Steve Lukather
Photo by ASH NEWELL
2011年9月に再結集TOTOによる日本公演を予定しているSteve Lukather (スティーヴ・ルカサー) がTOTOの最新ベストアルバム、そして自身のギタープレイ、音楽について語る。
Interview/Text Mamoru Moriyama
Translation Tomoko Kikuchi
Photographs Carey Brandon, Ash Newell
数々の有名アーティストのアルバムへのレコーディング参加や、1982年に発表したバンドの4作目のアルバムである「TOTO IV 聖なる剣」ではグラミー賞を受賞するなど素晴らしい音楽の功績を残したTOTO。 そのメンバーの中で熱いロックスピリットに溢れた感動的なギタープレイを楽曲に注ぎ込み、多くの音楽ファン、そしてギタリスト達を虜にしてきたのがスティーヴ・ルカサーである。
TOTOは2008年に解散を表明し活動を停止していたが、ALS(筋委縮性側索硬化症)を発症し闘病中のバンドのベーシスト:マイク・ポーカロの支援を目的に2010年に再結集、始動している。 再結集TOTOの牽引役であるスティーヴ・ルカサーに5月にリリースされたTOTOのベスト盤のことや、いまだに世界中の多くのファンに愛されているLukeのギタープレイや音楽について語って貰った。
– About TOTO “IN THE BLINK OF AN EYE 1977-2011 -”
Muse On Muse (以下MM) : 今回のベストアルバムはあなたが選曲し、それら曲に対してあなたやTOTOの他のメンバーのコメントが寄せられているといった点で、過去にリリースされたTOTOのベストアルバムとはまた違ったファンにとっては特別なベストアルバムとなっているようです。 今回のベストアルバムをリリースすることになった背景、経緯について教えて下さい。
Steve Lukather (以下SL) : ニューヨークのブルーノートという会場で、ビル・エバンズ、キース・カーロック、ウィル・リー、スティーブ・ウェインガートと一緒にサイドプロジェクトの”トキシック・モンキー”の公演を行った時だった。
俺の親愛なる昔からの友人であるSony Japanのチャールズ・ミカミ(チャックさん)がその公演に来てくれて、昔ながらの友達としてランチをしたんだ。マイク・ポーカロの救済のためと、私たち自身のためにも、日本で再結成公演を行いたいと話をしていて、ベストアルバムのことを思いついたんだよ。俺達が、今までのヒット曲以外やその他バンドが作った曲を選んでベストアルバムを作れば、マイクのための救済資金と、ヒット曲以外のTOTOの音楽の歴史を知ってもらえるのではないかと思ってね。ほとんどチャックさんと私で話し合って決めたんだ。俺がタイトル名を考えたんだけど、35周年記念で1977-2012にするべきだったかもね。もうそんなになるなんて、信じられないよ。まだ34年だけどさ(笑)
MM : アルバムに収録する曲を選曲する上でのコンセプトはありましたか?数多くあるTOTOの作品の中から今回アルバムに収録されている曲を選び出すにはかなり迷ったのではないでしょうか?
SL : 俺の高校からの友人や家族でほぼ成り立っている今までのメンバーや現在のツアーメンバーで作った曲をより多く選びたかった。それがこのアルバムの一番重要なところだ。マイク・ポーカロが筋萎縮性側索硬化症(ALS)で深刻な状態なので、つらいけれど…。長年発表してきた数多くのアルバムの中から、曲を選ぶのは大変だった。今までのベストアルバムに収録されている、明らかなヒット曲は選ばないようにしたよ。
MM : 今回収録されている曲の中で、あなたにとって一番思い入れがある曲とその理由を教えて下さい。
SL : Wings of Timeかな。バンドの曲で、ジェフとマイクが関わった曲で、歌詞にとても思い入れがある。カジュアルなファンには知られていない曲かも知れないけれど、俺個人のお気に入りの曲なんだ。
MM : 9月に予定されている再結集TOTOの日本公演はこのベストアルバムを中心としたセットリストとなるのでしょうか?
SL : うーん、ヒット曲は演奏しなきゃいけないし、そうするけれど、いくつかサプライズもあるよ。バンドが、ここまで良い音を出していることは今までなかったんだ。俺達はやる気に燃えているし、この先数ヶ月で日本、ヨーロッパ、南米に行けることに興奮しているよ!!
MM : 再結集TOTOのライヴはCDやDVDでリリースされる予定はあるのでしょうか?
SL : あるよ。今年の夏にイタリアの城で10,000人の前で演奏する公演を、撮影・収録するんだ。すばらしい公演になるだろうし、世界中でリリースされるよ!
– About Guitar Play, Songwriting –
MM : 次はデビューから今日までトップギタリスト、アーティストとして世界中の多くのファンに支持されているLuke-sanについてギタープレイ、作曲家といった部分について質問させて下さい。
SL : OK(笑)
MM : 感動的かつ情熱的なRockフィーリングと知的でCoolなフレージング、そして高度なギターテクニックが融合したあなたのギタープレイスタイルは、あなたが登場する以前のRockギタリストからは聴くことが出来なかったものです。そのオリジナリティ溢れるプレイスタイルはたちまち多くのギタリスト、音楽ファンを虜にし、以来、今日に至っています。 そういった唯一無二のあなたのオリジナリティはどのようにして築きあげたのでしょうか?
SL : 本当に?最近では若いシュレッド・プレーヤーや他のギタリストたちからは、俺は忘れ去られているかと思っていたよ。俺はすべてのプレイスタイルが大好きなんだ。正直に言うと、俺はかなり練習してきている。すべての機材を変えたし、再・発明モードなんだ。みんな、”NEWルークさん”にとても驚くと思うよ。本当に努力してきた。終わりのない仕事が進行中だよ。数年間、酒と精神的な痛みでもうろうとし、曲をかけないぐらい自分を見失っていたんだ。でも、健康になってそろそろ2年がたつし、俺の人生がまた始まったんだ。気分は最高だし、今までよりもいい演奏ができている。だから、君たちに評価してもらいたい。人生に迷ってしまって、申し訳なかった。35年間ツアーをしていると、こういうこともある…。特別な話ではないけれど、俺は1000%復活したんだ!
MM : あなたが作り出すギターサウンドについても常に多くのギタリスト達に影響を与え続けており、目標とされています。 そのサウンドは勿論、あなた自身の手(ギターテクニック)によるものが大きいかと思いますが、ドライヴしたサウンドからクリーントーンまでギターの音作りを行うにあたり、あなたはどういったコンセプト、イメージを持って、アンプのセットアップ、エフェクターのセットアップを行い、そのイメージにサウンドを近づけていくのか、音作りの秘訣を教えて下さい。
SL : この分野においては、俺は復活中なんだ。2つのBogner Extacyアンプと、新しいStomp Box(ペダルボードを少しだけ)を使用している。ラックやデジタルサウンドは、好まなくなったので使っていない。ぼやけすぎや、オーバードライヴしすぎに気をつけ、ファズボックスなども使わず、かなり自然な音作りをしている。Tube Screamerも持っているけれど、もうそれすら使わないよ。新しいLUKE III Music manギターはかなり違うけれどね。見てもらえばわかると思うよ。まだプロトタイプに取り組んでいるところだけど、これからのツアーには間に合わせる予定だ!
あと・・以前、俺はValley Arts ROBOTギターを使用していた。実物は一つしか存在しないのに、日本の何処だかの輩が俺の許可なしに偽物を売っているんだ!偽物は違法販売にあたるのだけど、日本の法律はアメリカの法律と違うので、俺にはどうすることもできないから困っている・・・。
MM : 新しい世代のギタリストはシュレッドでトリッキーなギター奏法は難なくプレイできる人が数多くいますが、その一方であなたの先輩世代であるJeff Beckやあなたの世代、例えばあなたやEddie Van Halen, 故Gary Mooreなどのようにギターから弾きだされる音に圧倒的な説得力や存在感を持つギタリストは少なくなったように感じられます。スケールの練習などでは得られない、そういった部分を身についけていこうとする場合は一体何が必要なのでしょうか?
SL : 俺は君が挙げたギタリストと同じ地位には値しないよ。彼らの音は大好きだし、彼らのうちほとんどは友達だ。俺も一人のギターファンだったからね(笑)。 シュレッドプレイする若い子たちや、シュレッドを生み出したやつたちも大好きさ。彼らも、大体みんな友達だ。
MM : 新しい世代のギタリストであなたが注目しているギタリストはいますか?
SL : どんなスタイルでも、すばらしい演奏をするギタリストはみんな大好きだ!
MM : あなたはギタリストとしてトップギタリストであることは勿論ですが、ソングライターとしても素晴らしい名曲を作り出してきました。 作曲する際はギターを使う場合が多いのですか、それともピアノ等の他の楽器を使って作曲することが多いのでしょうか?
SL : 優しい言葉をありがとう。作曲するときは、ギターとピアノ両方使うけれど、特に作り方は決まっていない。その時の気分によるんだ。
MM : 作曲方法としてはコード進行等の大枠を創ってからスタジオ等でメロディライン等細かい部分を詰めていくのでしょうか?それとも事前に細かいメロディラインまで作っているのでしょうか?曲によって様々なケースがあるかとは思いますが・・。
SL : あぁ、それは色々な方法があるね。大体は曲が先で、メロディを鼻歌で歌いながら、歌詞が浮かんでくることが多い。曲を仕上げるために、共同制作をすることがほとんどだ。
MM : ボーカリストが歌う曲ではボーカルの声域に合わせたKeyの曲になると思いますが声域といった制約が無いインストルメンタルの曲でのKeyはどういった基準で決めているのでしょうか?例えば、同じマイナーの曲でも、EmやAmやGm・・といった様々な候補があるかと思います。
SL : 決まった方法はないんだ。どの曲も、全部それぞれの方法がある。もし自分のために作曲をするのなら、自分の声を知っているからそのキーで曲をかくけれど、他の人のためであったらキーは簡単にかえることができる。
MM : あなたのように優れたソングライターであるためには勿論、作曲のセンスや才能といった部分も大きいかと思いますが、あなたのように優れたソングライターを目指す人達が作曲に必要なクリエイティヴな能力を鍛えるには何が必要だと思いますか?
SL : うーん、俺は人生でずっと音楽をやってきたので、もう体が覚えている。天性だったり、才能なのかな。よくわからない。わかってしまったら能力がなくなってしまいそうだから、わかりたくないな(笑)
MM : それでは最後に今後のあなたの活動についてお伺いします。
SL : 笑顔で、健康で、幸せである生活がしたいね。また愛も見つけたい。悲しいことにまた離婚してしまって、今は彼女もいなくシングルなんだ。4人のすばらしい子どもたちに恵まれたけれど、もう父親の役目は終わっている。いい音楽を作るよう努力をして、いろんな意味で健康な人生を楽しみたい。
MM : 2011年はSteve Lukather Bandのツアーと再結集TOTOのツアーであなたのスケジュールが埋まっているようですが、 Steve Lukather Bandのツアーでもとても良いリアクションを得られているようですね。
SL : 音楽生活でこんなに忙しくいられることは、本当にラッキーだと思っている。両バンドのそれぞれすばらしいところを得ることができているからさ。ポール・ギルバートのように、ソロとバンドの両方の活動ができている数少ない人たちに似ているかもね。それと、俺はたくさんのサイドプロジェクトもやって、常に人生を楽しくしようとしているよ。
MM : ツアーが終わった以降の予定は?
SL : ツアーは、2012年の3月まで続いて、そのあとは新しいソロアルバムの制作に取りかかる予定だ。他のたくさんの再度プロジェクトもね。来年は、もっとトキシック・モンキーの活動もするし、できればラリー・カールトンと一緒に新しいアルバムを作ってツアーをしたいと思っている。他にも色々な可能性があるよ。俺は、こんなにもたくさんのクールなことができて、本当に、本当に幸せだ。ソロで日本にもまた行きたい。すばらしいライブバンド連れて行くよ!
MM : 最後にTOTOの再結集ツアーを心待ちにしている日本のファンへメッセージをお願いします。 日本のファンも闘病中のMike Porcaroの回復をお祈りしています。
SL : 親愛なる日本の友人たち。みんなのことが大好きだし、尊敬しているよ。一緒にいろいろ乗り越えてきたよね。俺はまだ君たちの国の復興のために祈り続けているよ。すぐに、俺達の音楽と愛を届けに行くからね!