Simon Phillips
スーパー・ドラマー、サイモン・フィリップスがProtocolプロジェクト4作目となるアルバム「PROTOCOL IV」をリリース。今回はバンドのメンバーとして、その超絶技巧かつセンス溢れるギタープレイにてハード・ロック、フュージョンの音楽ファンから支持されているグレッグ・ハウ、そしてサンダーキャットやロナルド・ブルーナー・ジュニアのバンド・メンバーでもある注目の若手キーボーディスト、デニス・ハムが参加。
新メンバーであるグレッグ・ハウのギターによる美しい美旋律、それに続くデニス・ハムの印象的なキーボード旋律を挨拶代わりに幕を開けるニュー・アルバム「PROTOCOL IV」。その音楽性はよりディープに深化し、従来からのファンはもちろん、よりコアな音楽ファンに対してもアプローチする魅力的な作品となっている。
今回はBLINDMANや国内アーティストのライブ・サポート、レコーディング、セッション等で活躍している注目の若手敏腕ドラマーである實成峻氏によるサイモンへのインタビュー。ニュー・アルバム「PROTOCOL IV」について訊いた。
Interview Shun Minari
Translation Hiroshi Takakura
Shun Minari (以下SM) : 新作「Protocol IV」についてお聞かせ下さい。今作はどのようなコンセプトにて制作されたのでしょうか?
Simon Phillips (以下SP) : Protocol 4のコンセプトは基本的には今まで通りの力強いメロディーと心地よいハーモニー、グレイトなグルーヴと、もちろん素晴らしいサウンドだったね。Protocol4は私のキャリアの中で最もストロングに創られたアルバムになったと思うよ。
SM : 今回はアンディ・ティモンズ(ギター)、スティーヴ・ウェインガート(キーボード)に代わって新たにグレッグ・ハウ(ギター)、デニス・ハム(キーボード)が参加しています。これら経緯について教えて下さい。
SP : 前作のリリースとそのツアーの後、アンディーとスティーヴはそれぞれ別々の道を選んで歩み始めたんだ。だから私は新しいミュージシャンを探す必要があった。グレッグとは数年前のエディー・ジョブソンの短いツアーで一緒になって、その時から彼とコラボレーションができれば素晴らしいなって考えていたんだ。デニス・ハムとは2009年にインドでプレイする為のバンドを組んだ時にリハーサルで一緒にプレイしたっていう経緯があって今回組む事になった。
SM : Protocolのこれまでのアルバムでは、1曲目は「これが今のProtocolだ」と言わんばかりのエネルギッシュな曲がセレクトされており、その曲がリードトラックである事に強い意味を感じます。今作の「Nimbus」もまさに新体制を象徴するようにこれまでとは異なる色味のエネルギーを感じましたが、この曲をリードトラックにする事は早い段階から決まっていたのでしょうか?
SP : 最初から“Nimbus”を1番目の曲にしようと考えた訳ではなく、曲順に関しては、当初、アイデアがあったのをミックスダウンの後に変更したんだ。レコーディング後とミックスダウン後にはいつも変更があるものだ。アルバムを創る時には様々なハプニングが起こるんだ。だから作品を作るのが好きなんだよね。
SM : あなたはBubinga/Mapleのキットを長く使用していましたが、最近のライブではTAMAのSTAR Mapleも見受けられます。今作ではどのようなキットを使用しましたか?
SP : ワインレッドの光沢仕上げのStar Mapleのドラムキットを初めて使ったよ。音がすごくよくて録音されたサウンドも最高なんだ。私の他のドラム・キットと近い音なんだけどクオリティが違うんだよ。
SM : 一枚のアルバムをレコーディングする中で、曲によってキットのサウンドメイクを切り替えたりしますか?
SP : 答えはノーだね。スネアを変える時もあるが、今アルバム内で使ったスネアはたった三種類さ。Star Maple以外では新しいウォルナットシェルのスネアを2曲に、SLPアルミニウムの5インチのを1曲に使っている。音が違うように聞こえるかもしれないけど、それは演奏方法を変えてるからなんだ。
SM : “Pentangle”、 “Solitaire”は1コードリフによるセッションライクなパートやバンド・ビートの心地よさ、メロディの美しさもあってか、複雑な拍子であることを忘れてしまうような曲であるように感じました。デモの段階からそのような完成形はイメージされていたのでしょうか?
SP : 私のデモは完成された曲に近いと思うけど、もちろん本物のキーボードやベース、ギターが本物のミュージシャンによって演奏された時に、音楽は初めて命を与えられる。私達はライブでプレイする時にベストな状態になるように、曲のアレンジを変える事も多い。だからミュージシャンの意見はとても大事だし、メンバーみんなからアイデアを集めたり、音楽性について話し合う事が好きなんだ。
SM : 沢山のドラマーを見てきましたが、よく「曲の中にドラマがある」と言われるようにあなたのドラムソロにはドラマがあるように感じます。ドラムのソロフレーズを構成する上ではどのようなことを意識していますか?
SP : 音楽的にピュアに。そしてシンプルにプレイする事だね!ソロに関しては音楽的な構成よりもまずストーリーを伝えるっていう事が大事で、それが私がソロを演る時のコンセプトなんだ。
SM : 世界的にドラマーのフィルテクニックは著しく上昇し、凄まじいフレーズを連発するような光景は珍しくなくなりましたが、一方でダイナミクスやビートで魅了するドラマーはやや少なくなったように思います。”Passage To Agra”や”Phantom Voyage”を聴いた時はまさにそこへ一石を投じるような、対照的なリズムでありながらも双方ともに生命のエネルギーのような説得力のある力強いビートを感じました。
SP : (爆笑)そうだね。色々な音楽、特にジャズやフュージョンにおいて「音楽」が技術的なエクササイズになってきている事は私も感じている。もちろん凄いテクニックを見れるのは良い事なんだけど、まず「音楽」が一番大事なんだ。私の作品はハーモニーや構成がかなり複雑で、だからこそグルーヴが力強くなければいけない。シンプルさが必要な曲だってあるんだ。オーディエンスが口をぽかんと開けて見てる状態じゃダメだね。自分たちの音楽に引き込まないといけないんだ。
SM : “Cel Tic Run”は軽快なシャッフルかと思いきや、所々にハードなギターリフが出てきますよね。それに応えてかグレッグ・ハウのソロもロック的アプローチが垣間見えます。あなたはキャリアの中でハード・ロック・バンドやプロジェクトのサポートは沢山努めていらっしゃいましたが、今でもハードな音楽や普段あまり演奏しないジャンルの音楽を聴いたり、そこから刺激を受けるような事はありますか?
SP : アルバムの制作時期は、インスピレーションを受けるために音楽は何でも聴くよ。でも自分の記憶からその音楽を再生する事がほとんどだけどね。例えば、もしこんな感じのグルーヴが欲しいと思ったら、今まで聴いた事のある曲や演奏した事のある曲を思い出して、インターネットでチェックしたり自分のコレクションの中から探して、再生して思い出すようにしてる。
SM : あなたの参加作品、ソロ作品とそれぞれ沢山聴いてきましたが、常に新たな事をしようと試みていらっしゃるのがよくわかりますし、それは今も尚進化し続けるドラムプレイにも言えることかと思います。作曲、演奏共に、その探究心を突き動かす原動力や心構えについて教えて下さい。
SP : これまでに出したオリジナルアルバムの7枚、ライブアルバムの2枚のほとんどのトラックは自分で作曲してきたので、今後同じような曲を繰り返し作らないっていう事は意識しているよ。全てのプロデューサーには独自のスタイルがあって、そのスタイルの下で作曲しいくうちに似たようなサウンドになりがちなんだけど、私は、曲を書く時は毎回何か違う曲を作ろうとトライしている。いつも新しいやり方を探してるからね!
SM : 今後の予定についてお聞かせ下さい。
SP : Protocol 4のツアーが待ち構えてるんだ。バンドメンバーはベースがアーネスト・ティブス、ギターがグレッグ・ハウでオトマロ・ルイーズがキーボードを担当している。10月末から始まるヨーロッパツアーでは31公演を予定していて、その後アメリカに移って10公演やる事になっている、来年1月には日本でライブがあって、他の国へはその後に行く事になっている。新しいバンドをファンに紹介するのが本当に楽しみだね。
SM : ファンへのメッセージをお願いします。
SP : ぜひ私達の新しいバンドを見に来て欲しい。すごくエキサイティングでエネルギー溢れるライブになるよ!
SM : 日本でお会いできるのを楽しみにしています!
SP : そうだね。来年の1月に東京で会おう!
Simon Phillips Official Website : http://www.simon-phillips.com/
SIMON PHILLIPS / PROTOCOL IV
UCCU-1546 ¥2,808 (税込) Universal
1. NIMBUS
2. PENTAGLE
3. PASSAGE TO AGRA
4. SOLITAIRE
5. INTERLUDE
6. CELTIC RUN
7. ALL THINGS CONSIDERED
8. PHANTOM VOYAGE
9. AZORES
– インタビュアー:實成 峻 (SHUN MINARI) –
国内屈指のメロディアス・ハードロック・バンドである BLINDMAN のドラマーとして2016年にWalkure Recordsより BLINDMAN 10th Album「TO THE LIGHT」をリリース。
BLINDMANとしての活動の他にも橘高文彦氏 ( 筋肉少女帯、XYZ→A ) のデビュー30周年プロジェクトイベント(2015年)への出演や国内アーティストのライブ・サポート、レコーディング、セッション等にて活躍中の期待の若手敏腕ドラマー。
實成峻オフィシャルサイト : https://www.shun-minari.com/