Richie Sambora
Photo by James Minchin
世界的人気を誇るモンスター・ロック・バンド BON JOVIにおいてギタリスト、ソングライターとしてバンドを支え続けているリッチー・サンボラ。 BON JOVIでは楽曲の魅力を最大限に惹きたてるギタープレイ、サウンドでギタリストとしての素晴らしさを存分に発揮しているリッチーが、今回リリースした自身第三弾ソロ・アルバム「AFTERMATH OF THE LOWDOWN」では、ギタリストとしては勿論のこと、ボーカリスト、ソングライターとしての才能が見事にトータライズされたアーティスティックな作品を創り上げることに成功している。リッチーに今回のアルバムについて語って貰った。
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Interview / Text Mamoru Moriyama
Translation Louis Sesto (EAGLETAIL MUSIC)
Muse On Muse (以下MM) : 新作「Aftermath Of The Lowdown」ではギタリスト、ボーカリスト、そしてそれらがトータライズされたアーティストとしてのあなたが見事に表現された素晴らしい作品に仕上がっていますね。
Richie Sambora (以下RS) : そのとおりだ!「Aftermath Of The Lowdown」は、まさにリッチー・サンボラというアーティストを集約した作品に仕上がっている。この作品は自分がどのような人間か、どのようなミュージシャン、そしてソングライターであるかを表現してくれている。過去7年間の自分の人生を振り返っているような作品だ。過去に自分が学んだことや自分が育った中で得たものを表現した物語でもある。自ら歩んだ音楽の旅が導いてくれた場所だ。
MM : 今作はあなたのソロ・アルバムとしては91年にリリースされた「STRANGER IN THIS TOWN」、そして97年にリリースされた「UNDISCOVERED SOUL」に続く約15年ぶりのアルバムとなりますが、今作を制作するにあたってのコンセプト等をお聞かせ下さい。
RS : 「Aftermath Of The Lowdown」のコンセプトは、人間そしてミュージシャンとしての今現在の自分の姿を忠実にリスナーやファンのみんなに見せることだった。
MM : 今作はボーカル・アルバムとしての素晴らしさは勿論ですが、ギタリストのアルバムとしてもライヴ感を持ちつつ様々なギター・プレイやサウンドのアイディアが詰まっており、ギター・プレイヤーやそれ以外の音楽ファンの両方に楽しめるアルバムとなっているように感じました。このあたりのバランスについてはどのように考えていましたか?
RS : 今回のソロ・アルバムでもそうだし、他のアルバムでも同じことだけど、基本的には楽曲の流れに任せるようにしているよ。今回のアルバムの楽曲は個人的にとても大きくて重要な意味を持っているものばかりだ。このアルバムに収録されている楽曲は自分の人生を表している楽曲だからね。制作過程におけるアプローチとしては、ギタリストという立場からの視点になっている。なるべくギターという絵筆を使って楽曲を彩るように努力したつもりだ。それと、自然に発生したジャム的な要素もなるべく残すようにした。
MM : 作曲面ではプロデューサーであるLuke Ebbinをはじめコラボレーションもされているようですが、曲作りにおいて歌詞や曲といった部分での役割分担等あったのでしょうか?曲作りにおけるプロセスをお聞かせ下さい。
RS : 曲作りのプロセスとしては、主に自分の人生経験を伝えるために共作者たちが僕のアイディアを具体化してくれているというスタンスだね。基本的には同じ部屋で一緒に作曲や作詞を行っていたよ。”Weathering The Storm”だけは自分の気持ちを伝えた上でBernie Taupinが作詞をして、後から出来上がった歌詞を渡してくれた。
MM : あなたが曲を創る際のイマジネーションは何処から得ているのでしょうか? 曲を創る上で必要となる創造力といった部分は作曲理論や作曲法の修得といった部分のみでなく、その人がこれまでに体験してきた人生の全ての部分がベースとなり、曲に現れるような気がするのですが、あなたの考えをお聞かせ下さい。
RS : 曲作りに関しては主に人生経験から来ているね。それと、様々な異文化を観察した中で感じたこと。人がどんな感情を抱いているか、そしてその人々が感じたことに対して自分がどう考えているか、そういったところからアイディアを得ているよ。どうやら自分には自らの思いを上手く伝えるコツがあるらしく、他人に波及効果を与えることが多いみたいだ。自分が伝いた思いを世界中のリスナーがまるで自分の思いかのように共感してくれているようだ。
MM : “Burn That Candle”ではパワフルでビッグなギター・サウンドにあなたの力強い歌声が組み合わさっておりアルバムのオープニングを飾るに相応しい曲ですが、この曲におけるギター・ソロはインプロヴァイズでしょうか? ロック感溢れる素晴らしいプレイですね。
RS : そうだよ、基本的にこのアルバムに収められているソロは全てインプロヴァイズしたものだ。事前に考えたソロは一切ない。スタジオに入って、バンドと一緒に演奏して録っていく感じだったよ。”Burn That Candle”はその場で録れたソロだ。他の曲のソロでオーバーダヴをしている部分もあるけど、基本的には自然発生的なものばかりだ。
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MM : “Every Road Leads Home To You”は曲が持つ素晴らしいメロディと伸びやかな歌声が実にあなたらしい曲だと感じました。曲がアコースティック・ギターで静かに終えるのも印象的です。
RS : ありがとう。”Every Road Leads Home To You”という曲は自分が長いツアーに出ていて娘や家族のことを恋しく思っていることを歌った曲だ。誰にだって戻りたい場所があるはずなんだ。そんな思いを念頭に置きながらこの楽曲を彩ったつもりだ。エンディングではとても直接的な声とギターが残る感じだね。この曲に合った完結方法だと思ったんだ。
MM : “Nowadays”、”Sugar Daddy”は一聴すると歌のメロディの親しみやすさが印象的なナンバーですが、ギターも曲中のいたる所で活躍していますね。
RS : “Nowadays”と”Sugar Daddy”は全く異なるスタイルを持っているけどね。今回のアルバムでは様々な音楽スタイルを冒険している感はある。”Nowadays”にはパンクの要素もあるね。”Sugar Daddy”はどちらかと言うとブルースやモダン・ブルース的な雰囲気。この曲ではちょっとダーティな感じで割と長めにソロをとっている。”Nowadays”では今までに弾いたことがないようなソロを弾いている。自分としても少し不思議な感じはあるね。
MM : ボーカル曲の場合、曲の大きな部分を占めるのはリズム・ギターだと思いますが、あなたがギター・リフなどのリズム・ギターのパートを作る際、アンサンブル面を踏まえて注意し心がけていることは何でしょうか?
RS : リズム・ギターのパートやギター・リフを書く際、楽曲が持っている感情や、自分がその楽曲で何を伝えたいかというところから外れないことを心がけないといけないね。今回のアルバムではギター・パートによって楽曲のアイディアを上手くサポートすることができたと思っている。前にも言ったように、ギターを絵筆だと思って使ったつもりだ。
MM : “Seven Years Gone”、”You Can Only Get So High”などにおいては歌詞に人生の痛みを含んでいるにも関わらず、決してネガティヴなものとはならず前に向かって進むポジティヴな雰囲気を聴く者に与える曲に感じましたが、この点についてあなたの考えをお聞かせ下さい。
RS : そうだね、”Seven Years Gone”と”You Can Only Get So High”は決してネガティヴな曲ではない。ポジティヴな曲だ。何故なら、人生における辛い経験の後には必ず何か学べるものがあるからだ。辛い経験が終わったということは、その苦難を乗り越えたという意味だからね。嵐を乗り切ったらそこにはポジティヴ思考になれる新たなスタートがある。そういった意味合いが込められているのさ。
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MM : “Weathering The Storm”では美しく構成されたドラマチックなサウンドで曲が展開する中、ダイナミックでリアルなトーンのギター・ソロが入ってくるのはとても印象的でした。
RS : “Weathering The Storm”では天才的な作詞家Bernie Taupinと一緒に曲を作ることができた。彼と二人でこのアルバムのコンセプトについても深く話し合ったんだ。自分のアルバムに対する感情等も含めてね。その後、彼はいくつかの歌詞を書いて僕に提示してくれたんだ。その中のひとつがこの”Weathering The Storm”だった。自分が歌詞を書かない状態で曲を作るが実は初めてだったんだ。だから、この曲に関して言えば自分があくまでもプレイヤー目線から書いた曲と言えるね。自分が音を作り、Bernieが歌詞を書いてくれた楽曲だ。
MM : あなたもそうであるように素晴らしいギタリストは同時に素晴らしいシンガーである人が多いですが、歌うこととギター・プレイとの関係についてはどのように思いますか?
RS : 歌うこととギター・プレイの関係ね・・・歌とギターを同時にやっている時は、基本リズム・ギターで歌の伴奏を弾いていることになる。でも、ソロを弾いている時はギターを通して指で歌を歌っている状態だ。自分の指を使って心からギターで歌うことができた時、ギタリストとして上達できたと実感できるはずだ。
MM : アルバムの最後を飾る”World”はアコースティック・ギターとあなたの歌声が心に響くと共に聴く者にメッセージを投げかけるナンバーのように感じました。「STRANGER IN THIS TOWN」に収録されていたアルバム・ラストの曲”THE ANSWER”も同様にメッセージを投げかけるナンバーだと感じましたが、これら曲に込められたあなたの想いについてお聞かせ下さい。
RS : “World”も”THE ANSWER”もとても大きなテーマを取り上げている。とても奥が深いテーマだけど、人生にひとつの答えが存在している訳ではない。それに対して、答えはいくつもあるのか、それとも本当はひとつしかないのか、そういったことに問いかけているのさ。曲の結末としては、答えはひとつじゃないという終わり方になっている。自分がどのように人生を歩んだか、それがその時の答えであるだけだということだ。”World”はひとりの人間と何千万年もの歴史を持つ惑星との間で交わされた質問と答えのやり取りだと思ってもらえればいい。
MM : 今回のアルバムでも曲に見事にマッチした素晴らしいあなたのギター・サウンドを聴くことができますが、ギター・サウンドメイキングに対するあなたのコンセプトや工夫している点について教えて下さい。
RS : 運良く、自分には素晴らしいヴィンテージ系の楽器といくつものアンプ、そしてペダルがある。もう30年以上もの間、様々な機材を集めているんだ。自分のコレクションの中から選んだ機材を上手く組み合わせてそれぞれの楽曲にマッチしたサウンドを作るようにしている。ストラトを使うのか、レスポールを使うのか、それをマーシャルと使うのか、フェンダー・ツインと使うのか・・・その楽曲に対してどんな音が欲しいかをイメージするんだ。それぞれのギターやアンプが出してくれる音は分かるからね。ともかく楽曲にとって正しい音選びをすることだ。
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MM : あなたのギター・プレイからはギター・ソロにおける一音一音は勿論のこと、コードを鳴らした際の響きからもその音に魂を感じさせられます。あなたのような領域に達するために必要なことは何だと思いますか?
RS : どのギター・ソロにもできる限りの感情を入れるように心がけている。ギタリストが上達すると、その音譜ひとつひとつに率直さを感じられるようになる。何年も楽器を弾いていれば、ある時に自然とできるようになることだと思うよ。
MM : あなたは以前にギター名手達が集まったアルバム「GUITARS THAT RULE THE WORLD」における”Mr.Sambo”や、Steve Vaiが企画したクリスマス・アルバム「Merry Axemas」に収録されていた”CANTIQUE DE NOEL(O’ HOLY NIGHT)”といったギター・インストゥルメンタル曲でも素晴らしいギターを聴かせてくれました。今後、ギター・インストゥルメンタルのソロ・アルバムなども考えていますか?
RS : 現時点ではギター・インストゥルメンタルのソロ・アルバムを作る予定はない。でも、今後絶対に作らないとは言いたくないね。いつか作ることになるかもしれないしね。でも、基本的に自分のソロ・アルバムには歌とギター両方が存在する作品に今後もなるはずだ。
MM : 今回のアルバムの中で使用したギター、アンプ、エフェクター、ペダル類を教えて下さい。
RS : 前にも言ったように、自分には素晴らしいヴィンテージ系の楽器といくつものアンプ、そしてペダルがある。世の中に存在する代表的なギター、アンプ、ペダルの全てをひとつ以上持っている。全てのギター(種類)で良い状態のものを1本以上、代表的な種類全てのアンプで良い状態のものを1個以上所有している。持っている機材を組み合わせて毎回作品をレコーディングしている。
MM : 使用しているギター・ピックの種類や使用している弦の種類なども教えて下さい。
RS : 今回のレコーディングではHERCOのピックを沢山使ったね。Medium Thinみたいな感じのピックだ。色はゴールドのやつだ。それ以外には普通のFENDERミディアムを使った。その2種類が今回のレコーディングで選んだピックだ。
MM : 既にBON JOVIの新作も完成しているようですが、今後のあなたのソロ活動やBON JOVIでの活動予定について教えて下さい。
RS : BON JOVIのニュー・アルバムは2013年3月にリリースされる予定だ。その後はアルバムの発売に伴うツアーが行われる。色々とまた忙しくなりそうだよ。
MM : それでは日本のファンへメッセージをお願いします。
RS : 30年もの間、いつも忠誠心を持って応援してくれる日本のファンの皆さんにはとても感謝している。ツアーでまたみんなに会えることを楽しみにしているよ。今回のアルバムのツアーで日本に行けなかったのは本当に申し訳ないと思っている。今回は時間がなかったんだ。ともかく、日本の皆さんありがとう!君たちは最高だ!
Richie Sambora Official Site : http://richiesambora.com/
AFTERMATH OF THE LOWDOWN / Richie Sambora
UICN-1018 ¥2,600 (税込) THUNDERBALL667
1.Burn That Candle Down
2.Every Road Leads Home To You
3.Taking A Chance On The Wind
4.Nowadays
5.Weathering The Storm
6.Sugar Daddy
7.I’ll Always Walk Beside You
8.Seven Years Gone
9.Learnin’ How To Fly With A Broken Wing
10.You Can Only Get So High
11.Backseat Driver (Bonus Track)
12.World