Vol.60 Francis Dunnery / May 2016

Francis Dunnery

フランシス・ダナリーがIT BITES時代の楽曲を再レコーディングした作品「Vampires」をリリースした。 前作「Frankenstein Monster」ではフランシスの兄バリー・ダナリーが残したNECROMANDUS時代の楽曲を自らのバンドで再びプレイしファンを驚かせ注目を集めたフランシス。現在でも非常に根強い人気を誇っているIT BITES時代の楽曲を再レコーディングした今回の作品「Vampires」でも多くのファンの注目を集めるだろう。
再レコーディングされたIT BITES時代の曲は、良い意味でリラックスした大人の雰囲気を感じさせるとともに、そのサウンドの美しさも印象的である。この作品の制作に至った経緯から注目される今後の活動予定など色々とフランシスに訊いた。


Interview / Text  Mamoru Moriyama

Translation         Louis Sesto (EAGLETAIL MUSIC)

 

Muse On Muse (以下MM) : あなた自身がシンガー/ギタリストとして携わったIT BITES時代の楽曲を再レコーディングした新作「Vampires」は多くのファンの注目を集めると思われます。この作品の制作に至った経緯をお聞かせ下さい。
Francis Dunnery (以下FD) : 自分の過去を完成させたいという思いがあった。自分の過去に未完成な部分を残していると、人生を前へ進めていくことができなくなる。80年代のレコーディング・プロダクションがあの楽曲の数々を傷つけていたと私は思っていた。だから現代の音質でもう一度レコーディングをしたいという思いがあった。常にその思いが頭の中にあったのさ。やっと重い腰を上げることができた訳だ。これで頭の中もすっきりするだろう。

MM : 今回の作品に収録されている曲はどのような観点で選びましたか?
FD : 自分が気に入っていた曲、そして(もう一度レコーディングすることで)更に良くなる余地のある曲を選んだ。人々にはそれぞれ楽曲に対する思いや歴史があるので、オリジナルを置き替えることは決してできない。それでも、今まで以上の不朽の名曲仕上げることはできるし、80年代っぽい音質を取り除くことはできる。

MM : ファンに長い間愛聴され続けているIT BITESの作品を再度レコーディングする上でその音楽、サウンド面についてはどういった観点で彼らファンにアピールすることを考えましたか?
FD : 今回の新しいヴァージョンには過去のファンをがっかりさせるような要素は決して無いと思っているよ。このアルバムは世界中で高い評価を受けている。日本のファンも同じように思ってくれるに違いない。楽曲は前よりも良く聴こえるし、音楽的な部分でも向上している。当時は私たちも若かったからね。若さ溢れるスピリットであの楽曲の数々をレコーディングしたんだ。それに比べると新しいヴァージョンはもう少し耳に優しく聴こえる。楽曲の本質もより聴きやすくなっているはずだ。サウンド・プロダクションも楽曲に適した仕上がりになっている。あなたの意見(長い間愛聴され続けている)には賛成だ。そもそも、そこが肝心なところだからね。そう言ってもらえるのは嬉しいよ。当時から自分がやろうとしていたことが間違っていなかったという証拠でもある訳だからね。

MM : アルバムでプレイしているThe Sensational Francis Dunnery bandについて紹介下さい。
FD : ドラマーがTony Beard、ベーシストがJamie Bishop、キーボーディストがMichael Cassedy。4人の素晴らしいミュージシャンが集まっている。決して派手ではないが、とても音楽的なミュージシャンたちが揃っているよ。

MM : 今作をプレイする上でバンドとしてどのように準備、取組を行ったかお聞かせ下さい。
FD : バンドにはレコーディングする楽曲の音源を送り、ともかく曲を覚えるようにお願いした。それからリハーサルを行い、ライヴでも曲を演奏した。曲には色々な情報が沢山あるので、それを全て覚えるのは容易ではなかった。だからオリジナルの楽曲に100%忠実に演奏するのは全員にとってとても難しいことだった。IT BITESの楽曲はとても複雑で、沢山の音が重なっている。この特別なエネルギーを再現するのは決して簡単なことではない。でも、バンドはとても素晴らしい仕事をしてくれたと思っているよ。

MM : 再レコーディングされている曲はどの曲も良い意味でリラックスした大人の雰囲気を感じさせるとともに、そのサウンドの美しさも印象的です。
FD : 楽曲をどのようなサウンドで聴かせたいか、そしてどんなサウンドに仕上げるべきなのか、自分の経験からそれを判断することができるようになった。80年代はレコーディングやプロデュースに関しての知識が全く無かったので、プロデューサーやエンジニアに頼るしかなかった。新しいヴァージョンの方がよりオーセンティックに聴こえるし、エフェクトやコンプやEQにさほど頼っていない。自分の音楽がどのようなサウンドに仕上がるべきか、今ははっきりとした考えを持っているよ。

MM : ギターについても当時のあなたのプレイは勿論素晴らしかったのですが、今作ではより洗練されたクレバーでセンス溢れる楽曲重視のギターを随所で聴くことができます。
FD : それは53才という年齢から来るものだよ(笑)若い頃はみんな目立とうとするが、年を取るとありのままの自分でいることに心地良さを感じるようになって、無理に目立とうとしなくなる。新しいヴァージョンのギター・サウンドも非常に良いと思っているよ。ともかくアルバムのギター・パフォーマンスには大満足だ。

MM : IT BITESの当時の作品を再びレコーディングすることで新たな発見等はありましたか?
FD : 特にはなかったね。楽曲の隅々まで知り尽くしていたからね。でも、今回のレコーディングでは新たなパートを足している部分もあるよ。”Still Too Young To Remember”では新たなギターソロが足されている。今となればそれがアルバムの中で最も気に入っている部分のひとつだったりするよ。

MM : 今現在のあなたからみて当時のIT BITESの作品についてどのように思いますか?
FD :
“The Big Lad In The Windmill”
生々しい情熱と若さに満ちた作品だ。あの頃はともかく活気があったね。20才のバンドにしては既にライヴ・バンドとして出来上がっていた。
“Once Around The World”
バンドとして最も完成された作品だったと思う。色々な実験をしたね。自分たちの確固たるサウンドを築き始めていた。
“Eat Me In St. Louis”
元々のレコーディング自体はとても良かったが、ミックスが楽曲の良さを表していないのが残念だった。バンドとして新たなサウンドを追求していくプロセスの中で楽曲が失われてしまった感がある。

MM : 今作で使用したギター、アンプ、ペダル類について教えて下さい。
FD : アンプはLaneyのLionheartを使っている。今、市場に出ているアンプの中で最も良い音がする・・・まあ、100万円出せば話は別だが。あとはMichael Angelo T Rexのペダルと自分の古いRATペダルを使っている。機材的にはそれぐらいしか使っていないよ。自分の音の殆どは自分の手によって生み出されている。ギターの音は楽器から来るものだと断言するのはナンセンスだ。楽器から来る音は全体の15%に過ぎないよ。あとはプレイヤー自身から来るものだ。

MM : あなたのオフィシャルサイトのショップでは”Vampires instrumental download”も販売されています。
FD : 各楽曲のアンサンブル/演奏を聴くのも面白いはずだ。特にミュージシャンには楽しめる内容になるはずだ。

MM : 今後の予定についてお聞かせ下さい。
FD : 日本のために『Welcome To The Wild Country』をリレコーディングする。それに秋には日本公演も決まっている。その他にもハウス・コンサートや天文学の朗読、それにイギリスでは人気があるFrancis Dunneryのラジオ番組等、色々と忙しくしている。様々な形でクリエイティヴな活動をするのが好きなんだ。

MM : ファンへのメッセージをお願いします。
FD : 遂に今年は日本のみんなに会えるので、とても楽しみにしている。昔を懐かしんでみんなに集まってほしい。かなりご無沙汰しているからね。もう日本とは長い付き合いだし。やっとまともな日本食が食べられるよ(笑)


Francis Dunnery official site : https://www.francisdunnery.com/
Francis Dunnery facebook : https://www.facebook.com/FrancisDunnery/



VAMPIRES / FRANCIS DUNNERY
https://www.francisdunnery.com/shop/

CD1
01. Calling All the Heroes
02. Still Too Young to Remember
03. The Old Man and The Angel
04. Feels Like Summertime
05. Underneath Your Pillow
06. Midnight
07. Screaming On The Beaches

CD2
01. I Got You
02. Rose Marie
03. Never Go to Heaven
04. Yellow Christian
05. The Ice Melts Into Water
06. Vampires
07. Once Around The World