Stevie Salas (スティーヴィー・サラス) コラム issue #3 Designing A Custom Shop Signature Guitar

今、俺は自分のシグネチャーモデル『Idol Maker』のニューバージョンをデザインしに、ドイツ・マルクノイキルヒェンにあるフラマス・ワーウィックのカスタムショップを訪れている。今週はIdol Makerの共同デザイナーで同社R&D部門チーフ、マーカス・スパングラーと作業しているところだ。

フラマスまで足を運び、新しいギターを作ろうと決心したのは去年のことだった。なぜそうしたかって?それにはいくつか理由がある。

一つ目の理由は、1999年に日本のキャパリソンでオベーション・ブレッドウィナータイプのギターを作って以来、新しいギターを製作していなかったこと。あのギターは本当に最高だったが、もう随分プレイしていたし、そろそろ自分のエネルギーとギタープレイをパワーアップさせる為に、新しいオリジナルギターが必要だと感じていたからだ。

もう一つの理由は、少しセンチメンタルな話になる。フラマスのオーナーで友人でもあるハンス・ピーター・ウィルファーが、ある日、こんな話をしてくれた。「もう一度フラマスのギターラインナップを復活させて、栄光を与えたい。これは決して金儲けが目的ではないんだ。」ってね。よく訊けば、全てはフラマスを愛していたハンスの父親の為に、ということだった。今は俺にも息子がいるし、俺自身も父親と物凄く近い間柄だったので、その話を聞いて感動しちまってね。「何か手伝えることはないか?」と尋ねたら、彼の答えは“是非”というものだった。

しばらくして、米・アナハイムでNAMMショーが開催された際、なんとIdol Makerが「展示会ベストギター賞」に選ばれた。俺達は、「これはいけるかもしれない!」と確信した。程なくしてIdol Makerは飛ぶように売れはじめ、これは何か凄く特別なことをやり遂げたに違いないと感じたんだ。

では、それをどうやって実現したのか?

最初にIdol Makerを生み出す際、マーカスと一緒にしなくてはならなかったのは、オリジナルかつコンテンポラリーなボディシェイプを考え出すことだった。長い間、ありとあらゆるギターが生産されてきた中で、これを実現するのは決して容易ではなかった。

俺が常々求めてきたのはヴィンテージとモダンの両方の要素を兼ね備えたギターで、シェイプに関してはメタル、ファンク、ロック、ジャズと多岐に渡る俺のギター友達が全員納得するようなギターを作ることだった。(ここで全員の共通点を見出すのはホントに大変なんだぜ!?)

木材やその他の基本的な部分に関しては、1988年に初めてヘイマーとエンドースした時に作ったプロトタイプの赤いテレをもとにした。事実、俺がこれまで作ってきたギターのほとんどがこのギターを基調としている。マホガニーボディ、メイプルトップ、24フレットのメイプルネックにエボニー指板というスペックで、リアピックアップには、パワーアップさせたPAFスタイルのもの、そして特に重要なのが、希少なビル・ローレンスのOBLピックアップをフロントに使用している点だ。このピックアップは過去25年以上に渡って俺のトーンの重要な部分を占めている。

一度シェイプが決まれば、あとはマーカスの仕事だ。メインのマホガニーボディに、メイプルトップをまるでトレーを被せるみたいに合わせて、凄くモダンで幾何学的な流れをギターに与えてやる。Idol Makerには、今回、主戦力としてカスタマイズされたセイモアダンカン・カスタムをリアピックアップに採用した。コイツはステロイドで増強したPAFってところかな。ただフロントには例のOBLピックアップが入手できなかったので、同じくダンカンのPhat Catを付けてある。コイツは以前弾いていたDBZ Imperialのリプレイスメント用ピックアップを探していた時に、ダンカンで働いているエヴァン・スコップに勧められて惚れ込んだピックアップだ。ストラトっぽくてブルージーなP90といった感じかな。

今のところ、このコンビネーションはギターファンの間では中々評判が良い。最後に俺のトレードマークであるパープルカラーを配して、Idol Makerが生まれたってわけさ。

それ以来、俺はIdol Makerを市場で最もクールなギターにすべく、更なる革新を目指して、ドイツにあるここフラマス・ワーウィックのカスタムショップまで足を運ぶようになった。

今回の訪問では、『Idol Maker Jr.』、テレキャスとストラトの要素を融合させたバージョン、そして、オリジナルのフロイドローズを搭載したオールドスクールなハイ・アウトプットのIdol Makerなどをそれぞれ試作している。以下がその様子だ。

写真のギターはいずれもプロトタイプで、22フレットのもの、24フレットのもの、メイプルネックのもの、マホガニーネックのもの、そして、ネックのジョイント方式もボルトオン、セットネックと仕様も様々だ。言い換えれば、魔法のトーンを追求する上で、ここフラマスのカスタムショップでは、思い付く限り全てのコンビネーションを試すことが可能ってわけだ。

ここにはほとんどのエキゾチックウッドが揃っているが、俺自身、ネイティブアメリカンとして地球環境に敬意を払っているので、フラマスが『Climate Partner』(企業向けの環境コンサルタント会社)のメンバーであることや、作業工程でCo2を出さないカーボンフリーの方針を採っている点については本当に嬉しく思っている。(フラマス・ワーウィック社では環境に配慮し、無認可の木材や絶滅危惧種の木材は絶対に使用しない。)

今週の俺の目標は、7月に行われるナッシュビルのNAMMショーまでに、いくつかのギターを完成させることだ。

一本目は、ブラックフィニッシュのIdol Maker Jr. レリック仕様。コイツはマホガニーボディで、トップは薄いメイプル、22フレットのメイプルネックにエボニー指板で、ピックアップはリアがPhil X P90、フロントがOBLというスペックだ。そう!このOBLピックアップはハンス・ピーターがドイツ国内のとある店で見付けてきてくれたものだ。もしかしたらこれらが本当に最後の残りかもしれない(?)。

二本目は、Idol Makerのテレキャス/ストラトのハイブリッド仕様で、このギターはスワンプアッシュボディに、メイプルネックとローズ指板というスペックだ。ピックアップはダンカン製のクールなテレキャス用ピックアップをリアに付けようかと考えている。何を隠そうコイツはZZ Topのビリー・ギボンズのおかげで虜になったピックアップだからな。(フロントピックアップは未だ検討中。)

三本目は、フロイドローズ付きの昔のジャクソン風Idol Makerで、リアにOBLのハムバッカー、フロントにシングルサイズのOBLを載せている。俺のヘイマーのテレに結構近い感じかな。

最後の一本は、全てをコリーナ材で作ったIdol Maker。指板はローズウッドで、ファイヤーバード・スタイルのミニハムバッカーが三つ付いている。(これについてもピックアップはまだ色々と試行錯誤しているところ。)

そんなわけで、皆がこれを読む頃には、コイツらもナッシュビルにお目見えしているはずだ。できれば、これまで以上の反響を期待したいもんだ。

最後に、自分のギターをデザインしたり、モディファイしたりする際に、一つ覚えておいてほしいことを伝えておこう。“ルールには守られるべきものと、壊されるべきものがある。”-大事なのは常にこの両方を少しずつ心掛けておくということだ。
 
マーカス・スパングラーとフロイドローズ搭載の試作モデル。

 
スワンプアッシュはいかが?

 
メイプルとマホガニーを合わせるとこんな感じに。

 
良質の木材を見せてくれたハンス・ピーターの息子、ニック。


 
全てはテンプレートから始まる。

 
何色でもOKなんて、超クールだろ?

フラマスのカスタムショップでは、“己の想像力の限界は大空のみ”。

 
カットを終えてフィニッシュを待つフィルXのXGも何本か見付けた。フィルはこれらを9月のボンジョヴィのツアーで使う予定らしい。

 
俺、ベースは下手なんだよな。ここでは最高のベースが作られているのに、弾けなくて残念!

 
スティーヴィー・サラス

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Translation by Yuichiro Chikamochi