるものだと思いますが、あなた自身はどのように楽曲に対して取り組んでいるのでしょうか?
AV : これまでの作品と同様にミックスとマスタリングはウィル・パトニーが担当したんだけど、プロデュースは完全に自分によるアルバムだ。前作では彼と彼の弟子にあたるランディー・ルボーフと一緒に作業したんだけど、今作はコンセプトがディープだから、誰のアドバイスやサポートも受けずに作業するのが良いと判断した。自分の体験を音楽に落とし込んでアルバムのコンセプトを体現できた事に満足しているよ。

MM : あなたが使用しているギター、アンプ、ペダル類について教えて下さい。
AV : Charvel、FenderやIbanez等多くのギターをレコーディングで使用している。いつも愛用しているモデルのCharvelの代わりに、Charvel DK24を使用した。カスタム仕様のJackson SoloistとDinkyは曲作りの段階で使用している。アンプはMesa Boogie JP-2Cと内蔵されている Cab Cloneで俺のホーム・スタジオにて録音された。ベースは俺が好きなメーカーKisselの6弦モデルの Xcelleratorを使用したんだ。

MM : 今後の活動についての構想をお聞かせ下さい。
AV : 自身の全米ツアーを夏に控えていて、それ以外にも『Synapse』収録曲のヴィデオ・クリップを完成させる予定だ。ちなみにアメリカツアーは年末にも予定されている。秋には『Synapse』の制作過程を収めたドキュメンタリー『ブリッジング・ザ・シナプス』をリリースする予定で、その直後には自分が毎年参加しているギター・コレクティブのツアーが予定されている。

MM : ファンへのメッセージをお願いします。
AV : みんなの愛とサポートに心から感謝している。小さなサポートであっても俺にとっては本当に有り難い事なんだ。ツアーで会えるのを楽しみにしているよ!

Angel Vivaldi official site : https://www.angelvivaldiofficial.com/


Angel Vivaldi / Synapse

1.Adrenaline (feat. Julian Cifuentes)
2.G.A.B.A
3.Serotonin (feat. Nita Strauss)
4.Dopamine (feat. Oli Herbert)
5.Endorphin
6.Oxytocin (feat. Gus G)
7.Adenosine
8.Noradrenaline
9.Synapse

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