Joe Satriani
Photo by Chapman Baehler
トップ・ギタリストとして時代の先端を走り続けるロック・ギター界の匠Joe Satrianiが通算14作目となるアルバム「Unstoppable Momentum 」をリリースした。
バックにクリス・チェイニー(B:ジェーンズ・アディクション、スラッシュ)、ヴィニー・カリウタ(Dr:フランク・ザッパ、ジェフ・ベック、スティング)、マイク・ケネリー(Key:フランク・ザッパ、スティーヴ・ヴァイ)といった凄腕のミュージシャンを迎えて制作された今作は素晴らしいバンドサウンドを聴かせてくれるとともに、ヴァラエティに富んだ音楽性の広がりは聴く者に多くのイマジネーションを与えてくれる。
アルバム「Unstoppable Momentum 」についてジョーに訊いた。
Photo by Chapman Baehler
Interview / Text Mamoru Moriyama
Translation Louis Sesto (EAGLETAIL MUSIC)
Muse On Muse (以下MM) : 新作「Unstoppable Momentum」ではギタリストのソロアルバムとしての素晴らしさは勿論ですが、聴き手にまるで映画を観るようなストーリー性やイマジネーションを与える音楽・芸術性に富んだ内容に仕上がっていますね。
Joe Satriani (以下JS) : ありがとう。アルバムを聴いているリスナーが感情に満ちた心の中の旅を楽しんでいる、そんな気分を感じてほしいと思って作ったアルバムだ。
MM : アルバムのコンセプトについてお聞かせ下さい。またタイトル「Unstoppable Momentum」に込められた意味は?
JS : アルバムのタイトルは音楽を作り続け、そして演奏し続けたいという子供の頃から止まることのない自分の欲望を表したものだ。その感情は年々大きくなっていく。タイトルトラックは、その自分の感情と欲望を形にしたサントラのような曲でもある。
MM : これまでの作品同様にマイク・フレイザがプロデュースですが、彼によるプロデュースのどういうところを気に入っていますか?
JS : 彼はともかくスタジオを隅々まで把握している。音の捉え方も独特で面白いんだ。どんな作品やプロジェクトでもクリエイティヴな物の見方を持っている。それにプレイヤーとのコミュニケーションや作業がとてもスムーズだ。これはレコーディングの音入れをしている時にとても重要なことでもある。
MM : レコーディングはどのくらいの期間をかけどのように進められたのでしょうか?
JS : まず自宅スタジオで2ヶ月間曲作りとデモのレコーディングを行った。その後、Skywalker Soundに入り6週間でレコーディングを終えた。バンドは音入れを8日間行い、それ以外の時間は自分のギターのオーバーダブを行っていた。ミックスは12日間、カナダのバンクーバーにあるブライアン・アダムズのWarehouse Studioで行った。
MM : メンバーはベースにクリス・チェイニー、ドラムにはヴィニー・カリウタ、そしてキーボードにマイク・ケネリーといった凄腕のミュージシャンが参加していますが、彼らが今作に参加した経緯についてお聞かせ下さい。
JS : 今回のアルバムの曲作りを終わった段階で、楽曲を新鮮かつエキサイティングな感じでリスナーに聴かせるためには以前とは違うプレイヤーたちを起用する必要があると感じたのさ。ベースとドラムにクリスとヴィニーを起用することによってリズム・セクションは今までに無いグルーヴとサウンドを実現することができた。これには大きなインスピレーションを与えられたよ。その上でマイク・ケネリーが上手くキーボードで空間を埋めてくれてバンドに新鮮で新しいサウンドを与えてくれた。
MM : アルバムに収録されている曲はどれも印象的なメロディを持つとともに一方で各パートが触発されながら曲が展開していくようなライヴ感も持ち併せていますね。
JS : どの曲も一番ナチュラルなフィーリングを持ったテイクを使うようにした。自分の中にあるアルバムのヴィジョンを完成させるためには非常に重要な要素だった。
Photo by Chapman Baehler
MM : アルバムのタイトル曲である”Unstoppable Momentum”はドラマティックでプログレ的な雰囲気を感じさせるとともにヴィニー・カリウタの勢いある激しいドラムが印象的ですね。
JS : この曲におけるヴィニーはまさにクレイジーだ!5/4という拍子でさえも彼が叩けば心地よく、そして力強く聴こえる。
MM : “Three Sheets to the Wind”ではブラス的なアレンジや”I’ll Put a Stone On Your Cain”でのエモーショナルなギターをバックで支えるキーボードのサウンドなど今作ではアレンジの幅がより広がっているように感じられましたが。
JS : 自宅スタジオでブラスやオーケストレーションのアレンジに何ヶ月という時間をかけた。自分の作ったメロディを美しく歌わせるために新しいサウンドとプロダクション・スタイルを確立したいと思っていたんだ。アレンジには全てKontakt 4のプログラムを使った。
MM : “Jumpin’ IN”と”Jumpin’ Out”における曲の対比が実にユニークですね。
JS : この2曲は双子の楽曲のようなものだ。同じ状況を2つの異なる視点から見ているのを表現した2曲だ。いつもとは違うことに挑戦することを恐れてはいけないという考え方をテーマにしている。
MM : “The Weight of the World”などは曲の雰囲気やアレンジにこれまでとは違った新たな部分が感じられましたが。
JS : ピーター・ガブリエル在籍時の初期GENESISを彷彿とさせる曲だ。普段の自分のアプローチとは違ってメイン・メロディがコード感を出したアンサンブルになっているのが特徴でもある。
MM : あなたの曲はどの曲もとても素晴らしいメロディを持っていますが、作曲方法としてはコード進行等のバッキングの大枠を創ってからメロディライン等細かい部分を詰めていくのでしょうか? それともメロディラインが先でそこからコードやリズムギターを付けていくのでしょうか? 曲によって様々なケースがあるとは思いますが。
JS : その時によって異なるよ。作曲をする時は特に決まった方法を定めずに色々な方法でやっている。
MM : 作曲・デモの制作や日々のアイデアをストックしていく際などにはどのようなツールを利用していますか?
JS : いつもMacでProTools(96k)を使っているよ。
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MM : アルバムに収録されている各曲についてあなた自身による解説をお願い出来るでしょうか? 曲が生まれるまでの経緯や曲に込められた思い等をお聞かせ下さい。
JS :
“Unstoppable Momentum”
常に成長し続ける音楽を作りたいという欲望を表現した楽曲だ。
“Can’t Go Back”
成人になった瞬間、少年時代へは二度と戻ることができない。そんな思いを表現した曲だ。
“Lies And Truths”
これは人間関係と人間がつく様々な嘘をテーマにした曲だ。
“Three Sheets To The Wind”
こぎれいな若い男がシャンパンの入ったグラスを片手に街でワイルドな冒険に満ちた夜を過ごすという設定の曲だ。常にほろ酔い気分の男を表現しようとしている。
“I’ll Put A Stone On Your Cairn”
この世を去った我々にとって愛しい人たちに敬意を払った曲だ。
“A Door Into Summer”
夏の訪れを祝う曲だ。夏がもたらす様々な楽しい出来事を表現している。
“Shine On American Dreamer”
これはアメリカン・ドリームに対する自分の考え方をテーマにしたものだ。アメリカン・ドリームを持続させ、そして更に良いものにするために国民全員が努力しないといけないと僕は思っている。
“Jumpin’ In”
怖がらずに挑戦することをテーマにした曲だ。
“Jumpin’ Out”
全てが行き過ぎてしまった時、その場から飛び出す必要もある。そうすることによって新たな一日を迎えることができる。そういった意味を持った曲だ。
“The Weight Of The World”
時に世の中の重圧が人を圧し潰す時がある。その重荷を必死に背負っていることを表した曲だ。
“A Celebration”
ピュアな感情のためのピュアなメロディだ。この曲を聴けば気分が良くなり、生きていることを喜ぶことができるはずだ。
MM : 今回のアルバムで使用したイクイップメントはあなたのシグネイチャーギター、アンプがメインでしょうか? 使用したギター、アンプ、ペダル類など教えて下さい。
JS : メインのセットアップはIbanezのJS2410とJS2400をMarshall JVM410JSのヘッドとキャビネットに通し、それにVOXのシグネイチャー・ペダルを使っている。曲によってはヴィンテージのテレキャス、ストラト、レスポール、335を遊びで使っている。それと、フェンダーのヴィンテージ・アンプもいくつか使ったよ。
MM : ギターのサウンド作りについてお聞かせ下さい。基本となるクリーン系、歪系のサウンドについてはアンプ、ペダル類でそれぞれをどのように設定しコントロールしていますか?
JS : 好きな音ができるまでツマミを回すだけだよ。設定は多過ぎてここには書ききれないよ!
MM : 今回のアルバムはあなたのイラストが収録されたアートブックやポスターなどがバンドルされたものがあなたのWEBサイトで数量限定で販売されていますが、アートブックなどのアイデアはどのようにして思いついたのでしょうか?
JS : 自分のイラストをもっと大きく、そしてより良いフォーマットで見てみたいと思ったのがきっかけでアートブックを作ってみたんだ。実際にアートブックを手にしてみて、これならファンも喜んでくれるだろうと思い、次の作品も出すつもりで最初のアートブックを出してみた訳だ。
MM : 1996年より始まったあなたのプロジェクトG3では優れたトップクラスのギタリスト達が参加していますが、まだ共演していないギタリストで今後、G3で是非共演したいギタリストはいますか?
JS : ジェフ・ベック、エディ・ヴァンヘイレン、ジミー・ペイジ・・・等。
MM : ところでサミー・、マイケル・アンソニー、チャド・スミスと結成しているチキンフットは現在どのような状態なのでしょうか?次作の予定はありますか?
JS : 年末までにはサミーと新しい楽曲の曲作りを開始する予定だ。2014年はCHICKENFOOTの復活の年となるだろう!
MM : それでは今後の活動スケジュールについて教えて下さい。
JS : これから1年半の期間は「Unstoppable Momentum」のリリースに伴うワールドツアーを予定している。来年の春には日本でもプレイしたいと思っているよ。
MM : 日本のファンへのメッセージをお願いします。
JS : 長年、僕の音楽を聴き続けてくれてありがとう。みんながファンでいてくれていることを心から感謝しているよ!
Joe Satriani official site : http://www.satriani.com/
Unstoppable Momentum / Joe Satriani
1.Unstoppable Momentum
2.Can’t Go Back
3.Lies And Truths
4.Three Sheets To The Wind
5.I’ll Put A Stone On Your Cairn
6.A Door Into Summer
7.Shine On American Dreamer
8.Jumpin’ In
9.Jumpin’ Out
10.The Weight Of The World
11.A Celebration