Sonny Landreth
Photo by Robley Dupleix
スライドバーを駆使した繊細で絶妙な表現力、かつダイナミックなパワーも感じさせるギタープレイでオリジナリティ溢れる音楽を聴かせてくれるサニー・ランドレス。
サニーはトレードマークであるそのスライド奏法のみでなく、ボーカルやソングライティングといった面でも優れた才能を持ちあわせており、そのアーティストとしての総合力がクオリティの高い音楽作品を創り続ける源となっている。
新作「Bound By The Blues」はサニーが影響を受けてきたブルース曲のカヴァーとそれらブルースへの敬意が表された珠玉のオリジナル曲で構成された作品となっている。
新作「Bound By The Blues」についてサニーに訊いた。
Photo by Robley Dupleix
Interview / Text Mamoru Moriyama
Translation Louis Sesto (EAGLETAIL MUSIC)
Muse On Muse (以下MM) : 新作「BOUND BY THE BLUES」におけるコンセプトについてお聞かせ下さい。
Sonny Landreth (以下SL) : 自分が聴いて育ったヒーローでもあるブルース・ミュージシャンたちに対するトリビュートを作りたいと思ったんだ。彼らの名曲だけでなく、彼らの音楽に影響されたオリジナルの新曲も収録しようというコンセプトだった。人々が人生において様々な困難や試練を乗り越え、その中で幸せを掴んでいく中でブルースという音楽がみんなの共通語になり得るような作品にしたかった。
MM : ロバート・ジョンソンの”Walkin Blues”、”Dust My Broom”やエルモア・ジェイムスの”It Hurts Me Too”なども収録されています。彼等の数多くの曲の中から特にこれらを選んだ理由について教えて下さい。
SL : 勿論、他にも選びたい曲は沢山あった。でも、今回の選曲は私的なものにするというところが重要だったのさ。中でも自分が音楽を始めた時に大きな影響を与えてくれた曲を選んでいる。そのプロセスの中でとても面白いことに気づいたんだ。自分がギターを弾き始めた時期や頻繁にツアーを行っていた20代や30代の頃に比べて、今は全く異なるアプローチでこれらの楽曲を演奏していたことに驚かされたね。自分が進化して新たな発見をしていく中で、身につけた新たなテクニックを音やアレンジ取り入れていた訳だ。楽曲そのものに影響されて、自分が気づかないうちに様々な技法を自然に使い分けていることもあった。音楽の更に奥深い要素に触れることができて、とても有意義な経験ができた気がするね。
MM : あなたのペンによるオリジナル曲も5曲収録されていますが、インストゥルメンタル曲、歌が入った曲、それぞれの場合におけるあなたの曲作りへの考え方についてお聞かせ下さい。
SL : 最も大きな違いはメロディの扱い方だね。勿論、どんな場合でもメロディが重要な要素であるのは変わりないものの、インストゥルメンタルの場合はヴォーカルの代わりになっていることもあってより一層重要度が増す。リリカルであり、メロディアスにフワフワと浮かぶようなヴォーカルの要素を含んでいるのがスライド・ギターのエッセンスで、個人的にはプレイヤー、ソングライターの両面から考えても自分に最も自然にマッチしている。良いインストゥルメンタル曲というのは人のイマジネーションを掻き立てるものであり、ディテールのあるイメージだけでなく、抽象的なイメージも想像できるところがとても好きだ。そういった意味で、可能性は無限とも言える。逆に良い歌詞と素直でソウルフルな歌声によって作られたヴォーカル曲は人の心に触れる。私はどちらも大好きし、自分のヒーローたちも両方を好んだ人たちが多かった。
MM : ジョニー・ウインターに捧げられた”Firebird Blues”についてお聞かせ下さい。
SL : ジョニーの訃報を聞いたのはバンドとニュー・アルバムのレコーディングに入る直前だった。とても衝撃的だったね。過去5年間、何度も共演をしているし、日本ツアーも一緒に行った。それに、2011年には彼のアルバム『Roots』にも参加させてもらった。『Bound By The Blues』のテーマは自分のヒーローたちに対するトリビュートということもあって、ジョニーをそこに含めるのも重要なことだった。バンドにはGのキーでブルースをジョニーを思い浮かべながらプレイするように伝えた。とても自然発生的で生々しく、時には荒々しい部分もあって、ジョニーの音楽スタイルと同じようにとても正直な音に仕上がった。この曲ではヴィンテージのギブソンFirebirdをオリジナルのMarshall Plexiと4×12のキャビを通して弾いた。これは私が1970年にテキサス州ヒューストンで初めてジョニーのライヴを見た時の彼のセッティングとほぼ同じだ。アルバムの中でもお気に入りの曲のひとつだ。
MM : 今作でも感情豊かで絶妙なニュアンスのスライドによるプレイを聴くことができます。これからスライド奏法を学ぼうとしているギタリスト達にアドバイスをいただけますか?
SL : まず機材的な話をすると、スライド・ギター専用のギターを用意して通常よりも太めの弦と高めの弦高にセッティングすることをおすすめする。チューニングはデルタ・ブルース系のミュージシャンがよく使うオープンEかGに合わせるのがいいだろう。その方がギターの鳴りも良くなるし、初心者にとってはコードを展開するのが楽になるはずだ。スライド・バーは弦のゲージに合わせてスライド・グラスやメタル、もしくは自分にとって最も相性の良いものを選ぶこと。軽すぎると必要なサスティンが得られなくなるし、軽めの弦に対してバーが重すぎるたり、フレットに近づきすぎると音が詰まってしまう。その間にあるスイートスポットを見つけなければいけない。音楽的な話をすると、演奏時はブレスを念頭に置いた木管楽器奏者と似たような考え方を持つといいだろう。そうすることによって他のギタリストよりも暖かく、表現力に優れたプレイをすることができることになる。それと、過去や現代に限らずスライド・ギターの名手たちのプレイを聴くことも重要だ。色んなテクニックを取得することも大切だが、独自の歌い方やリリカルなサウンドを確立することを目標にするのも大切だ。どんなことにも当てはまることだと思うが、時間や労力を必要とする。でも、ある意味冒険のような要素もあると言える。
Photo by Bruce Schultz
MM : アルバムで聴けるギターも温もりのあるとても素晴らしい音です。奏者であるあなた自身のテクニックに依存している部分が大半を占めているとは思いますが、アンプやペダルでの音作りにおいて工夫していることを教えて下さい。
SL : 勿論、好みのエフェクトやペダル、アンプ、ギター等はあるものの、何よりも重要なのはタッチだ。「温もり」を得るためにはChet Atkinsやデルタ系のミュージシャンと同じようなフィンガー・スタイルのアプローチを持つことが重要だ。楽器のコントロールも得られるし、スライド・ギター独特のサウンドを習得するためのポテンシャルも高くなる。
MM : 今回の作品で使用したギター、アンプ、ペダル類について教えて下さい。
SL : ギターはプロトタイプ・フェンダー・シグネイチャー・ストラト
・ メイプルネック仕様(ピックアップ:DiMarzio DP-181(リア)、Fender Noiseless(センター&フロント)、チューニングはAかAm
・ ローズウッド・フレットボード仕様(ピックアップ:Lindy Fralin Hot Vintage Single Coil)、チューニングはG
・ 1960 ギブソン・レスポール (”Simcoe Street”で使用)、チューニングは G
・ Robben Fordの1958 フェンダー・ストラト (”Dust My Broom”で使用)、チューニングはD
・ 1930 National Duolian (”Bound By The Blues”で使用)、チューニングはAm
・ 1997 Metal Body Round Beck Dobro (”The High Side”で使用)、チューニングはD
ペダルはブースト用にFuzzulatorとHermida Mosferatu Driveを足して使っている。それ以外の時はHermida Mosferatu Drive。”Where They Will”ではHermida Dover Driveを使った。その他にはAnalog Man Compressor、Voodoo Lab Giggity。”Cherry Ball Blues”の2回目のソロではT.C. Electronics Chorus(Pulseモード)を使った。 あとはFulltone Tube Tape Echo。
アンプ類はDemeter TGA-3、Dumble Overdrive Special(”Simcoe Street”で使用)、Marshall Plexi 100 (”Firebird Blues”で使用)
キャビネット類はほぼ全曲でCelestion V-30sスピーカーを搭載したMarshall 4×12。それ以外にもCelestion K-100スピーカー搭載のFender Bandmaster Cabと同じくCelestion K-100スピーカーを搭載したDumble 1×12を使っている。
MM : 日本のファンへメッセージをお願いいたします。
SL : 親愛なる日本の皆さん、何十年も前に初めて日本の地を踏んだ時からあなたたちの国と文化に感心させられました。日本には音楽や芸術に対する独特の情熱があり、それはとても美しく、そして我々にインスピレーションを与えるものでもあります。日本の皆さんに感謝し続けると共に、また日本に戻ることを常に楽しみにしています。
Sonny Landreth official site : http://www.sonnylandreth.com/
SONNY LANDRETH / BOUND BY THE BLUES
1. Walkin’ Blues
2. Bound by the Blues
3. The High Side
4. It Hurts Me Too
5. Where They Will
6. Cherry Ball
7. Firebird Blues (in memory of Johnny Winter)
8. Dust My Broom
9. Key to the Highway
10. Simcoe Street