Vol.52 Gustavo Carmo / September 2015

Gustavo Carmo

ANGRAの元ドラマーであるAquiles Priester(アキレス・プリースター)とVERSOVERのギタリストであるGustavo Carmo(グスタボ・カルモ)の二人の超絶技巧派ブラジリアンミュージシャンにより2014年にリリースされたメロディックで秀逸なメタル/ロック・フュージョン曲揃いのインストゥルメント作品「Our Lives, 13 Years Later…」。

日本でも高い人気を誇るANGRAのメンバーとして活動していたアキレスの名を知っているメタルファンは多いと思われるが、ギタリストであるGustavo Carmo(グスタボ・カルモ)についてはその名を初めて耳にする人もいるのでは?
しかしながら、「Our Lives, 13 Years Later…」で聴くことができるグスタボのテクニカルかつセンスに溢れたギタープレイは、ゲスト参加しているトニー・マカパイン、ヴィニー・ムーア、グレッグ・ハウといったギタリスト達と比べても遜色ないものであり、グスタボが注目に十分値するギタリストであることを聴く者に強く知らしめている。

Gustavo Carmo(グスタボ・カルモ)に彼の音楽的なバックグランドやギタープレイ、そして「Our Lives, 13 Years Later…」について訊いた。

Interview / Text  Mamoru Moriyama

Translation         Louis Sesto (EAGLETAIL MUSIC)

 

Muse On Muse (以下MM) : 最初にあなたの簡単なプロフィールやあなたがギターを始めた当時の年齢、きっかけについて教えて下さい。
Gustavo Carmo (以下GC) : VERSOVERというバンドでギターをプレイしているグスタボだ。父はプロのミュージシャンで、ブラジルの小さな街でラジオ局を運営していた。母も音楽をやっていて、町の合唱団でクラシックを歌っていた。音楽家族の中で育ったものの、楽器を始めたのは意外と遅くて、12才の時にアコースティック・ギターを始め、13才になってエレキ・ギターを始めた。15才から20才の間は集中的にクラシック・ギターの勉強をした。エレキ・ギターを始めてからは常にエレキ・ギターを弾き続けているよ。

MM : その当時に影響を受けていたミュージシャン、ギタリストは?
GC : ギターを始めた頃に最も影響を受けていたのはMarty Friedman、Randy Rhoads、Zakk Wylde、Tony MacAlpine、Yngwie Malmsteen、Steve VaiそしてJoe Satrianiだった。その後はSteve Morse、Jeff Beck、Frank Gambale、Greg Howe、Vinnie Moore、Eric Johnson等のギタリストにも影響を受けるようになった。尊敬するミュージシャンたちでもあり、彼らの音楽やプレイスタイルを細かく分析した。クラシック・ギターの世界ではAndrew Yorkが大きなインスピレーションになっていた。その他、Fernando Sor、Heitor Villa Lobos、Francisco Tárregaにも影響を受けていた。クラシックやメタル以外にもブラジルのポピュラー・ミュージックを聴いたり弾いたりすることもあった。

MM : あなたは卓越したテクニックとメロディセンスを持ち併せた素晴らしいギタリストですが、当時はどのような練習方法でギター・プレイを上達させ、オリジナリティの確立に努めたのでしょうか?
GC : 自分が若い頃に父親がプレイしていた音楽や彼のラジオ局でオンエアされていた音楽が今の自分の音楽の表現方法に大きな影響を与えたのは紛れもない事実だ。あの頃は何千枚ものあるアナログ盤から好きに音楽を聴くことができた。当時としてはとても珍しいことだった。ブラジルのポピュラー音楽からカントリーやポップ、ロックまで様々なジャンルを聴いていた。
テクニックを上達される練習方法としては、エレキ・ギターを一日に3〜4時間、そしてクラシック・ギターを一日に同じく3〜4時間練習していた。その中で30分ずつブロック分けして様々なテクニックの中から一つの課題を集中的に練習したり、他のプレイヤーから学んだりもしていた。その他にも、若い頃から作曲にも多くの時間を費やしたね。

MM : プロとしての活動を始めて自身のバンドVERSOVERを結成していますが、このバンドについて教えて下さい。
GC : VERSOVERは自分が初めて組んだオリジナル曲を演奏するバンドで、兄弟であるロドリゴ・カルモとその他、仲のいい友人2人と1997年頃に結成した。みんな近所に住んでいて、同じような音楽を好んでいたのがバンドを組むきっかけだった。同じような目標を持っていたし、ともかく自然の流れで組むことができた。
自分が今まで公式にリリースした作品の殆どはVERSOVERによるものだ。今までにデモテープを1本、スタジオ・アルバムを2枚、EPを1枚、ライヴCD/DVDを1枚リリースした他、ブラジルのメタル系レーベルのDie Hard Recordsのプロジェクト作品にも参加させてもらった。
地元では沢山のライヴを行いながら、Blaze Bayley、Edguy、Angra等のオープニング・アクトを務めたこともある。それに、ブラジルの人気テレビ番組「Programa do Jô」に出演したこともある。
VERSOVERは何度か活動が止まってしまったこともあったが、今はまた活発に活動をしている。来年のリリースに向けて新しいスタジオ・アルバムの作曲を行っているところだ。メンバーもオリジナル・メンバーの4人中3人がバンドに戻っている。自分と兄弟のロドリゴ、ドラマーのMaurício Magaldiに加えて、ベーシストのNeandro Moreiraが現在のライナップだ。これは2005年当時と同じライナップになる。

MM : あなたはクラシック・ギターのスタイルでもブラジルやヨーロッパで公演しています。クラシック・ギターにおける活動について詳しく話して頂けますか?
GC : 15才の頃からブラジルで最も有名なクラシック・ギター奏者の1人でもあるHenrique Pintoからレッスンを受けるようになり、その後いくつかのコンテストにも出場して南アメリカ大会で賞を受賞したこともある。それがきっかけにもなり、クラシック・ギター界において少し注目されるようにもなった。この頃はクラシック・ギターのコンサートも沢山やったし、ギターを教えることも多かった。
また、音楽理論やハーモニーに関するインストラクターをしてくれていた歌手のClaudinei Alvesとデュオを結成し、コンサートも何度か行った。このデュオでブラジルの国内コンテストで準優勝も果たしている。
クラシック・ギターのキャリアは比較的短かったものの、素晴らしい成果に満ちていたと思っているし、現在のギター・プレイの基礎を作ってくれただけでなく、音楽的なアプローチや学習方法の形を作ってくれたと言っても過言ではない。


Aquiles Priester, Gustavo Carmo

MM : それではAquiles Priesterと制作したアルバム「OUR LIVES, 13 YEARS LATER..」について・・。Aquilesとこのアルバムを作ることとなった経緯についてお聞かせ下さい。
GC : Aquilesと出会ったのはDie Hard Recordsが企画したHamletというブラジルのアンダーグラウンド系メタルバンドが数多く参加したプロジェクトのレコーディング時だった。そのレコーディング直後にDie Hard Recordsは僕とAquilesに新たなイントゥルメンタル・アルバムへの参加オファーをしてくれた。このアルバムの制作をAquilesと一緒に始めたものの、彼はその後ANGRAに加入することになり、契約上の問題や時間の制約が原因でこの新たなプロジェクトはお蔵入りになってしまった訳だ。
何年もの時が過ぎて、AquilesはANGRAを離れ、自身のバンドでもあるHANGARを中心に自らのソロ・キャリアを再びスタートさせた。ANGRA脱退の数ヶ月後、VERSOVERのライヴでドラマーが必要になり、Aquilesに連絡をしたのが彼と再び繋がるきっかけだった。その後、AquilesとHOUSE OF BONESという新しいバンドを組むことにもなり、この頃からまた2人の間で創作意欲が沸いてきた訳だ。また、その同じ頃にAquilesと一緒にVinnie Mooreの前座としてツアーを回ったり、Aquilesの教則DVDに収録されていた楽曲にレコーディングにも参加させてもらっていた。
HOUSE OF BONESのEPをレコーディングしていた頃に、Aquilesにいくつかのリズム・パターンやフィルを録音してもらった。僕はこのドラムを元に楽曲を新たに作ろうと思っていた。最初はAquilesもこのアイディアには半信半疑だったものの、2曲を完成させてAquilesに音源を送ると、彼も可能性を信じてくれた。その時、2人の間で2001年にお蔵入りになったプロジェクトの続きを再開させようという気持ちが芽生えたのさ。

MM : アルバムは聴く者を惹き込むメロディックかつテクニカルな秀逸な曲が満載ですが、Aquilesとの曲作りはどのように進められたのでしょうか?
GC : このアルバムの作曲プロセスは通常とは少し異なる形だった。僕とAquilesは実際にスタジオで一度も顔を合わせずに作曲を進めた。作曲は全てドラム・パートから始めた。Aquilesがリズム・パターンやフィルをレコーディングし、それを僕に送ってくれた。ドラムを元に僕はメロディーやハーモニーを考えて、それをドラム・トラックに重ねて彼に再び送る。調整や修正をしながら最終的なアレンジが決まるまで、そうやってデータを送り合って作っていったのさ。
僕はアメリカのシアトルに住んでいて、Aquilesはブラジルのサンパウロ住んでいる。遠くに住んでいる上に、お互い時間の制約もあるので、この方法で作曲をする以外に方法は無かった。

MM : このアルバムではトニー・マカパイン、ヴィニー・ムーア、グレッグ・ハウ、ケヴィン・ムーアなど素晴らしいアーティスト達が参加しています。彼等がアルバムに参加することとなった経緯についてお聞かせ下さい。
GC : アイディアはごく自然に出てきたものだった。僕もAquilesも、こういったゲストに参加してもらいたいという共通の考えがあった。音楽的にも素晴らしいものを提供してもらえると思ったし、こういったスター・プレイヤーたちに参加してもらえたのはとても喜ばしいことだった。
参加してもらった経緯に関しては各ゲストによって異なるのだが、殆どのゲストとは元々何らかのコンタクトを持っていた。逆にKevin Mooreの場合は突然のアプローチだった。僕は元々彼の音楽の大ファンで、ある楽曲に彼のスタイルのキーボードが必要になった時に、彼の起用を突然思いついた訳だ。
Aquilesは元々Tony MacAlpineやVinnie Mooreのドラマーだし、僕自身も彼らのサポート・ギタリストとしてブラジルでツアーをしているので、TonyとVinnieとは既に繋がっていたし、以前にGreg Howeからギターを習っていた時期もあったのでGregとも繋がっていた。そういった感じで繋がりのあるゲストを起用した。

MM : ゲストミュージシャン達には音源データを送り彼等のプレイを入れてもらったのでしょうか? 彼等と曲を仕上げていく中で学んだことや特に印象に残ったことは?
GC : その通りだ。ゲストにはファイルを送って、その音源を聴きながら各自パートを録音してもらった。どのテイクも素晴らしかったよ!各ゲストからファイルを送ってもらい、その結果をチェックすることができたのは最高の経験だった。それぞれのテイクを聴いて、各ゲストだと分かるトレードマーク的なサウンドやプレイが入っていたのも嬉しかった。彼らの「声」みたいなものだ!今までずっと(CD等で)聴いていたプレイやサウンドが、自分の楽曲の中に取り入れられているのを初めて聴いた時は感動したね!

MM : あなたのギター・プレイはどの曲も歌心を感じさせるメロディックなものであるとともに、テクニカルでスリリングな素晴らしいプレイです。リズム・ギターでは複雑でヘヴィなものから、例えば”Carousel”の中間部のギターのカッティング、リフによるグルーヴ感溢れるものまで多彩なプレイを聴くことができます。あなたがソロを組み立てる際やバッキングギターを構築する上でのそれぞれのアプローチ方法について詳しく教えて下さい。
GC : ドラムを元にしている楽曲ということもあって、時には各パートをより統一性のある形でアレンジし直したりする必要もあったが、大半のギター・ワークに関しては各曲のリズム・セクションに合わせて良いアイディアやプレイが得られるまでインプロヴィゼイションで弾いていた。まずはリフ/リズム・ギターから始めて、その後はテーマとなるメロディーやソロという順番で進めた。各パートを数回録って、ある程度の流れが作れるようになるとその楽曲が固まっていく感じだ。
創作的な観点から言うと、今回の作品は我々にとっても新たな試みだった。普段はミュージシャンが全員同じスタジオの中で音を出しながらアイディアを出し合い、楽曲の形を作り上げていくものだ。また、メンバーが別々に作業する場合でも、基本的にはリフやメロディー・ライン先行で行われる。しかし、今回の曲作りにおいては僕の作曲の元となったのはドラムのリズム・パターンとフィルだけだった。Aquilesに関して言えば、彼の頭の中の音楽的想像力とボキャブラリーだけが元となっている訳だ。この方法で作業を進めた結果、普段の作曲やレコーディングプロセスでは絶対に得ることのできないアレンジや構成、フレーズ、楽曲の形といった産物が沢山あった。
アルバムを制作するにあたって、何度聴いても飽きないような内容に仕上げることができるのかどうかという不安は常にあった。各楽曲が特別であって、リスナーがアルバムを聴くことによって素晴らしい体験になるようなものに仕上げる必要があった。とても複雑かつテクニカルなアルバム1枚を通してこの考え方を保つのは非常に難しいことだ。そういった理由もあって、僕は曲を何度も修正したり微調整をする癖がある。楽曲に対して、自分の中で飽きてしまうということは楽曲の何かが正しくないという証拠だ。

MM : アルバムで使用したギター、アンプ、ペダル類を教えて下さい。
GC : アルバムではギターを1本しか使用していない。使ったのはPRS Custom 24だ。ギターのレコーディングは全てアメリカ・シアトルにある自宅スタジオで行われ、Digidesign Eleven Rackを通してProToolsで録音されている。ギターは基本的に後からリアンプしている。録音時は生音の信号だけを録音しながら、ユニットのシミュレーターを使って実際のギター・サウンドを想定した。ギターのレコーディングが終わってからOrbits Studioへ行き、ギターの生音の信号を実際のギター・アンプとキャビネットに通してリアンプを行い最終的な音を作った。
リズム・トラックにはMarshall 9100 Dual MonoblockパワーアンプとMarshall JMP-1プリアンプを使用した。パワーアンプとプリアンプの間にTHD Hot Plateアッテネーターを使った。これを使用することによってプリアンプではなくパワーアンプ寄りのトーンが得られる。パワーアンプのチューブ・ディストーションの方がより太くて確実な音がする。プリアンプの方は各曲に必要なゲインを得るためにツマミを合わせている。パワーアンプはフルの状態にすることで、大きい真空管から最大限の出力を得られる。更にアッテネーターのレベルを調整してスピーカーのスイート・スポットとマッチさせる訳だ。パワーアンプに使用した真空管はSovtek 5881。リズム・トラック用のキャビネットはCelestion Greenbacksを搭載したJCM800だ。
ソロにはレコーディングを開始した数年前に手に入れたレアな1979 Marshall JMPのヘッド。ここでも同じようにアッテネーターをヘッドとキャビネットの間に使っている。キャビネットはMarshall 1960Bに元々1979のスタックに入っていたBlackbackを搭載している。エフェクトにはMarshall JFXを使っている。
ギターにはNeutrikのプラグが付いたCanareケーブルを使っている。また、アンプからアッテネーター、スピーカーへはPlanet Wavesのケーブルで繋げている。JFXとJMP-1を繋げるSEND/RETURN用ケーブルにはMogamiを使っている。
使用したピックはDava Controlのマルチゲージ・タイプ。とてもフレキシブルなセンターに粗い表面仕上げになっている。パッセージによって、表現力を伴うフレーズ等、弦から離してプレイをするために圧力を弱める場合はフレキシブル・センターを使うのが効果的だ。弦はD’Addario Nickel Wound EXL110とEarnie Ball Slinky Cobalt 2721。共にゲージは0.10 (10/46)。
ギターに使用したマイクはC414BULSと改造されたSM57。マイク用のプリアンプはNeve 1073とJoe’s Wunder Audio Preだ。

MM : ファンの人達へメッセージをお願いします。
GC : 日本の皆さんには是非今回のアルバムを聴いて頂きたい。アルバムを作るのがとても楽しかったので、リスナーの皆さんも同じようにアルバムを聴いて楽しんでもらえたら嬉しいですね。Aquilesとは新しいDVDを制作中で、今回のアルバムの楽曲も含まれる予定です。同じくAquilesとライヴ・クリニックも開催する予定なので、皆さんといつかお会いできる日を楽しみにしています!Rock on!!

Gustavo Carmo facebook : https://www.facebook.com/gustavo.carmo.guitar


Aquiles Priester | Gustavo Carmo / Our Lives, 13 Years Later…

1. Elevator
2. Dolphin Race [Special Guest: Greg Howe]
3. Carousel
4. Our Lives, 13 Years Later…
5. Titanic: A Night to Remember [Special Guest: Vinnie Moore]
6. The Old Man and the Sea [Special Guest: Tony MacAlpine]
7. Cluttered Inbox [Special Guest: Kevin Moore and Seda Baykara]
8. The Bucket Is Full [Special Guest: Nili Brosh]
BONUS TRACKS:
9. Jubilation / Sunburst
10. PsychOctopus Drum Solo

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