Michael Landau
2012年に発表したインストゥルメンタル作品「Organic Instrumentals」以来となるソロ名義のアルバム「Rock Bottom」をリリースしたマイケル・ランドウ。
今作ではBURNING WATERとして共に活動していたテッド・ランドウ、デイヴィット・フレイジーが参加。その音楽はライヴ的な自由さを感じさせる一方、マイケルによる珠玉のギターはもちろん、ギター以外にも隠し味的な様々なサウンドが効果的に配置されており、聴けば聴くほどに楽曲が持つ魅力にどんどん惹きこまれていく・・そんな中毒性の高い、素晴らしい作品となっている。「Rock Bottom」についてマイケルに訊いた。
Interview / Text Mamoru Moriyama
Translation Louis Sesto (EAGLETAIL MUSIC)
Muse On Muse (以下MM) : あなた名義の新作「ROCK BOTTOM」は、メンバーにテッド・ランドウ、デイヴィット・フレイジーが参加しており、他界したカルロス・ヴェガはいませんが、BURNING WATERとも捉えることができます。このメンバーで再びアルバムを制作することとなった経緯について教えて下さい。
Michael Landau (以下ML) : 数年前にStuderの2インチ・テープレコーダーを整備していて、アナログテープでもう一度レコーディングをしてみたいという衝動に駆られたんだ。その時、弟(テッド・ランドウ)とアラン・ハーツに数日来てもらい、自分が持っていたアイディアをいくつか一緒に録音した。その時に録音した楽曲の殆どが今回の「ROCK BOTTOM」に収録されている。それまで自分のトリオ・バンドやSTEVE GADD BANDで10年ほどイントゥルメンタルばかりやっていたので、ヴォーカル入りのヘヴィな音楽をやりたいという強い気持ちがあったのさ。デイヴィット・フレイジーとはまた一緒に仕事をしたいとずっと思っていたので、今回のレコーディングを行った時に彼にヴォーカルを頼んだのは当然の選択だった。
MM : テッド、デイヴィット以外のアルバム参加メンバーについて紹介下さい。
ML : アルバムに入っているハモンドオルガンの殆どはラリー・ゴールディングスが弾いている。彼はお気に入りのミュージシャンのひとりだ。彼のインプットがなければ、この作品を完成させることはできなかっただろうね。ジミー・ジョンソンがベースを2曲弾いている他、アラン・ハーツがドラムを7曲、シャノン・フォレストがドラムを3曲演奏している。また、ゲイリー・ノヴァクが”Heaven In The Alley”のドラム・ループを作ってくれている。参加してくれているミュージシャンは自分のお気に入りの人たちばかりだ。
MM : アルバム・タイトルでもある「ROCK BOTTOM」に込められた思いをお聞かせ下さい。
ML : 今回のニュー・アルバムがエッジの効いたヴォーカル・アルバムだということを知ってもらいたかったという思いもあったね。それに面白い語呂合わせにもなっている。まるでリアリティー番組のように、今まさに色んな人たちがRock Bottom(どん底)状態を味わっているしね。そんな理由もあって、このタイトルを使ったら面白いと思ったのさ。
MM : アルバムは聴けば聴くほどに楽曲やあなたのギターの魅力にどんどん惹きこまれていく・・中毒性の高い素晴らしい作品です。
ML : ありがとう!そう思ってもらえて嬉しいよ!オルガンやヴォーカルと共にギターも時間をかけて色々と重ねてレコーディングした。アルバムには沢山の音が詰め込まれている。でも、決して多過ぎたりはしないはずだ。入っている音は全て聴こえるようになっているし、アルバムをいつ、どこで聴いているかによってそういった音が聴こえてきたりするだろうね。機会があれば是非ヘッドホンでも聴いてもらえると更に楽しめるはずだ。
MM : アルバムの曲作りはどのように進められたのでしょうか? 詳細についてお聞かせ下さい。
ML : いつも家でギターを弾いているんだ。1日に3〜4時間ほど弾いている。そういう時に浮かんで来るコード進行やリフから曲が生まれることが多い。でも、あえてギターを使わずに曲を作ることもある。時にはリスナー気持ちになって考えることによって完成された曲を思いつくこともあったり、ひら歌やサビだけを思いつくこともある。アルバムの作曲は全て自分で手掛けた。‘Gettin Old’、‘We All Feel The Same’、‘Freedom’、’Speak Now, Make Your Peace’の歌詞とメロディも自分で書いている。その他はデイヴィット・フレイジーが書いている。時にガイド・メロディが入ったデモを彼に送って実際のメロディを考えてもらっているけど、あえてオケだけを送って自由に書いてもらった方が面白い時もある。彼はとてもクリエイティヴな歌詞を書くし、美しいメロディも書けるんだ。
MM : 静かにアルバムの幕を開ける冒頭の”Squirrels”では、ディヴイットの歌にあなたのセンス溢れるギターが重ねられ展開していく様がとても印象的です。
ML : ありがとう。”Squirrels”はアルバムの中でも気に入っている曲のひとつだ。様々な要素を含んでいることもあって、リード・トラックに適していると思った。メロディックでメロウでありながら、時にとてもヘヴィになる。アルバムに入っている全ての楽曲を集約しているところもあるのさ。
MM : Wahも絡めたエモーショナルなあなたのギタープレイが堪能できる”We All Feel The Same”についてお聞かせ下さい。
ML : “We All Feel The Same”は人類の悲痛な叫びをテーマにした曲だ。不安や修羅場を経験している個人の気持ちに置き替えることもできる。現実では、人はみんな同じ基本的なものを必要とし、そして追い求めている。それは尊敬であったり、愛であったり、愛する人たちの安全だったりする。この曲では歌詞に対してギターが鏡のように現代の混乱を映し出して表現している。
MM : アルバム全体を通じて、ライヴ的な自由さを感じさせる一方、”Gettin Old”、”Heaven In The Alley”などはギター以外にも隠し味的な様々なサウンドが効果的に配置されており、聴く度に新たな発見があります。
ML : ありがとう。先程説明したギターを重ねてレコーディングした話に戻ってしまうけど、この曲ではベーシック・トラックが持つフィーリングやインスピレーションをかき消さないようにしながらもできるだけ多くの音を限界まで詰め込んだ。私はベーシック・トラックが持つ純粋さを常に大切にしたいと思っている。デモや元のベーシック・トラックが持つ感情が失われてしまったと思った時は、重ねた音を消して元々あったフィーリングに戻すようにしている。
MM : 自由なスペースの中で、幻想的に歌とギターがアートとして昇華されていく印象的なナンバー”Speak Now, Make Your Peace”についてお聞かせ下さい。
ML : “Speak Now, Make Your Peace”も人類の悲痛な叫びをテーマにしている。平和をもう一度考え直そうという内容だ。アルバムの最後を壮大なアンセムのような曲で締めたかった。曲の最後に入っているギターソロはクリーンなギターでとてもシンプルなフレーズを弾いている。ともかく壮大で美しく、そしてパワフルな感じでアルバムを終わらせたかったんだ。
MM : アルバムで使用しているギター、アンプ、ペダル類について教えて下さい。
ML :
ギター類:
・ 63年製ストラトキャスター(フィエスタレッド)
・ Fenderカスタムショップ・ストラトキャスター/Lollar Imperial ハムバッカー(Fスペース)×2を搭載
・ 75年製 Fender ジャズマスター
・ Fender カスタムショップ・テレキャスター(ピックアップは標準装備品)
・ 68年製 Gibson 335(フェイズスイッチ無し)* “Squirrels”ギターソロで使用
・ 56年製 Les Paul Special *“Poor Dear”リズムギターで使用
アンプ類:
・ Suhr Badger 35ヘッド
・ Suhr Bellaヘッド
・ 64年製 Princeton Reverb(ヴィンテージMarshallキャビネットを2台使用=8オーム)
・ Newcomb 製Pathfinder 18W PA用ヘッド(ギターアンプに改造されたもの)*“Poor Dear”のソロで使用
・ Dumble Slide Winder(4インプット、50W、Bassmanスタイルのヘッド)
キャビネット類:
・ ヴィンテージMarshallストレート 4×12(標準グリーンバック搭載)
・ Kerry Wrightクローズドバック・ストレート 4×12(ヴィンテージG12-65搭載)
エフェクト類:
・ Vintage Fuzz Face
・ Vintage TS-808
・ Vemuram Jan Ray
・ Vemuram Shanks Fuzz *“Bad Friends”のソロで使用
・ Strymon Timeline(ポストアンプ、APIコンソールのSENDから使用)
・ Dunlop Echoplex(ポストアンプ、APIコンソールのSENDから使用)
・ Deluxe Memory Man 550-TT(ポストアンプ、APIコンソールのSENDから使用)
・ Lexicon PCM60 Reverb
マイク類:
・ Shure SM57
・ Royer R-122V
・ Neumann U87 *‘We All Feel The Same’のギターソロで使用
・ Api Mic Pre
MM : あなたが創り出すギターサウンド、トーンに憧れているプレイヤーは多いと思います。もちろん、それらはあなた自身のテクニックや精神的な内面から溢れ出している部分がほとんどを占めているかと思いますが、アンプやペダルのセットアップといったハード面における音作りの部分でアドバイスを頂けますか?
ML : レコーディングでもライヴでも、最初はセッティングをシンプルにすることを勧めている。過去にアンプ1台だけでレコーディングをしたことが何度もある。Suhr Badger 18アンプを4×12のキャビで鳴らし、ギターも2本、そしてフットペダルを何個か使っただけでレコーディングしていたよ。特に始めのうちはシンプルなセッティングでやった方が良い結果が得られると私は思うよ。
MM : あなたはトップ・ギタリストの一人としてこれまでに自身の活動は勿論、様々なミュージシャン達の素晴らしいアルバムやステージに参加し、音楽シーンに貢献してきましたが、そのようなあなたから見た今の音楽シーンについてはどのように感じていますか?
ML : 音楽業界において、自分は常に部外者だと思っていた。常に音楽そのものに対して尊敬の意を持ち、自分が描いていた音楽的なヴィジョンに忠実であることを最優先にしてきた。とは言え、どの時代でも世界には優れた新しい音楽、そして優れたアーティストが存在する。ただ、今はそれを見つけるのにはもう少し頑張って探さないといけないというだけ。今の時代でも多くの優れたアーティストに私はインスパイアされ続けているよ。
MM : 今後の予定について教えて下さい。
ML : 今年の夏にジェイムズ・テイラーとの7週間に及ぶツアーが予定されている。それが終わったら9月にSTEVE GADD BANDで3週間の日本ツアーが入っている。それと、2019年2月頃に自分の新しいバンド「MICHAEL LANDAU LIQUID QUARTET」でアジアを3週間ツアーするプランも持ち上がっている。
MM : ファンへのメッセージをお願いします。
ML : いつも私の音楽を聴く時間を作ってくれてありがとう。そして音楽そのものを聴いてくれて感謝している。音楽はとても貴重でパワフルな癒しなんだ。みんなで楽しめるものなのさ。
Michael Landau official site : http://mikelandau.com/
MICHAEL LANDAU / ROCK BOTTOM
1. Squirrels
2. Bad Friend
3. Gettin Old
4. We All Feel The Same
5. We’re Alright
6. One Tear Away
7. Poor Dear
8. Freedom
9. Heaven In The Alley
10. Speak Now, Make Your Peace