Vol.85 Lance Lopez / May 2018

Lance Lopez

Fabrizio Grossi (ファブリツィオ・グロッシー)、Kenny Aronoff(ケニー・アロノフ)とのブルース・プロジェクトSupersonic Blues Machineでは「Californisoul」、「West Of Flushing South Of Frisco」の2枚のアルバムにおいてWalter Trout、Steve Lukather、Robben Ford、Billy F. Gibbons、Eric Gales、Warren Haynesといった錚々たるギタリストをゲストに招き入れ、そのリアルで感情豊かなギター、歌声で見事に共演を果たしたLance Lopez(ランス・ロペス)。
今回、ランスは自身のニュー・ソロ・アルバム「TELL THE TRUTH」をリリース。ファブリツィオ・グロッシーをプロデュースに迎え入れて制作されたこのアルバムがブルースのリアルなフィーリングに溢れている作品であることはもちろん、ハード・ロックしている曲でのランスのヴォーカル、熱いギター・プレイにも要注目。「TELL THE TRUTH」についてランスに訊いた。

Interview / Text  Mamoru Moriyama
Translation         Hiroshi Takakura

Muse On Muse (以下MM) : 新作「TELL THE TRUTH」はブルース、ロックのリアルなフィーリングに溢れたあなたの歌声、ギターが満載の素晴らしい作品となっています。このアルバムではどういったことを目指しましたか?
Lance Lopez (以下LL) : ありがとう!”TELL THE TRUTH”の制作には5年を要して、その期間に色々な出来事を経験した。アルバムの出来上がりには自分でも感動していて、誇れる内容になったと思う。今作では良い曲を書く事に重きを置いていて、ギターに関しては曲を占領したり征服してしまうようなギターではなく、曲を補完するという目的で入れたかったんだ。

MM : Supersonic Blues Machineでも活動を共にしているファブリツィオ・グロッシーが今作でもプロデュース、作曲、ベースで参加しています。
LL : 実を言うともう俺はSupersonic Blues Machine(以下SBM)のメンバーではないんだ。さらに言えばファブリツィオ・グロッシーと一緒に仕事をする事もない。彼には今アルバムでベースを弾いてもらったが、全て彼のスタジオで録るられたものだ。SBMと今作”Tell The Truth”では良い曲を作る事ができたが、今後は Gov’t Muleのプロデューサーであるゴーディー・ジョンソンと一緒に仕事をしていく事になる。SBMも新しいギタリスト兼シンガーを迎える事になる。それが皆にとって一番良い解決策だと思うんだ。俺達は成長し先に進まないといけないんだ。

MM : アルバムの曲作りはどのように進められたのでしょうか?
LL : そうだな。ナッシュビル、LA、ニューヨークとテキサスを行き来しながらレコーディングしていったから少しづつしか進まなかった。2012年から2017年にかけて録音したんだ。その過程では友人でThe Baby’sのギタリストであるジョイ・サイクスといった優れたソングライターに曲を書いてもらう事ができた。

MM : David Grissomの”NEVER CAME EASY TO ME”やJohn Lee Hookerの”MR.LUCKY”を取り上げた経緯について教えて下さい。
LL : デイビッドのギグを観にテキサスのオースチンにあるサクソン・パブに行った時に、彼からデモ音源をもらったんだ。 “Never Came Easy To Me”はそのCDの1曲目に入っていた。オースチンからダラスに帰る車の中でその曲を聞いた時、衝撃のあまりハイウェイを逆走してしまったほどだ。すぐにデビッドにメッセージを送り、あの曲をカバーしたいって伝えたんだ。彼も「それはグレイトなアイデアだ!」って言ってくれたから、サイド・ギターやハーモニカを加えた彼のヴァージョンとは違ったヴァージョンを作ったんだ。“Mr. Lucky”のカバーはジョン・リー・フッカーと俺の元ボスでメンターでもあるバディー・マイルスとラッキー・ピーターソンに捧げた曲だ。

MM : “DOWN TO ONE BAR”、”THE REAL DEAL”、”RAISE SOME HELL”では、Joey Sykesがソングライティングやアコースティック・ギター、スライド・ギターでクレジットされています。
LL : ジョイの事が死ぬほど好きなんだよ!彼は素晴らしいギタリストで作曲家でもあるんだ。”Tell The Truth”では何曲か最高の曲を書いてくれたし、その曲にリズム・ギターを乗せてくれたんだ。俺の為の曲ではなく、俺についての曲を書いてくれたのが最高にクールだったよ。現在も彼と沢山新曲を作っている。

MM : “BLUE MOON RISING”はあなたの歌声、ギターが聴く者の心に染み入る素晴らしいバラードです。
LL : あの曲はセルジュ・シミックが書いた曲で、彼とは数年前にベオグラードで出会った。彼は当時セルビアという国で多くのバンドのプロデュースに成功していた。この曲ではサザン・ソウルの雰囲気を強く込めたソウルフルな曲にしたくて、ロサンゼルスの伝説的なスライド・ギタリストであるチャック・カヴーラスに弾いてもらったんだ。さらにサイケデリックなギター・ソロを加えて良曲になった。素晴らしい曲ができた事に満足してる。

MM : アルバムのタイトル曲である”TELL THE TRUTH”ではハード・ロック感のあるギター、ボーカルが印象的です。
LL : この曲はダラスから、遠く離れたガルベストン湾までのドライブについての曲だ。長時間の運転にすごく疲れた時に嘘はつけないから、自分の感情に正直になるしかないんだ。疲弊した時の重い感情についての曲だから曲調もヘビーにしたかったのさ。

MM : “BACK ON THE HIGHWAY”でも歌詞にマッチした疾走感に溢れるギターリフ、そしてチャック・カヴーラスのスライド・ギターが印象的です。
LL : “Back On The Highway”は車に乗って仕事に向かう時の曲だ。ツアー中のミュージシャンであろうと、早起きして仕事に向かう奴らであろうと、毎朝渋滞に巻き込まれるのさ。この曲はそういった生きる為に働いているワーキング・クラスの奴らの為のブルースなのさ。俺がメインのギターリフをスライドで弾いて、チャック・カヴーラスがコーラスでのギターを担当している。チャックは俺の実の親父が死んでからずっと俺の事を息子のようにかわいがってくれて、俺も彼の事を義理の父親のように感じてるんだ。”Back On The Highway”と”Blue Moon Rising”は彼がギターを弾いた事によってスペシャルな曲になったんだ。

MM : 歌詞を作るにあたっては日常からヒントを得ているのでしょうか?
LL : 歌詞は全て実際の人生経験から書き上げた真実の物語だ。だから”Tell The Truth”は特別なアルバムなんだよ。リアルな人生の記録なんだ。

MM : ブルースマン、ロッカーであるあなたの日常、ツアー生活について教えて頂けますか?
LL : ツアーを回るのは大好きだけど、地元に残した家族の事が恋しいから、ツアー後の時間も凄く幸せな時間なんだ。ファンの為にギターを弾く事が好きで彼らをハッピーにさせる事に喜びを感じると同時に、家では妻と娘と共に過ごす時間が好きで、彼女達の為に料理もするし面倒をみているよ。ツアーの時はバンドのメンバーに料理をしたりして彼らの面倒をみるんだ。一緒にツアーを回って毎晩ギグをして俺達のファンをハッピーにする事が俺達の幸せなんだよ。

MM : アルバムで使用しているギター、アンプ、ペダル類について教えて下さい。
LL : ギブソンのギターを使っている。メインの1本はギブソンのCustom 1959 Les Paul の再発 (R9) Iced Tea Burstだ。テキサス州のオースチンにあるギブソンで買って、俺と妻とでバートン・クリークってリゾート施設に泊まって一晩中そのギターを弾いたんだ。だから俺達はこのギターを「バートン・クリーク・バースト」って呼んでいるのさ。次に使うのが Pelham Blue Gibson Custom VOS Firebird Vの再発で、「ブルー・バード」って呼んでいる、他にも「ビッグ・レッド」と呼んでいる Gibson Explorer 120やスライド・ギターを弾く為にカスタムしたGibson Firebird 120も使用している。アンプはBogner Helios 100を使っていて、それに所有している二種類の Bognerのスピーカー・キャビネットどちらかを乗せて使用している。1つは小さな会場用の2×12インチの Celestion Vintage 30スピーカーか、Celestion Creamback 65-Mが入った物で、もっと大きなライブでは、Celestion Creamback 65-Mが2つ、 Celestion 75-H’sが2つは行った4×12インチのキャビネットを使用している。ペダル類はシンプルで、いくつかのドライブとフェイザー、2つのディレイのペダルを使っている、VertexのEffects BoostとDynamic Distortion、the Mojo Pedals K1 KlonのCentaur clone、Fulltone Clyde StandardのWah Wah、Big Joe Stomp BoxのPhaser 、Analog/Hybrid Delayとthe Wampler FauxのTape Echoが使用しているペダルの詳細だ。

MM : 今後の予定について教えて下さい。
LL : 今は”Tell The Truth”の北米ツアーの最中で、その後のるヨーロッパツアーを今企画中なんだ。さらにその後に日本に行ければと考えている。ずっと日本に行ってギグを演りたいと思ってるんだけどまだ行った事が無いからな!

MM : ファンへのメッセージをお願いします。
LL : このインタビューを読んでくれて、いつもサポートしてくれて本当にありがとう。近いうちに日本で会おう。みんなの事が大好きだよ!

Lance Lopez official site : https://www.lancelopezmusic.com/


LANCE LOPEZ / TELL THE TRUTH

1. Never Came Easy To Me
2. Mr. Lucky
3. Down To One Bar
4. High Life
5. Cash My Check
6. The Real Deal
7. Raise Some Hell
8. Angel Eyes Of Blue
9. Back On The Highway
10. Blue Moon Rising
11. Tell The Truth