Mattias IA Eklundh
Photo by Lennart Sjoberg
既成概念に捉われない自由奔放かつユニークな音楽スタイル、誰もが惹きこまれる良質で心地よいメロディ、超絶ギターテクニック・・これら要素を見事に融合させ決してマニア向けの音楽ではなく、親しみある音楽に昇華させ聴く者を楽しませてくれるアーティストがMattias IA Eklundhである。
遂にファン待望のFreak Guitarシリーズ第3弾となるアルバム「THE SMORGASBORD」をリリースしたMattiasにアルバムについて語って貰った。
Photo by Lennart Sjoberg
Interview / Text Mamoru Moriyama
Translation Louis Sesto (EAGLETAIL MUSIC)
Muse On Muse (以下MM) : 新作「THE SMORGASBORD」をリリースした今の気分は? アルバムはユニークかつバラエティに富んだ全40曲2枚組の素晴らしい作品となっていますね。
Mattias IA Eklundh (以下ME) : このようなアルバムを完成させることができたことに対してとても喜んでいるよ。とても長い時間、そして多くの労力を費やしたからね。時には自分の方向性を見失った時期もあった。そういう時は一歩下がって、何が間違っていたかを判断しなければならなかった。もっと改善させようと思えば改善できた部分はいくらでもある。でも、2013年というこのご時世にこのような作品をリリースできたことには大きな満足感を感じているし、感謝している。
MM : アルバムのコンセプトをお聞かせ下さい。
ME : 特にはないよ。”Freak Guitar – The Road Less Travelled”以降の7〜8年の間に集められた様々な曲やアイディアを形にした作品だ。勿論、その様々なアイデアに関連性を持たせなければいけないという考えはあった。40曲をプロデュースするのは大変だったけど、結果には満足しているよ。
MM : アルバムジャケットのイラストがユニークで興味深いですね。
ME : ありがとう。Freak Guitarシリーズの前2作のアートワークも手がけている友人のAnders Nybergに今回もアルバムジャケットをお願いした。前2作のアートワークを超越するジャケットを作ってくれたと思っている。最高だ!
MM : アルバムのレコーディングはどのように進められたのでようか?制作にはかなりの期間を要したと思いますが・・。
ME : ゲストの演奏以外は全てスウェーデンにある自宅スタジオで録音されている。確かにかなりの期間を要したよ。録音もプロデュースも全て自分でやっているからね。一度にソングライター、ミュージシャン、エンジニア、プロデューサーを全てこなすのは大変だ・・・でも、そのチャレンジが僕は好きなんだ!
MM : アルバムではギター、ベース、ドラムといった全ての楽器パートを基本的にあなたがプレイしていますが、Freak Kitchenのようにバンドのメンバーでプレイする場合、そして今作のように一人で全てのパートをプレイする場合における違いについてあなたの考えをお聞かせ下さい。
ME : Freak Kitchenは常に自分のメイン・バンドだ。ソロでやっている時はどちらかというと実験的な試みが多い。BjornやChrisと作業をするのはいつも素晴らしい経験だし、ともかくプロセスがとてもスムーズなんだ。自分だけで作業をするのは大変だけど、逆にためになることも多い。いつも一杯のコーヒーを持ってスタジオに入り(スタジオは自宅に隣接している)何も無いところから音楽を作り上げる。何年経ってもこの作業は最高に楽しいよ。
MM : Ron “Bumblefoot” ThalやAndy Timmonsをはじめとしたアーティスト達が今作にゲスト参加していますが、彼らが参加した経緯についてお聞かせ下さい。
ME : アルバムに参加しているゲストはみんな友達さ。彼らに参加してもらえたことをとても誇りに思っている。みんな優秀なミュージシャンばかりで、その素晴らしい腕前で僕の音楽を彩ってくれたと思っている。自分の楽曲に煮詰まっている時に、誰だったらこの楽曲を輝かせてくれるか?と、考えてゲストを選んだのさ。
Photo by Lennart Sjoberg
MM : “Peter,I Won’t Drive Another Meter”でのAndy Timmons, Guthrie Govan, Kiko Lourerioの3人によるギター・ソロの掛け合いはギターファンの興味を掻き立てる内容となっていますね。
ME : これだけ多くの優れたギタリストが一曲の中で聴けるなんて最高だろ?やり過ぎた感じがまた素晴らしかったりするのさ!
MM : PVが公開されている”Musth”では櫛を使用したユニークなギタープレイ、サウンドがとても印象的です。このユニークなアイデアはどのように思いついたのでしょうか?
ME : この櫛を使ったプレイも含めて、変わったギタープレイは全て偶然から生まれているものだ。この”Musth”に関しては、スペインのホテルの部屋にいた時にきっかけが生まれたんだ。荷物が紛失してしまい、待っていて退屈していたところ航空会社からもらった櫛でギターを弾いて遊んでいたのさ。それがこのクレイジーな微分音的な楽曲になった訳だ。
MM : あなたはライヴのツアーやギタークリニックで世界中を飛び回っており、インドなどアジアを題材にした楽曲も聴くことができますが、アジアのどういった部分にインスパイアされますか?
ME : アジア、そしてインド音楽は自分の音楽のみならず、人生観にも大きな影響を与えているのは間違いない。特に南インドのカルナータカ音楽は自分みたいな西洋人にとって面白いリズムや型破りな音階に満ちていて、最初に聴いた時は衝撃的だったよ。インドのミュージシャンと接していると自分が初心者のように感じてしまうほど、彼らの知識はとても奥深くて豊富で、とても新鮮に感じるんだ。それと、日本の伝統的な音楽からも多くを学ぶことができると思っている。カルナータカ音楽も日本の伝統音楽も、自分は決してその道の達人になることはできないが、こういった音楽と接して影響を受けることによって自分なりの個性的なサウンドを作り上げることができると思っている。
MM : “Trumpet Lesson”での風船サウンドや”Amphibians Night Out”でのAnimal Keyboardのカエルサウンドなどを楽曲として成立させてしまう手法が実に見事ですね。世の中に存在している様々な音を音楽に昇華させる上でのあなたのアプローチ方法について教えて下さい。
ME : 基本的には自分の耳と考え方を自由にしておくこと。それだけだ。僕は常に自分の周りから音楽、メロディ、そしてリズム・パターンが聴こえてくる。色々聴いている中で面白いと思ったものは録音するようにしているのさ。
MM : “Mahavishnu John”はJohn McLaughlinに対する敬意が込められた曲ですが、彼からはどのような影響を受けたのでしょうか?
ME : その通りだ!ジョンは常に僕を魅了し続ける数少ないミュージシャンのひとりだ。彼は常に新たな方向性を見いだすための旅を続けている。彼は自分にとって真のヒーローなんだ。だから彼に捧げる曲を作ったのさ。
MM : 曲を作りだす上では感性や才能が非常に重要だと思いますが、それが何十曲、何百曲ともなると、それだけでは続かないようにも感じます。 あなたのように数多くの素晴らしい曲を作り続けていく上で感性や才能といったもの以外に必要なことは何でしょうか?
ME : 嬉しいお言葉をありがとう。感謝しているよ。勿論、作曲をするためにはある程度の才能と新境地を開拓しようという意欲が必要だ。でも、作曲は職人芸でもあるのさ。経験と共に上手くなっていくものだ。ただ、長くやっていても新たなアイデアを生み出すのが難しい時もある。
Photo by Lennart Sjoberg
MM : あなたの音楽は非常に高度なギターテクニックが駆使されていながらも聴く者を音楽として惹きつけ、楽しませます。この点について工夫していることや考えをお聞かせ下さい。
ME : まず、曲を書いている時点で自分を楽しませないといけないと思っている。(音楽的に)同じことを繰り返していると気づいた時点でその楽曲はボツにする。基本的には今までに通ったことのない道を進むことにしか興味を持っていない。ただし、あまりにも的外れなことをしないようには心がけているよ。普通のリスナーにも十分楽しんでもらいたいと思っているからね。だから、ちょっと型破りな曲をやったら、その次の曲でバランスを取るようにしている。リスナーにとっつきにくいと思われないように気をつけているよ。
MM : 今回のアルバムで使用したイクイップメントはCaparisonのシグネイチャーギター、Laneyのアンプがメインでしょうか? 他に使用しているギター、ペダル類など機材も併せて教えて下さい。
ME : 普通のペダルは一切使っていない。Jim Dunlopのボリューム・スウィッチだけだ。エレキ・ギターは全てCaparison Apple Horns。アンプは全てLaney。殆どがGH100LだがVH100RとIronheartも使っている。極力、全てシンプルにしておくのが好きだ。
MM : あなたは超多忙な日々を送っていますが、高度なギタープレイを維持するためのギターの練習や作曲といったことへの時間はどのように配分しているのでしょうか? あなたの代表的な1日の時間割を教えて下さい。
ME : ある程度規則正しい生活をするように心がけている。そうしないと何も進まないからね。自宅と土地を少し、スタジオ、そして車を何台か所有している。僕は夫でもあり父親でもある。大きなジャーマン・シェパード2匹とヤンチャな猫1匹を飼っている。家族の生活を支えながら25年以上もの間自分の音楽を作り、そして演奏し続けている。ツアーに出ていない時の代表的な1日は・・・朝の7時に家族を起こし妻のカミーラが朝食を作る間に6才の長男ガブリエルを学校へと送る。帰って朝食を済ませた後、スタジオに5時間ほど入ってから息子を迎えに行く。夕方はメールをしたり、家族と過ごしたりしている。そんな感じだ。
MM : 最近はどのような音楽を聴いていますか? 興味深いアーティストはいますか?
ME : 息子が誕生日にもらったスターウォーズのレゴを一緒に組み立てながら、イーゴリ・ストラヴィンスキーの「春の祭典」を聴いていた。とても刺激的な音楽だね。新しいBLACK SABBATHのアルバムは買ったけど、家ではDean MartinやElla Fitzgeraldを聴いて気分転換をしている。
MM : Freak Kitchenのアルバムもレコーディングが進められているようですが、現在の状況はどのような感じでしょうか?
ME : 後はヴォーカルを入れるだけだ。それ以外は終わっているよ!タイトルは”Coooking With Pagans”。個人的にも気に入っているよ!とてもワイルドでヘヴィな作品になりそうだ。最初のシングル”Professional Help”は11月にリリースされる予定で、アルバムは来年の年明け早々にリリースされるはずだ。
MM : ところで毎年開催されているFreak Guitar Campですが、どういった内容なのでしょうか? 今年の参加者はどういったことを期待できますか?
ME : 14年連続で今年もソールドアウトになったよ。世界各国から色んなギタリストを招いて過ごす2週間だ。素晴らしい才能が結集することになるんだ!ともかくやっていて楽しいよ。回数を重ねる毎に楽しくなっていく。このような企画に沢山の人々が興味を持ってくれることに対して素直に嬉しく思うよ。
MM : それでは今後の活動スケジュールについて教えて下さい。
ME : 今は今年のギター・キャンプで使うバッキング・トラックの制作を仕上げているところだ。これが終わったらFreak Kitchenと夏のフェスティバルにいくつか出演が決まっている。その後は家族と2週間程ギリシャのイオニア海へ行く。ギリシャから戻ったら今度はドイツでニュー・アルバムのミックス作業をする。自分以外にJonas Hellborg、それとインドのRanjit Barotというドラマーが参加していて、今年中にリリースされる作品だ。キャンプが始まる前にクリニックがいくつかあり、キャンプ後はFreak Kitchenのアルバムを完成させている合間にツアーも平行して行うことになる。
MM : 日本のファンへのメッセージをお願いします。
ME : キャリアのスタートから日本の皆さんには常に応援してもらって本当に感謝している。早く日本で皆さんに会いたいと心から思っているよ。これからも応援よろしく!そしてこれからもずっとFREAKYでいてくれ!
Mattias IA Eklundh official site : http://www.freakguitar.com/
FREAK GUITAR – THE SMORGASBORD / Mattias IA Eklundh
Disc 1
1. Amphibians Night Out
2. Musth
3. Mattias – The Beautiful Guy
4. Hells Bells
5. The Smorgasbord
6. Friedrichs Wahnbriefe
7. Sexually Frustrated Fruit Fly Flamenco
8. Daily Grind Disco March
9. Lease With an Option to Buy
10. The Swede and the Wolf
11. Mambo Italiano
12. Mind Your Step (at Schiphol Airport)
13. Crossing the Rubicon
14. That’s Amore
15. Keep It in the Dojo
16. Infrared Jed
17. Peter, I Won’t Drive Another Meter
18. Larvatus Prodeo
19. Blaha Blaha
20. Lullaby for Gabriel
Disc 2
1. In the Goo of the Evening
2. The Dogs of Delhi
3. Special Agent Bauer
4. Mahavishnu John
5. The Harry Lime Theme
6. Dark Matter
7. Trumpet Lesson
8. Mandur and Morgan’s Camel Safari
9. Shore Thing
10. Captain Smith’s Moment of Truth
11. Mah Na Mah Na
12. The Nigerian Gynecologist
13. 6 Rue Cordot
14. Kali Ghat
15. Safe to Remove Hardware
16. Did You Actually Pay for That?
17. Those in Badiyah
18. The Essence of Emptiness
19. Meralgia Paresthetica
20. Guano Afternoon