Vol.12 Steve Hackett / June 2012

Steve Hackett

初期ジェネシスやイエスのスティーヴ・ハウと共に結成したGTRでの活動で知られ、自身のソロプロジェクトでも優れたれた音楽を創り続けているスティーヴ・ハケットがイエスのメンバーとしてプログレの伝説を刻み続けているクリス・スクワイヤと共にアルバム「SQUACKETT」をリリースした。  スティーヴ・ハケットが今回のプロジェクトについて語ってくれた。 

 

Interview / Text  Mamoru Moriyama
Translation         Louis Sesto (EAGLETAIL MUSIC)

 

初期ジェネシスのギタリストとして、そしてジェネシスを離れた以降もイエスのスティーヴ・ハウと共に結成したGTRや、自身のソロ活動などで数多くの優れた作品を創り続けておりスーパーギタリストとしての確固たる地位を確立しているスティーヴ・ハケット。  今回のSQUACKETTではイエスのメンバーであるクリス・スクワイアと共にプログレが持つ魅力に溢れた要素を含む音楽はもちろんのこと、プログレファン以外の音楽ファンにとっても魅力的となる良い意味で聴きやすく、かつ美しい音楽を創りあげている。  SQUACKETTとしてのアルバムをリリース後は、早くも自身の次の作品の制作に着手しており現在多忙を極めているスティーヴ・ハケットだが、今回のアルバムについて語ってくれた。


Muse On Muse (以下MM) : 今回、YESのクリス スクワイヤと共にアルバム「SQUACKETT」を完成させましたが、今回のアルバムを制作することになった経緯についてお話し下さい。
 Steve Hackett(以下SH) : 元々、彼のアルバムでギターを弾いたことがあったり、彼が僕のアルバムでプレイしたことがあって、それがきっかけで一緒にアルバムを作ろうという話へと発展した。一緒に仕事をした経験からお互いの相性が良いことに気づいたのさ。彼のベース・プレイは僕のギターを引き立ててくれるし、お互いの声の相性もいいんだ。お互いの曲を一緒にレコーディングしていくのがとても面白かったし、何も無い状態から2人で曲を作るのも楽しい作業だったよ。

MM : アルバムのコンセプトについてお聞かせ下さい。
SH : 全体的なコンセプトというものは存在しないよ。とてもオーガニックなプロセスを楽しみながらアルバムを作ったという感じだ。

MM : あなたとクリスの他にレコーディングに参加しているミュージシャンを教えて下さい。
SH : キーボーディストとしてロジャー・キングが参加している。彼はレコーディングのエンジニア、そしてアルバムのプロデュースも担当してくれている。その他にはジェレミー・ステイシーがドラム、アマンダ・リーマンがコーラスで参加している。

MM : アルバムの制作にはどのくらいの期間がかかったのでしょうか?
SH : クリスがイギリスにいない時期が多かったこともあって断続的な形で3年間かかっているよ。

MM : アルバムの制作作業はどのように進めていったのでしょうか?
SH : ドラムはジェレミー・ステイシーのスタジオでレコーディングし、それ以外は僕のリビングでロジャー・キングのパソコンでLogic Proを使ってレコーディングした。今は終わっているけど、レコーディング当時は訴訟の最中だったこともあって自分のスタジオが使えなかったんだ。でも、自宅で作業をしたことによってリラックスできる空間を作ることができて、創造力を掻き立てる結果にもなったのは良かったと思っているよ。

MM : 今回のアルバムに収録されている曲は9曲ですが、実際にレコーディングした曲は何曲でしょうか?
SH : アルバムに収録されている9曲しかレコーディングはしていないよ。

MM : アルバムのジャケットデザインにはどのような意味が込められているのでしょうか?
SH : これはZu Bingという人がデザインしてくれたオリエンタルなイメージを表したロゴなんだ。

MM : 今回のアルバムはジェネシスで活動していたあなたとイエスで活動しているクリスが制作したアルバムということでプログレ度の高いかなりマニア向けの内容のアルバムを想像していました。実際にアルバムを聴いてみると、もちろんプレグレ的なかっこよさも持持っていますが、非常に親しみやすく美しいメロディを持った楽曲で構成されておりプログレマニアだけでなく、それ以外のリスナーにも広く楽しめる内容だと感じました。 このあたりのバランスは意識していたのでしょうか?。
SH : 実験的なサウンドもありながら、取っつきやすいアルバムを作りたいという気持ちはあったね。でも、あくまでもオーガニックなやり方でアルバムは作られている。お互いの直感を信じながら、それぞれの楽曲が異なる形で完成されていったことで、結果的には様々な要素を含んだ作品に仕上がった。”Can’t Stop The Rain”と”Perfect Love Song”がリンクしているように、様々な要素を繋げる手法を取ったのも面白かった。人生における挑戦等を物語っているような曲もあるものの、全体的にはポジティヴな雰囲気をかもし出しているアルバムに仕上がったと言える。

MM : 曲を作る上であなたが心がけていることをお聞かせ下さい。 
SH : 自分のインスピレーションを信じて、ひとつのアイディアが形になるまで考えることを止めないのが大切だと思う。

MM : 出来上がった曲に対してはどのようにしてその曲に合うギタープレイやサウンドをイメージし、組み込んでいくのでしょうか?
SH : 常に本能的なアプローチを取っているよ。説明をするのが少し難しいけど、感覚で全てが分かるんだ。それがエレキだろうと、ナイロンだろうと、12弦だろうと、関係ない。それが正しいと自分で分かる。

MM : あなたのギターは美しいサウンドから一風変わったユニークなサウンドまで多彩なサウンドで曲に華を添えていますが、今でも常にギタープレイやイクイップメントを研究しているのでしょうか?
SH : 常に新しいサウンドを見つけようと努力をしているよ。特にクラシック・ギターを様々な異なるチューニングで弾いたりして、何か違ったサウンドを見つけようとすることが多いね。クラシックとロックはお互いを影響し合うことができると僕は思っている。

MM : それではアルバムに収録されている各曲について解説していただけますか? 
SH :
A Life Within A Day
大自然や宇宙がどれだけ広大かを表現している曲だ。アルバムの中で最も実験的な要素を含んだ曲と言える。

Tall Ships
クリスのベースが見事にこの曲を支えてくれている。海の向こうへと魂を導くような曲だ。

Divided Self
60年代のスタイルを持った曲だ。少し精神分裂的な雰囲気をかもし出しているところもある。

Aliens
クリスが書いたSFテーマを持った曲だ。彼が作った曲の上を僕のギターが縫うかのようにプレイしているのが楽しかったよ。

Sea Of Smiles
暗闇から光へと抜け出すような感覚を持ったラブソングだ。ヴァースの部分がダークな雰囲気になっているのと対照的にコーラス部分はとてもポジティヴな雰囲気へと変化している。

The Summer Backwards
これも旅をイメージした曲だ。過去に失った宝を再び探しにいくというテーマの曲になっている。

Stormchaser
極限状態を好む人たちのために書いた曲だ。

Can’t Stop The Rain
失恋の曲だ。

Perfect Love Song
新しい愛に捧げる曲だ。

MM : 今回のアルバムの中で使用したギター、アンプ、エフェクター、ペダル類を教えて下さい。
SH : レコーディングではフェルナンデスのギター、Yairiのナイロン・ギター、Zemaitisの12弦、それにCoralのシタール・ギターを使って、Sans Ampを通してLogic Proで録音をした。

MM : 使用しているギター・ピックの種類や使用している弦の種類なども教えて下さい。
SH : ピックは全て自分の指だ。エレキ用の弦はFender 008。アコースティック用にはErnie Ballの12弦セット、D’Addario Pro Arteのライト・ゲージを使っている。


Photo : Lee Millward
 

MM : あなたは常に素晴らしいギタープレイを聴かせ続けてくれますが、普段はどのくらいの時間、ギターを練習しているのでしょうか?
SH : ほぼ毎朝練習は欠かさない。練習はアコースティック・ギターで行うことが多い。アコースティックでの練習はそのまま自分のエレキにおけるプレイに取り入れられるような形になるからね。自分は完璧主義者だから、そのギターでベストのサウンドが得られるまで何度も同じ練習を繰り返すことがあるよ。

MM : 楽器を演奏する上で必要となるフィジカル面でのテクニック向上の為には実際に楽器をプレイする練習量が重要かと思いますが、曲作りに必要となるイマジネーション力を鍛え養うためには何が必要でしょうか? あなたの考えをお聞かせ下さい。
SH : イマジネーションの力を養うのは人生における経験、本や映像作品、そして人や音楽から与えられたインスピレーションだ。

MM : ところであなたが最近注目している若い世代のミュージシャン、ギタリストはいますか?
SH : ジョー・ボナマッサにはとても感心している。強力でダイナミックなサウンドを誇る素晴らしいギタリストだと思うよ。独特の雰囲気も持っているしね。それに、彼は人間としても優しくて素晴らしい。それも大切な要素のひとつだと思うよ。

MM : 自分達の音楽以外では普段はどのような音楽を聴いていますか?
SH : オーケストラ系の音楽を聴くことが多い。それと長年に渡って歴史に残るクオリティの高い様々なバンドの音楽も聴いている。

MM : Squackettとしてライヴ活動等の予定はありますか? 今後のあなたの予定をお聞かせ下さい。
SH : 今のところSquackettとしてのライヴ予定はない。今はGENESIS REVISITED IIというプロジェクトを進めていて、来年にはツアーを行う予定だ。是非そのツアーで日本にも行きたいと思っている。

MM : 日本のファンへメッセージをお願いします。
SH : アルバムを気に入ってくれることを願っているよ。そして、来年は日本の皆さんにまた会えることを望んでいる。独特な文化のセンスとスタイル、それに素晴らしい人々が沢山いる日本を訪れるのはいつも楽しい経験だ。ありがとう!お元気で!


Steve Hackett Official Site : http://www.hackettsongs.com/


A LIFE WITHIN A DAY / SQUACKETT
diskunion /DUPG107 /¥3,200 (税込) 
DVD AUDIO付き, 限定盤 Japan (国内盤仕様)

1. A Life Within A Day
2. Tall Ships
3. Divided Self
4. Aliens
5. Sea Of Smiles
6. The Summer Backwards
7. Storm Chaser
8. Can’t Stop The Rain
9. Perfect Love Song