Tyler Bryant
まさに次の時代のギター・ヒーローを担うべくしてこの世に生を受けたTyler Bryant(タイラー・ブライアント)。1991年生まれで現在22歳のこの才能ある若きアーティストは、歴史に名を刻む偉大なアーティスト達と同様にそのデビュー時から既に未来の可能性を強く感じさせる音楽・オーラを放っている。
今回のインタビューではブルース・ロックをベースとした音楽的なバックグランドやTYLER BRYANT & THE SHAKEDOWNのアルバム「Wild Child」の内容に至るまで色々とタイラーに語ってもらった。
Interview / Text Mamoru Moriyama
Translation Louis Sesto (EAGLETAIL MUSIC)
Muse On Muse (以下MM) : テキサスで育ったそうですが音楽、ギターに興味を持ったきっかけについて教えて下さい。
Tyler Bryant (以下TB) : テキサス州のパリスという街にある楽器屋でRoosevelt Twittyという人の演奏を聴いたのがきっかけだった。すぐに彼の音楽にのめり込んだね。今でも彼の音楽には魅了され続けているよ!
MM : テキサスという土地柄はあなたの音楽スタイルを築く上でどのような影響を与えましたか?
TB : 元々はハニー・グローヴという小さな街で育ったんだ。子供だった自分にとって、そこには自分の興味をそそるようなものは何もなかった。だから僕は自分の部屋に引きこもって音楽を聴き、その音を真似ようと必死に練習した。運転免許を手に入れたら全てが変わったね。僕はダラスやオースティンの盛んな音楽シーンをチェックするようになった。
MM : 音楽・ギターに目覚めてからプロとして活動を始めるに至るまでの下積み時代はどのように過ごしていたのでしょうか?
TB : 今も昔も何も変わっていないような気がするよ。最初から音楽が好きで音楽をやっている。当時、僕は常に曲を書いて、レコーディングをして、そしてライヴをやっていた。今も全く同じなんだ。当時と同じように今も夜通しのジャム・セッションを友達とやっている。音楽を仕事として捉えることができないのさ。仕事だと思ったらつまらないし。
MM : プロのミュージシャンとして初めて携わった仕事や当時の思い出についてお聞かせ下さい。
TB : テキサス州ロクストンにあるRoxton CaféでMr. Twitty(Roosevelt Twitty)と一緒にやったライヴが初めてのギグだった。それぞれキャッシュで100ドルをもらい、それにステーキを出してくれたよ。自分的には大当たりした気分だった!
MM : あなたのギタースタイルはソウルフルかつスライドバーを駆使した渋さやクールさを兼ね備えてもいたりとオリジナリティを感じさせるスタイルですが、どのようにして今のスタイルに至ったのですか?
TB : 自分が今までに受けた影響を全て混ぜた結果だ。自分のスタイルは時間と共に得たもの。これからも演奏を続け、様々な音楽を聴くことによって更に進化していくはずだ。古いアコースティック系のブルースが好きな自分もいて、Muddy Waters、John Lee Hooker、Son House等が大好きだ。そして、ただ単にロックしたい自分もいるのさ。THE SHAKEDOWNは僕にとってバーテンダーのような存在。僕のためにふたつの要素を絶妙にミックスしてくれるんだ。
MM : あなたのような独自のギターのトーン、フィーリングを醸し出すためにどのような練習を心掛けギタープレイに取り組んできたのでしょうか?
TB : 特に何か練習方法があった訳ではない。ただ、ずっと演奏し続けた結果だ。ギターは女性と同じ。まずは相手を知る必要がある。どうすると彼女は機嫌を悪くしてしまい、どうすれば歌ってくれるかを知らないといけないんだ。スウィート・スポットを見つければいいのさ。
MM : Tyler Bryant名義であるEP「My Radio」では勢いのあるロックや”Speed Of Sound”ではスライドバーによる渋いプレイが印象的ですがこのアルバムについてお話し頂けますか?
TB : かなり昔にレコーディングされた作品だ!ナッシュヴィルに引越したばかりで、ともかく作品を作るという夢をすぐに叶えたかったんだ。まさに夢を生きている感じだろ?当時、持ち曲が数曲あった状態で僕はCaleb Crosbyと出会い、ナッシュヴィルでも評判のプロデューサーのRoger Nicholsと仕事をしたいと思ったんだ。レコーディングはとても楽しい作業だったし、当時の自分たちを上手く描写した作品だったよ。
MM : それではTyler Bryant & THE SHAKEDOWNの結成の経緯について教えて下さい。バンドの各メンバーについても紹介頂けますか?
TB : ドラマーのCaleb Crosbyはナッシュヴィルのコーヒー・ショップで初めて会ったんだ。当時、ドラマーを探していたところを共通の知り合いが紹介してくれてね。彼と出会ってからは、彼以外のドラマーとは一切プレイしていないよ。ギターのGraham Whitfordとはニューヨークでラジオ・インタビューをやっていた時に出会った。「僕の仕事を全て奪うギタリスト」として紹介されたよ。彼のプレイを聴いて僕はすぐにバンドに入ってほしいと頼んだんだ。その頃、彼はバークレイ音楽大学に入学したばかりだったのに、無理矢理中退させてナッシュヴィルに来てもらった。ベーシストは、Noahが決まるまで20人ほどオーディションに来てもらったよ。NoahとCalebは元々学校の知り合いだったんだ。Noahはドラムも叩けるんだ。僕たちはあるサウンドを持ったベーシストを探していてNoahはそれを持っていたんだ。ファジーで、ラウドで、ともかくクレイジーな感じだ!
MM : Tyler Bryant & THE SHAKEDOWNではまず7曲入りEP「From The Sandcastle」をリリースしていますがフルアルバムでなくEPとしたのは?
TB : ツアーの合間にオフが1週間ほどあったんだ。その間に僕の家の地下室でEPをレコーディングしようと考えた訳さ。7曲を6日の間にレコーディングし、7日目にミックスして、8日目にマスタリングをしたんだ。で、翌日は再びツアーへと出たのさ。楽しんでやっただけのことだ。当時は地下室でレコーディングしたことを公表したくなかったことから「From The Sandcastle」(=砂のお城から)というタイトルを付けたんだ。
MM : そしてフルアルバム「Wild Child」がリリースされましたが、このアルバムではどういったことを目指しましたか?
TB : バンドが最高のリハーサルをやっているのを3メートルの距離で聴いているかのようなアルバム(音源)を作りたかった。ともかく自分たちがクールだと思えるような作品を作ったつもりさ。
Tyler Bryant & the Shakedown
L to R) Graham Whitford-Guitar-, Noah Denney-Bass-, Tyler Bryant-Vocal Guitar-, Caleb Crosby-Drums-
MM : 収録されている曲のクレジットを見るとあなたと他のライターによる共作となっていますが、作詞、作曲等の分担はどのように行われているのでしょうか? また今回収録されている曲の作曲プロセスについてお話頂けますか?
TB : ツアーに出ていない時、仲間を呼んで一緒に作曲するのさ。「暇だったら曲でも書かない?」って感じでね。ナッシュヴィルの作曲家たちはともかく最高さ。今回の「Wild Child」の楽曲の殆どはNeil Masonと一緒に書いている。おそらく50曲ほど書いたね。気心の知れた仲間だし、ともかく音楽の好みが似ているんだ。説明できないけど、上手くいくんだよね。アイディアは様々なところから湧き出て来る。特に決まったプロセスはないよ。なるようになるのさ。
MM : “House That Jack Built”、”Say A Prayer”ではライヴ感あるバンドサウンドがとても印象的ですね。以前にリリースされていたEPに収録していたこれら曲を再びこのアルバムで取り上げたのは?
TB : レーベルに希望があって再録したのさ。初めてのフルアルバムということもあって、過去の楽曲を収録することによってリスナーにこのバンドを分かりやすく知ってもらおうというアイディアだった。確か「”House On Fire”を収録させてくれるなら、古い曲も再録する・・・」という条件だった気がする。ともかく、アルバムの出来にはみんな満足して喜んでいたよ!
MM : アルバムの後半は”Still Young(Hey Kids)”、”House On Fire”、”Where I Want You”などを筆頭にロック度が全開の聴いていて爽快でライヴでも盛り上がりそうな曲で畳み掛けていますね。
TB : そのとおりさ!大騒ぎするぜ!
MM : アルバムのエンディングの”Poor Boy’s Dream”の渋さはとてもクールでした。あなたのギタースタイル同様にこのアルバムはブルース・ロックの渋さとソウルフルな情熱、そしてロックの激しさや爽快感がミックスされた素晴らしいアルバムですね。
TB : ありがとう。アルバムの中で一番好きな曲なんだ。とても個人的な思いも詰まっている曲だしね。気に入ってもらえて嬉しいよ!
MM : アルバムやライヴにおけるGraham Whitfordとあなたのギターの分担はどのようになっているのでしょうか?
TB : 彼が爆発したくてうずうずしている時は分かるのさ。だから、そう言う時はWHITFORD!!って叫ぶのさ。実際に”Where I Want You”でもその声を聞くことができる。あの曲の最初のソロは強烈だよ。普段はスタイルによって分担している。でも、彼の方が僕よりもクールな演奏をしたり、彼のトーンの方が楽曲に合っていれば、彼に弾いてもらう。全ては自然に起こることだよ。特に計画してやることはないね。僕たちはあまりリハーサルをしないし、何をどういう風にやるか相談もしない。全てはその場で決まる。音楽的にお互いを熟知しているんだ。
MM : あなたはJeff Beckのツアーのオープニングを務めましたがどのようなきっかけだったのでしょうか?
TB : Jeff Beckの関係者か誰かが僕たちのビデオを見たらしく、ツアーに参加できないかという連絡が来たんだ。たまげたね!中学の頃から大好きだったギタリストだからね!
MM : ステージ上でもJeffと共演を果たしていますが如何でしたか?
TB : 人生で最もおっかない瞬間だった!最初はビビっていたけど、結果的にはとても多くを学んだ気がする。Jeffは歴史に残る素晴らしいアーティストのひとりだ。ステージの上で彼と一緒にエネルギーを感じているだけで大きなものを得た気がするよ。率直に言えば、天国にいるような気分だった。
MM : 今後の予定をお聞かせ下さい。
TB : コンサートが沢山予定されている。それに新しいアルバムの制作も始めている。凄く楽しみにしているんだ!
MM : 最後に日本のファンへメッセージをお願いします。
TB : 早く会いたいぜ!!!
Tyler Bryant & the Shakedown official site : http://tylerbryantmusic.com/
Wild Child / Tyler Bryant & the Shakedown
1. Fools Gold
2. Lipstick Wonder Woman
3. Cold Heart
4. Downtown Tonight
5. Say a Prayer
6. House That Jack Built
7. Last One Leaving
8. Still Young (Hey Kids)
9. You Got Me Baby
10. House on Fire
11. Where I Want You
12. Poor Boy’s Dream