Bill Champlin
ビル・チャンプリン、ジョセフ・ウィリアムス、ピーター・フリーステットによるプロジェクトがAORファンの期待に見事に応えるオリジナルスタジオアルバム「CWF(チャンプリン・ウィリアムス・フリーステット)」をリリースした。アルバムに収録されている曲はどの曲も珠玉のメロディを持っており、ビル、ジョセフによる爽やかで哀愁を帯びたボーカル、そして曲の魅力を最大限に惹き立てるピーターの的を得たクレバーなギターワークが展開されている。
今作での活躍は勿論、シカゴでの活躍やアース・ウインド&ファイアー「After The Love Has Gone」やジョージ・ベンソン「Turn Your Love Around」への楽曲提供などによるグラミー受賞、そして自身のソロ活動でも多くのファンに支持され続けているビル・チャンプリンにアルバムについて話を訊いた。
Interview / Text Mamoru Moriyama
Translation Louis Sesto (EAGLETAIL MUSIC)
Muse On Muse (以下MM) : メロディックで優れた楽曲が揃った素晴らしい作品「CWF」をジョセフやピーターと作り上げましたが如何でしたか?
Bill Champlin (以下BC) : 断続的ではあるものの、ピーターとは彼の過去3〜4作品で一緒に仕事をさせてもらっている。それに何年か前にピーター、ジョセフ、妻のタマラと一緒にスウェーデン全土とノルウェー数カ所を共にツアーしている。彼のウェストコースト系の音楽に対する献身的な姿勢はとても素晴らしいし、彼の作品における作曲、プロデュース、そして演奏もとても優れている。何年か前に彼はカリフォルニアに出向き、素晴らしい楽曲の数々を手に3アーティストによるアルバムの構想を描いていた。自分のガレージにPro Toolsのシステムが設置してあり、そこでジョセフと一緒にピーターの楽曲の作業を行ったり、新たに”Evermore”、”Two Hearts at War”、”Rivers of Fear”をみんなに聴かせて、それをCD用に追加した。更に日本盤ボーナストラック用に”Lavender Moon”とインストゥルメンタル曲を追加した。ジョセフと一緒に作業をするのはいつも楽しいよ。過去に何度もレコーディングの仕事を一緒にしているし、「West Coast All Stars」も一緒にやっている。”Rivers of Fear”もそれと同じようなアプローチをとったのさ。結果的にアルバム用に素晴らしいアカペラ曲が仕上がった訳だ。ウィル(チャンプリン)も共作している曲なので、彼にも歌を歌ってもらったよ。
MM : あなたとジョセフは勿論シンガーとして歌っていますが、それ以外の部分も含めた3人のアルバム作りにおける役割分担についてはどのように行われたのでしょうか?
BC : 殆どの楽曲は既に作曲されている状態だったので、誰がどの曲を歌うかという問題だけだった。これは主にピーターのプロデューサーとしての判断だった。楽曲によっては3人以外の声が必要だったところもあったので、そこはタマラとウィルに入ってもらった。ランディ・グッドラムもこのプロジェクトに作詞で携わっていた。彼は”Evermore”の歌詞を共作している。とても美しい歌詞に仕上がっているし、彼のピアノ演奏も世界トップレベルだ。ランディと一緒に仕事ができるのも最高だ。ここ何年かの間に彼はピーターと数多くの楽曲を手掛けているし、僕自身も彼と何曲か一緒に仕事をしている。ともかく彼と一緒に仕事ができることはいつも喜ばしいことだ。ジョセフと一緒にヴォーカルのアレンジをするのもとても楽しいよ。彼はどこでコーラスを効果的に使えば良いかを熟知している。お互いに少し異なったアプローチを持っていることもあって、2人で一緒に仕事をするといつも上手くいくのさ。
MM : “RIVERS OF FEAR”では素晴らしいアカペラに仕上っていますが、この曲についてお聞かせ下さい。
BC : この曲は2001年9月11日のニューヨーク/ワシントンで起きた同時多発テロの直後にウィルと一緒に書いた曲だ。以前、ウィルがアコースティック・ギター2本とコーラスを使ったヴァージョンをやっていて、その時からこの曲をもっと世に聴いてほしいという思いからジョセフとピーターに聴かせたのさ。その時にアカペラ・ヴァージョンとして新たにこの曲をアレンジすることを提案した。ジョセフの持ち味を活かしたアレンジに仕上がっているよ。曲中のドラム音は全てジョセフの声によるものだ。実際に「声」以外に録音されているのは指を鳴らしている音だけだ。これはとても楽しかったね。ピーターと彼のエンジニアがとても上手にミックスをしてくれている。決して簡単な作業ではないからね。特に、彼らがミックスする前にミックスを手掛けたエンジニアが決して世界一のエンジニアではなかったからね・・・まあ、僕なんだけど。歌詞の内容としては、今の世の中の情勢にもタイムリーな内容だね。特に北欧やヨーロッパに当てはまるだろう。残念ながら、これからしばらくの間はタイムリーな内容になってしまいそうだね。今の世の中、憎しみに満ちた人々がとても多い・・・。
MM : この曲や”TWO HEARTS AT WAR”ではあなたの息子であるWill Champlinもソングライティングやヴォーカルで参加しています。
BC : ウィルは素晴らしいアーティスト、シンガー、プレイヤー、そしてプログラマーだ。彼はこの2曲を共作しているので、少し歌ってもらったのも自然の流れだろう。彼はナッシュビルの作曲家、マーク・ビーソンと一緒に”Two Hearts at War”を書いている。マーク・ビーソンは今ナッシュビルで最も優れたソングライターだと僕は思っているよ。サビの部分の歌詞なんか最高だ。ウィルとマークはいつも一緒に素晴らしい曲を書いている。ジョセフに”Hearts…”を聴かせた時も、彼はすぐに曲を気に入ってくれた。ウィルの音源にジョセフと2人でヴォーカルを乗せて、それをピーターに送った。ピーターもウィルのラインをいくつか引っぱり出して楽曲を上手く仕上げてくれた。ウィルの作曲センスは本当に素晴らしい。他のプロジェクトではベースを弾いてもらったこともあるし、優れたピアニストが必要な時もまずウィルに声をかけているんだ。
MM : アルバムの中でお気に入りの曲を教えて下さい。
BC : ”Still Around”における全員のパフォーマンスをとても気に入っているよ。でも、アルバムのどの曲にも違った良さがあるね。実際にガレージで録音した時のことを忘れてしまっていたけど、ピーターがパソコン上でミックスされた音源を送って来た時に、ミックスが素晴らしかったのもそうだけど、アルバムに参加してくれた全てのミュージシャンの素晴らしい技量に改めて気づかされたよ。それにエンジニアリングやミックスもこれ以上にないほど素晴らしい出来だ。間違いなく今までの中で最も気に入っているアルバムの1枚だ!特に日本盤にはボーナストラックが入っているので、日本盤の方がお気に入りだよ。”Lavender Moon”は自分の他にポール・ペレスとブレンダ・ラッセルという最高のソングライターたちによって作られた曲だ。ブレンダと一緒に作曲ができたのはとても嬉しいね。彼女のことは長年知っていたけど、実際に引き合わせてくれたのはポールなんだ。結果的にはとても楽しく仕事ができたし、素晴らしい曲を完成させることができたと思っている。ピーターがインストゥルメンタルをやっているのもいいね。彼がどれほど素晴らしいプレイヤーかが分かるのも良いことだと思うよ。このプロジェクトに携わることができて誇りに思っている。今後は北欧やヨーロッパでプレイすることになると思うし、東京やもしかしたら大阪でもライヴが決まるという噂を聞いている。日本には長い間行っていないからね。また日本に行って懐かしい仲間たちにも会いたいよ。おそらく夏頃になるだろう。噂はあるみたいだよ![注.ブルーノート東京における2016年6月8日~10日の公演が決定]
MM : ファンへのメッセージをお願いします。
BC : この夏、日本でCWFのファンの皆さんに会えるのを楽しみにしている。是非、ライヴに足を運んで下さい。それと、これからも良い音楽を聴き続けて下さい。皆さんが思っている以上に、世の中には素晴らしい音楽が存在します。あとはご自分で探すだけです。CWFのようなプロジェクトは参加しているアーティストたちが音楽を愛しているからこそ誕生したプロジェクトです。このような趣旨のプロジェクトは他にも沢山あるはずです、必ず!近々お会いしましょう!
Bill Champlin official site : http://www.billchamplin.net/
Bill Champlin facebook : https://www.facebook.com/billchamplinmusic
CWF / Champlin Williams Friestedt
PCCY.01985 ¥2,500(本体)+税 [ポニーキャニオン]
01. RUNAWAY
02. NIGHTFLY
03. ARIA
04. TWO HEARTS AT WAR
05. STILL AROUND
06. RIVERS OF FEAR
07. ALL THAT I WANT
08. AFTER THE LOVE HAS GONE
09. CARRY ON
10. EVERMORE
11. LAVENDER MOON
12. OCEAN DRIVE