Vol.82 Jared James Nichols / February 2018

Jared James Nichols

右手のフィンガーピッキングを使った繊細なニュアンス表現から豪快に熱くギターを弾き倒すプレイに至るまで変幻自在なユニークな奏法スタイルを持つギタリスト Jared James Nichols (ジャレッド・ジェイムス・ニコルズ)。 強烈なオリジナリティを放つこの注目株ミュージシャンが最新作「BLACK MAGIC」をリリースした。「BLACK MAGIC」では、アメリカン・ハード・ロック、ブルース・ロックにおけるジャレッドの痛快に冴えわたるギターとロック感溢れる素晴らしいボーカルが聴き手の耳を捉えて離さない。「BLACK MAGIC」について訊いた。

Interview / Text  Mamoru Moriyama
Translation         Hiroshi Takakura


Photo by Gary Cooper

Muse On Muse (以下MM) : あなたの簡単なプロフィールやあなたがギターを始めた当時の年齢、きっかけについて教えて下さい。
Jared James Nichols (以下JN) : ギターに興味を持ち始めたのが14歳の時かな。いわゆるクラシックなロックが大好きで、まだ少年だった俺はなぜかエレキ・ギターの音に惹かれたんだ。ブラック・サバスやレッド・ツェッペリン、ピンク・フロイドなんかに夢中になった。ギターはオレの人生を変えたんだ。ギターから生まれるパワーやエネルギーを初めて感じた時から俺はずっとこの楽器の魔力に取り憑かれてるんだ。

MM : その当時に影響を受けていたミュージシャン、ギタリストについてお聞かせ下さい。
JN : 初期を含めたブルースのギタリストに本物の匂いを感じていたよ。バディー・ガイ、スティーヴィー・レイ・ヴォーン 、ジョニー・ウィンター等を聞いていた。それからしばらくしして、レスリー・ウエスト、エリック・クラプトン等のブルースやロックのアーティスト達が起こしたブルース/ロックのムーブメントに夢中になり、自分の全てをこの音楽スタイルに捧げるようになった。

MM : ギタリストとしては勿論、ボーカリストとしても素晴らしい魅力をお持ちですが、ボーカリストとして影響を受けたミュージシャンはいますか?
JN : ありがとう!多くのギタリストから影響を受けたように、数多くのシンガーからも影響を受けたんだ。ブルース歌手のようにナチュラルな歌い手が好きでポール・ロジャース(Free / Bad Company)、ジャック・ブルースやジョニー・ウインターも大好きだ。面白い事に俺のお気に入りのギタリストはみんな所属してるバンドでリード・ヴォーカルもやっているんだ。だから俺もそうなりたかった。自分の歌声に納得がいくようになるまではすごく苦労したけど、今となっては歌うのが大好きさ。

MM : あなたはピックを使わない右手のフィンガーピッキングを使った繊細なニュアンス表現から豪快に熱くギターを弾き倒すプレイに至るまで変幻自在でユニークな奏法スタイルを持っていますが、どのようにしてそのスタイルを確立させたのでしょうか?
JN : ギターの弾き方については、自然に身に付いていった事なんだ。以前は他の奴らと同じように、ギター・ピックを使って慎重に、完璧にギターを弾こうとしてたんだけど、自分のプレイに満足していなかったし、もっと上手くなりたいと思ってた。自分にしか出せない音を出す事が大事だからね。ルールに囚われたり、完璧に弾こうとする事をやめてから凄く上達したんだ。インスパイアされる事が増えて、よりギターを弾くのが楽しくなったんだ。想像力には限界が無い事を知った。おれは過去を振り返る事はない。常に頭の中では新しいアイデアや新しい弾き方が生み出されているんだ。

MM : それでは、最新作「BLACK MAGIC」についてお聞かせ下さい。この作品では、あなたとエアロスミスのジョー・ペリーの息子であるTony Perryの二人でプロデュース、作曲を手掛けていますが、彼と作業することになった経緯について教えて下さい。
JN : トニーと俺はロサンゼルスのスウィングハウス・スタジオにてエアロスミスが前作のレコーディングをしてる時に出会ったんだ。すぐに意気投合して友達になったよ。俺とトニーは同じ音楽に影響を受けてるし、考え方も近いんだ。俺がスタジオで作業する時に真っ先に電話するのがトニーさ。信頼も尊敬もできる奴と一緒に作業できるのは最高だからな。トニーはファンタスティックなエンジニアでもあり、作詞家であり、作曲家でありギタリストなんだ。彼とのアルバム制作を仕事と思った事はない。俺達は嵐のようなレコーディングを駆け抜けて、俺達ができるベストな作品を創ったんだ。

MM : 2015年に発表されたデビュー・アルバム「Old Glory & The Wild Revival」に続く2作目となる今作ではどういったことを目指しましたか?
JN : 正直に言うと、初めてプロのスタジオに入ったのは前作「Old Glory」をレコーディングした時だったんだよ。日々手探りで学びながらのレコーディングだった。全てが新しい経験だったんだ。「Old Glory」を出した後は3年かけてヨーロッパとアメリカをツアーしんだけど、それが自分にとって大事な経験になった。そのツアーで得たものを全て今回の「Black Magic」にぶつけたんだ。余計な音を取り除いた、荒削りで、生々しくて、ぎらついたフィーリングの作品にしたかった。アイデアが何重にも練られた作品でもあり、核心を突いている。「Black Magic」から聴こえる音は俺がこの3年間の中で暖めてきたサウンドなんだ。

MM : トニーとの作曲プロセスの詳細を教えて下さい。
JN : トニーとの作業はごく自然でオーガニックな感じだったよ。基本的にはギターのリフ又はヴォーカルのメロディーから曲を作り始めて、ラフな感じでレコーディングしていく。そして曲の構成ができてきたらミュージシャン達にデモをシェアして一緒にレコーディングしていくんだ。俺達にとって演奏が完璧であるかどうかは問題じゃないんだ。曲が放つエネルギーとヴァイブが大事なのさ。

MM : アルバムではバンドメンバーのドラムであるDennis Holmの他にAquiles Priester (Angra, WASP, Tony MacAlpine)も参加しています。彼が参加することとなった経緯についてお聞かせ下さい。
JN : アキレスは素晴らしいドラマーで、素晴らしい人間で、友人の一人だ。お試し的な感じでレコーディングに誘ってみたら、逆に俺達が彼のプレイにぶっ飛ばされたよ!全てのミュージシャンがそれぞれの個性を持ち込んでくれた。アキレスは本物のエネルギー、パワーとヴァイブを曲に与えてくれた。彼がこのアルバムに参加してくれた事を誇りに思うよ。


Photo by Adam Kennedy

MM : 冒頭の特殊な効果音が印象的な”Last Chance”ですが、この曲について説明下さい。
JN : あの曲を作るのは楽しかったよ!俺達はスタジオの中でクレイジーになって、エフェクターをいじりながら新しいギターの音を探していたんだ。ジミ・ヘンドリックスが逆回しにしたギターの音を使って音景を作ったのがとても好きで、俺達は「Last Chance」の曲内のソロギターの音を逆再生してみたんだ。始めは遊びだったから一度はイントロから外したんだけど、すごく良かったからその音にさらにエフェクトをかけて残したんだ!

MM : アルバムに良いアクセントを与えているファンク曲 “Honey Forgive Me” はとても印象的です。
JN : この曲の為のジャム・セッションは楽しかったよ。昔弾いてから頭の中からずっと離れなかったリフがあって、このアルバムに入れる曲のアイデアを練っていた時にここのリフを使おうって思ったんだ。自分が影響を受けたアルバート・キングやZZ Topへのリスペクトの気持ちも込めた最高のジャムさ。

MM : “Honkey Forgive Me”、”Home”、”Run”においてバックコーラスで曲に華を添えているJessica Childressについて教えて下さい。
JN : 彼女も友人の1人で、歌う為に生まれてきたような才能あるシンガーだ。曲に力強さとヴァイブを与えてくれた。彼女の歌声を聞くと鳥肌が立つんだ。アルバムに参加してくれて本当に光栄だよ。

MM : アルバムで使用したギター、アンプ、ペダル類を教えて下さい。
JN : セッティングはいつもシンプルにしている。俺は音源にもライブ的な質感を求めているから、ツアーする時のセッティングをレコーディングでも使うんだ。ギブソン/エピフォンのレス・ポール・カスタムとSeymour Duncan p90sのピックアップをほとんどのレコーディングで使っている。
ジョニー・デップとジョー・ペリーが保有しているヴィンテージのレスポールも使用させてもらったんだ。それに俺が信頼しているBlackStarのArtist 30Cのコンボ・アンプと100ワットのSeries Oneアンプを繋いでいるんだ。ペダルは Seymour Duncanのブースト・ペダルと古い Dallas-Arbiternoのファズ・ペダルを使用している。

MM : あなたはこれまでにもZZ Top、Lynyrd Skynyrd、Zakk Wylde、Glenn Hughes、Walter Trout、UFO、Saxonなど錚々たるミュージシャン達とライヴでステージを共にしていますが、彼らトップ・ミュージシャンとの共演から得たものや気づきについて教えて下さい。
JN : 彼らからは全てを学んだ。プロフェッショナルである事、どんなギグであろうが全身全霊で感情をぶつける事なんかもそうだ。自分のヒーロー達と生の現場で一緒に働けるなんて本当に幸せだよ。昔は彼らのポスターを部屋に貼っていたんだけど、今は彼らとツアーに出ている。本当に夢みたいさ。

MM : 今後の予定について教えて下さい。
JN : 世界中をツアーで回る事!!!作品を作る事!!!楽しむ事さ!!!ライブしてみたい国はたくさんある、その目標の為にやらなければいけない事は多いけど、このブルースという音楽の力をもっと広く遠くまで広げる事が待ちきれないよ!

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Jared James Nichols twitter : http://twitter.com/JJNicholsMusic
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Jared James Nichols / BLACK MAGIC

1. Last Chance
2. The Gun
3. Don’t Be Scared
4. Honey Forgive Me
5. Home
6. Got To Have You
7. End Of Time
8. Run
9. Keep Your Light on Mama
10. What Love