Vol.141 Daniel Cavanagh / October 2024

Daniel Cavanagh


Photo by Caroline Traitler

2020年9月23日に無期限の活動休止を発表している英国のオルタナティヴ/プログレッシヴ・ロック・バンド、Anathema。
そのバンドの音楽性は、初期のゴシックメタルからプログレッシブロックに変遷しつつも卓越した作曲力や独自のサウンドにより創造される世界はディープな音楽ファンを強烈に引き寄せた。そのAnathemaの音楽の核となる部分を担ったダニエル・カヴァナー、ダニエル・カルドーゾが新たなバンド Weather Systemsを結成、アルバム『Ocean Without A Shore』をリリースした。この作品においても美しく、奥深い独自の音の世界は貫かれており、Anathemaを支え続けたディープなファンの期待に応える内容となっている。ダニエル・カヴァナーに作品や今後の活動について訊いた。

Interview / Text  Mamoru Moriyama
Translation         Hiroshi Takakura

Muse On Muse (以下MM) : Anathema は2020年9月に無期限の活動停止を発表しました。当時は世界的にコロナ渦でしたが、活動停止の決断に至った経緯を振り返ってお話しいただけますか?
Daniel Cavanagh (以下DC) : Anathemaが解散したのは悲しかった。本当に残念なことだけど、ヴィンセントそしとジョンとは今でも仲が良くて彼らのことが大好きだし、きっとこれからもそれは続くだろう。Weather Systemsで音楽を続けることに関しても、彼らは祝福してくれているしサポートしてくれているんだ。これは本当に大事なことだね。このバンドはAnathemaの遺産を自然に受け継いだバンドなんだ。

MM : あなたとDaniel CardosoとでWEATHER SYSTEMSというプロジェクトの作品『Ocean Without A Shore』をリリースしますが、この作品をリリースするに至った詳細をお聞かせ下さい。
DC : これはバンドであってプロジェクトではない。Anathemaのアルバムになる予定だった曲がまだ残っていたからこのバンドが生まれたんだ。ヴィンセントがその残った曲をレコーディングするよう勧めてくれて、Weather Systemsという名前も提案してくれたんだよ。ダニエルと僕は常にバンドに対して同じビジョンを持っていて、もしAnathemaが『ゲーム・オブ・スローンズ』だったとしたら、このバンドは『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』なんだよ。それがバンドを続ける理由でもあるし、ファンも僕らのライブでAnathemaの曲を演奏することを理解してくれると思う。

MM : バンド名のWeather Systemsは、Anathemaが2012年に発表した作品『Weather Systems』のタイトルでもあり、今作『Ocean Without A Shore』には、”untouchable, part 3″が収録されています。2012年の作品『Weather Systems』には、”untouchable, part 1″と”untouchable, part 2″が収録されていたことから、今回の作品との関係性が色濃く感じられますが、実際はどうなのでしょうか?今作のコンセプトについてお聞かせ下さい。
DC : このアルバムはコンセプトアルバムではないけど、君が言うように曲のつながりがあるから、2012年のアルバムとは関連していると言えるかもね。『Ocean Without A Shore』は2012年のアルバムより明るい点が気に入っているんだ。精神性があるのにそこまで暗くない曲を書くのはいい気分だね。またすべてのUntouchableシリーズの曲をSpotifyでプレイするととても自然に流れていくんだ。それにこのアルバムではある曲の歌詞は他の曲の歌詞と関連している。例えば、5曲目は2曲目の歌詞と繋がっていて、1曲目は8曲目と関連性があるんだ。これによってすべての曲が一体感を持っているように感じられるんだよ。

MM : あなた達を支持し続けているファンはカジュアルな音楽ファンではなく、ディープに音楽を聴き込むコアなファンが多いように見受けられます。彼らに聴いて欲しい今作のアピールポイントをお話し下さい。
DC : ファン層に関しては特に予測や期待していることはないし、リスナーがどうアルバムに向き合うべきかに関してはアドバイスするつもりもないな。それは完全にリスナー次第だと思うよ。みんなAnathemaと比較するだろうし、それは理解していて比較されても構わないと思っている。ただ、これは『Distant Satellites』や『The Optimist』よりも一貫して良いソングライティングができたアルバムだと確信している。100%そう言えるね。

MM : Weather Systemsはバンドとして活動していくのでしょうか? あなたの今後の音楽活動のプランを教えて下さい。
DC : ああ、続けていくよ。それにAnathemaの曲、場合によってはフルアルバムもライブで演奏するつもりだよ。これらの曲は僕が書いたものだし大好きだからね。正直、未来についてはあまり考えないタイプで、日々を一日一日大切にしているけれど、もちろんツアーもするし、またアルバムも作る予定だよ。「神が俺たちを守ってくれれば」っていうイギリスの言葉があるけど、それがまさに当てはまるね。


WEATHER SYSTEMS / Ocean Without A Shore

01 Synaesthesia
02 Do Angels Sing Like Rain?
03 Untouchable Part 3
04 Ghost In The Machine
05 Are You There? Part 2
06 Still Lake
07 Take Me With You
08 Ocean Without A Shore
09 The Space Between Us