Mike Keneally
Photo by Martin Mann
フランク・ザッパ・バンドの後期をギタリストとして支え、その後も自身のソロ活動はもちろん、スティーヴ・ヴァイやジョー・サトリアーニ、デヴィン・タウンゼンドといった優れた鬼才、偉才なミュージシャンたちのアルバムやライヴにギター、キーボードで参加するなどマルチな才能を発揮し続けているマイク・ケネリー。ボーカル、ギター、キーボード、作曲、プロデュース etc. などマルチに音楽を操るミュージシャンは世に少なくないが、マイク・ケネリーのようにザッパ・バンドやスティーヴ・ヴァイ、ジョー・サトリアーニなどを確実にサポートできる突き抜けた演奏テクニック、音楽的な感性を持ち、コンポーザーとしても珠玉のメロディを紡ぎ出し、独自の摩訶不思議な音楽世界を創造できるミュージシャンはとても貴重な存在である。そんなマイク・ケネリーがニューアルバム「The Thing That Knowledge Can’t Eat」をリリースした。アルバムは全9曲でおよそ42分とコンパクトではあるが、どの曲も良い意味で普通ではない非常に癖があり、聴きごたえ十分の音楽エッセンスが詰め込まれたアイデアの宝庫となっており、聴き手を強烈に魅了する。マイク・ケネリーにニューアルバム「The Thing That Knowledge Can’t Eat」について訊いた。
Interview / Text Mamoru Moriyama
Translation Hiroshi Takakura
Photo by Frank Wesp
Muse On Muse (以下MM) : 世界中がコロナに振り回されていたこの数年間でしたが、ようやくアーティストも以前のようにライヴを再開し、かっての姿を取り戻しつつあります。あなた自身もスタジオアルバムとしては、2016年の「SCAMBOT 2」以来となる新作「The Thing That Knowledge Can’t Eat」をリリースしました。今のお気持ちは如何ですか。
Mike Keneally (以下MK) : やっとこのアルバムをリリースできてすごくハッピーだよ!前作の「 Scambot 2」をリリースした後は正直アルバムを作るどころか曲を書くことも考えてなかったんだけど、2018年ごろにまた新しい曲を作り始めてリリースも考えるようになったんだ。アルバムを仕上げて発売するのにこんなに時間がかかるとは思ってなかったけど、今それがリリースされて凄く良い気分だね。
MM : コロナ渦でライヴ活動などができない状況下、クリエティヴな作曲活動の方に力を入れるアーティストが多くいたかと思いますが、あなたの場合はどうでしたか。
MK : 僕の場合は自宅スタジオでどう作業するかを学ぶ時間だったね。長年、確かな腕を持っているエンジニアがいるスタジオで曲作りをしてきたけど、ロックダウンの最中は自分で全部やらないといけなかったから、色々と習得するのに時間がかかったね。でもそのおかげでたくさん新曲を書いてレコーディングすることができた。次の自分のアルバムの曲だけでなく、他のアーティストのための制作やレコーディングで忙しかったよ。MFTJ, the Android Trio、,Pawlie、スティーブ・マクアリスターやベアー・マクリアリーとの特別プロジェクト、他にも何人かのアーティストのトラックに関わったね。非常に生産的な時間だったよ。
MM : 最新作のアルバムのタイトル「The Thing That Knowledge Can’t Eat」について教えて下さい。
MK : アルバムの最後の曲 ”The Carousel of Progress” の終盤にバック・ボーカルが Yielbongura という歌詞を歌っているんだ。Yielbongura とは作家でワークショップも主催していたマリドマ・パトリス・ソメによる言葉で次のような意味になる。
アフリカのダガラ族の文化にはスーパーナチュラル(超自然的)という言葉はなく、一番近い言葉が「Yielbongura, (‘the thing that knowledge can’t eat/知識では食することができないもの)」になる。つまり特定のものに宿るパワーや生命というのは、人間が言葉や知識として仕分けしてしまうものとは対極にあるもので、ダガラ族の文化は西洋文化のように精神と物質、宗教的な生活と非宗教的な生活が完全に分かれているのではなく、他の先住民の文化がそうであるように我々にとって超自然的なものは生活の一部なんだ。[マリドマ・パトリス・ソメ「 Of Water and the Spirit: Ritual, Magic, and Initiation in the Life of an African Sham」より]
僕はこの言葉にインスパイアされてアルバムのタイトルを名付けた。2021年12月にソメは亡くなってしまった。アルバム内 ”The Carousel of Progress” のライナーノーツで彼に追悼したかったけど僕が彼の逝去を知ったのはアルバムが完成した後だったから残念だったよ。
MM : アルバムは全9曲でおよそ42分とコンパクトではありますが、どの曲も良い意味で普通ではない非常に癖があり、聴きごたえ十分の音楽エッセンスが詰め込まれたアイデアの宝庫となっており、聴き手を強烈にあなたの世界に引き込みます。
MK : アルバムを聴く人に様々な感情を呼び起こしたりストーリーを感じたりして欲しかったけど、その体験のために長い時間を費やすようなアルバムは避けたかった。最近の人はみんな忙しいからね。久しぶりに出すアルバムだから比較的簡単に消化してもらえる長さになってよかったと思うよ。とは言ったものの次のアルバムは80分くらいの長さになってしまったよ。時には自分を制限できない事もあるからね。
MM : アルバムは美しいボーカルのハーモニーとピアノの絡みが印象的な”Logos”で幕を開けます。
MK : パンデミックの前にレコーディングした曲だね。僕のレーベルExowaxを運営するスコット・チャットフィールドの家でさっと曲を作ろうと思った時に、ピアノのメロディーがすぐに浮かんで、歌詞も乗せてみようと思った。長年書き溜めたてきたけど色々な理由で使ってない歌詞のストックがかなりあって、その中から「Logos」って言葉を発見したんだ。正直、その歌詞を書いた事も忘れていたよ。曲と歌詞の相性は良いと思ったけど、どんなメロディーになるかはわからなかったから、エンジニアのマイク・ハリスに頼んで僕のヴォーカルを録音してもらい、どんなメロディーが自分から出てくるのかを試してみた。こんな感じのメロディーと変わったトーンの声が自分から出てくるとは考えていなかったけど、この曲に求められていたものだったんだと思う。そのあとボーカルをさらに重ねてみた。各パートはすぐに出来上がって凄く満足のいくセッションになったね。
MM : “Both Sides Of The Street”や”Mercury In Second Grade”は、あなた独自の曲の展開、雰囲気を持つ良質なボーカルソングです。
MK : “Both Sides of the Street” はロックダウンの時に夢の中で聴いた曲なんだ。僕のキャリアの中で、夢に出てきた曲を歌ったことは今までにもあったけど、大体尺が短い曲になる。アルバム「hat.」に収録されている ”Apple Pie” や 「Sluggo!」からの ”I Guess I’ll Peanut” なんかがそうだね。アルバム「Boil That Dust Speck」内の ”Good Morning, Sometime” は割と普通の尺の曲になった。今回の ”Both Sides of the Street” はなぜか昔ながらのスタンダードなポップ/ロックの曲になったよ。夢から覚めた時に忘れずに覚えておくのが大変だったね。
その夢の中で僕はCrosby, Stills, Nash & Youngのサポートメンバーとして一緒にステージに立っていて、ライブ中にドラマーとベーシストと僕以外は全員ステージで座り込んで僕は誰かのギターを持っている。僕はバンドの正式メンバーじゃなくてツアーメンバーなのになぜかライブの最後には中心となって演奏している。なのに観客に背を向けてドラマーと向かい合ってライブしているんだ。でも曲が終わった時は観客が凄い歓声をくれたよ。深夜にその夢から覚めて起きた後、妻を起こさないようにすぐに下の階に降りてギターのパートを携帯に録音したんだ。その後もう少し寝て起きたあとにProToolsを開いてざっくり曲を書いた。それがこのアルバムに収録されているよ。
“Mercury on Second Grade” は ”Logos” と同時期でマイク・ハリスがレコーディングをやってくれた曲だね。当初、マイクとその曲を制作した時はシンプルなアコギとベースとヴォーカルのみの曲で、その音数の少ないテイクを使おうと思っていたけど、ロックダウンの時に家にいる時にアレンジを膨らまして別の楽器を入れようと決めた。かなり遠くに住んでいる友人のエリック・スリックにドラムを頼んでファイルを送ってもらったんだけど、そのトラックを聞いた時ドラムが良すぎて思わず笑ってしまったね。エリックがドラムを加えたことによって別次元の曲になった。これ以上にハッピーな事はなかったよ。彼とは次のアルバムに入れる曲でも一緒にやっているよ。
この曲は僕のアルバム「Wooden Smoke」や「Wing Beat Fantastic」を思い起こさせる。どちらもアコギを基調にしたアルバムだからね。歌詞は典型的な中年男性がみんながスマホを触っている時間が長すぎるって文句を言っている曲になっている。個人的にはそんなことは言わないけどね。
MM : イントロのヘヴィでハードなギターリフに何だかスティーヴ・ヴァイを彷彿させるな、と感じつつ聴いていると2:33から3:32のソロでそのヴァイが登場する”Celery”はあなたとヴァイのマニアックなギターを熱望するファンにとって最高のギターインストゥルメント曲です。
MK : この曲は2015年に骨組みを作ってそこから2020年まで完成させていなかった曲だね。ロックダウン時に自宅のスタジオでギターを録音している時にスティーヴを迎えてこの曲をネクストレベルに引き上げてもらおうって思ったんだ。当時のラフミックスを彼に送ってギターソロを2つレコーディングしてくれないかと頼んだんだ。彼は即答で引き受けてくれたよ。スティーヴはこの曲に何が必要かをすぐに嗅ぎ取ってくれたと思う。ありがたかったのはエフェクト無しのギター・トラックとエフェクトのトラックを別々のファイルで送ってくれた事だね。だからミックス時にリヴァーブ音のレベルを変化させることができた。スティーヴの素晴らしいギターとエフェクトの抑揚が良いコンビネーションとなってドラマティックな表情を生み出し、アルバム内のどの曲にもない仕上がりになったと思う。スティーヴが持つ芸術性をこの曲に投影してくれて本当に嬉しく思っているし、誇りに思っている。この曲は僕と彼が今後も一緒に仕事をしていく上で参考にしていく曲になると思うよ。
Photo by Martin Mann
MM : “Spigot (Draw The Pirate)”では美しいアルペジオとボーカルのメロディの絡み、そしてギターとピアノの激しいインプロヴァイズが際立ちます。
MK : ありがとう。気に入ってくれて嬉しいよ。”Spigot” は ”Celery” と同じ時期に作った曲で、2015年にエンジニアを目指す学生のためのワークショップで書いた2曲のうちの1つなんだ。2000年代初期、アルバム「Dog」時代のMike Keneally Bandのドラマーのニック・ディヴァージリオにインディアナ州に招かれて、ピート・グリフィンと一緒にレコーディングした。久しぶりにニックとセッションするのはすごく良い機会だったね。さらに当時は「Scambot 2」のレコーディングでピートと多くのレコーディングを終えたところだったから3人でコンパクトだけどパワフルなセッションになったよ。自宅に戻った後、その音源は4年間全く聞いていなくてその2曲のことをすっかり忘れていたんだ。2019年、”Mercury in Second Grade” と ”Logos” を書いている時期にその2曲 ”Spigot” と ”Celery” を聞き返して本当に良かったよ。凄い良い曲だったことに気づいたから、これは完成させなければいけないと思った。リード・ボーカルは2019年にイギリスのチャットフィールド・マナーでエンジニアのマイク・ハリスと録音した。ロックダウン期に自宅でオーバーダブを重ねて完成させた。歌詞では人生で一番影響を受けたアーティストの1人、チャールズ・M・シュルツを哀悼しているよ。彼はアメリカの文化芸術史の中で最も偉大な人物1人だと思っている。ギターとピアノが交錯する箇所はインディアナ州のSweetwaterでの最初のセッションで録ったパートだ。ライブで時々遊び心であんな風に楽器が行き交うスタイルをやっていたけど、ギターとピアノが交差するあの感じはスタジオでも過去のアルバムでもやったことがなく、正直どうなるかわからなかったけど、この曲には必要だと感じたんだ。
MM : “Ack”のヘヴィなJazz/Fusionの美しさと激しい狂気さは最高にクールです。
MK : アルバムの中では一番古い曲になるね。2006年にオランダでメトロポール・オーケストラのメンバーと長いテイクを録音していたけど今回までリリースしていなかった。オランダの公共ラジオのプロデューサー、コー・デ・クルーの企画で実験的なセッションだった。2003年の僕とそのメトロポール・オーケストラのアルバム「The Universe Will Provide」でオーケストラとの仕事を彼に委託した時からの繋がりだね。スタジオに入った僕は彼から今この場で2曲作るように言われた。1曲目は ”Chee” で最終的に「Scambot 1」のアルバムに収録されたね。 ”Ack” は2番目の曲だった。人が見てる中、待っている中で作曲に挑戦するのは貴重な経験だったよ。そしてメトロポールのメンバーとベースを弾いてくれたブライアン・ベラーは最高のアーティストだから、その場で僕がさっと書いたこの曲に命を吹き込んでくれたよ。僕の人生の中でも記憶に残る出来事だったし、彼ら2人が素晴らしい録音を残してくれて嬉しく思っているよ。
MM : “Lana”は非常にアグレッシヴかつマニアックで良い意味で突出しています。
MK : 2019年にデヴィン・タウンゼンドと一緒にツアーを廻った時に彼がFramusのギターをくれたんだ。オープンCコードにチューニングされてるギターでボトムから数えてC G C G C Eになっているから何を弾いてもコードが外れないようになっていた。そのギターを使った1曲だね。ロックダウン時に作曲家のベアー・マクリアリーとの仕事でレコーディングをした時にこの ”Lana” のメインのリフを思いついて、開いていたベアーのためのProToolsのセッションを閉じて、新しいセッションを開いた。そして思いついたリフとそのヴァリエーションを試したのを約30分録音したんだ。その後、気に入った箇所を取り出して編集して ”Lana” の土台が出来上がった。だけどその後、曲中にもう少し静かな箇所が必要だなと思って、少し変わったハーモニーのボーカルを付け足したよ。ヘヴィーなリフが鳴り響いているだけの曲にはしたくなくて、突如現れる変化が欲しかった。その後、僕のストランドバーグのギターでクレイジーなハーモニーのギターパートをたくさんレコーディングして加えたよ。ブライアン・メイ的なオーケストラ・ギターと他の人に言われるんだけど、僕はブライアン・メイのこんな異常なサウンドは聞いたことがなくて、彼が生み出すハーモニーはもっと美しく交響的なものではないかな。僕のはもっとワイルドなものだね。この曲に関してはメトロノームを使ってないからテンポが変わり続けているんだけど、友人のテッド・モートンは僕の自宅スタジオでこの曲にドラムを合わせるっていう奇跡の仕事をしてくれたんだ。本当に難しかったと思うよ!
MM : MVも公開されている”Big Hit Song”ではボーカルのメロディに幾重にも重なるハーモニーの美しさが印象的です。
MK : 前作の「Scambot 2」が完成した後、約3年間曲を作らず、ツアーと他のプロデューサーへの作品に集中する期間を楽しく過ごしていた。だけど2018年後半にベッドルームでこの ”Big Hit Song” のコード進行を思いついた時、「また曲を書こうかな」と考えている自分を発見したんだ。曲がある程度まで仕上がってきた時、また曲中にちょっとした変化が必要だと考えている中、数ヶ月前にキーボードで作ったコード進行を思い出した。ただ遊んでいた時に思いついたアイデアでどの曲に使おうとかは考えてなかったんだけどね。そのコード進行が最終的にBilly’s big hit songって歌う部分のコードになったよ。曲の中でも一番地味な部分ではあるんだけど皮肉っぽさを込めてそこに必要だったのさ。ミッコ・ケイノネンが制作してくれたビデオはかなり気に入ってるよ。ミッコは、アルバム収録曲のうち5曲のビデオを作ってくれて、それらを繋げた短編映画『The Complete Adventures of the Unrelated Sound Guy』は、 https://www.unrelatedsoundguy.com/ で全編を見ることができるようになっているよ。トビアス・ラルフはこの曲でドラムを担当し、素晴らしい仕事をしてくれた。美しく慎ましいなドラムが曲全体で効いているね。
MM : “The Carousel Of Progress”も心地よく優しいメロディ、美しいハーモニーで展開されるポップソングかと思って聴いていると曲は劇的にマニアックな展開を繰り広げていきますが、最後は優しく静かに幕を閉じます。
MK : この曲はロックダウンが始まって最初に書いた曲だね。家にレコーディングの機材を揃えてドタバタの時期だったよ。この曲を作るのは難易度の高いパズルを解くような作業だったから、ロックダウンの不安定な状況でどうしていこうか悩んでいる中、制作に集中する良い機会を与えてくれた。当時の頭と心に必要な栄養だったと思う。完成には何ヶ月もかかったけど妻のサラに助けられたよ。僕が細かいところに囚われ過ぎていて全体を見れていない時、いつも彼女が全体像を見てアドバイスをくれたんだ。この曲だけでなくアルバム全体を作るのにサラがくれたフィードバックにどれだけ助けられたか言葉では表せないよ。そしてドラムを担当してくれたマルコム・モルティモアの事も忘れずに伝えておきたい。1972年のGentle Giantのアルバム「Three Friends」での彼のドラムは僕が一番好きなドラムで特に ”Schooldays” での彼のパフォーマンスはマスタークラスだ。このアルバムに彼が参加してくれたのは感動的で誇るべき事だったよ。
MM : アルバムで使用したあなたのギター、アンプ、エフェクター、ペダルについて教えて下さい。
MK : 先述したようにFramusとStrandbergのギターを使ったよ。そのほかにも自分が信頼するグリーンのClapton Stratも使用した。アコギはTaylorを使用した。何曲かではRivera Quianaのアンプ使用したけど基本的には実機のアンプを使う代わりに僕のFractal Axe FX IIIとUniversal Audioのプラグインを使用している。エフェクト類もほとんどUniversal Audioのプラグインでペダルはあまり使っていないよ。
Photo by Marc Mennigmann
MM : 今作でもギター、ベース、キーボード、ボーカルなどをマルチに、かつ非常に高いレベルでこなしています。それぞれのスキルを維持するには非常に多くの時間を費やす必要があるかと思いますが、実際のところはどうなのでしょうか。
MK : オルガンは僕が一番最初に習い始めた楽器で7歳から引いているよ。ギターを始めたのは11歳だからキーボードの経験の方が4年多いことになるね。多くの楽器を演奏できることは本当にありがたく思っている。自分の曲が面白くなるし、レコーディングの時にもアレンジの幅が広がるし様々な色付けがすぐにできるんだ。色々なアレンジをしていくのが好きだから別々のギターの音色にキーボードの音を重ねていくのは楽しいよ。自分の曲全てに別々のキャラクターと音色を持って欲しいと思っているからね。そしてベースを弾くのも大好きだ。ギターとは全く違うやり方になるからね。アルバムの中のいくつかの曲はBeer For Dolphinsのオリジナル・ベーシストで僕の友人でもあるダグ・ランが長年使用してきたフレットレスのベースを使っていて、例えば ”The Carousel of Progress” のイントロのベースはダグのベースを使っているね。彼の楽器を演奏する時、彼が乗り移ったのような感覚になるんだ。
MM : あなたはコンポーザーとしても卓越していますが、あなたの場合の曲作りの進め方を教えて下さい。
MK : ありがとう!幸運なことに頭の中にちょっとしたメロディーが浮かぶんだ。日頃からそういうメロディーのアイデアを歌ったり弾いたりしたものを携帯に録りためて後々の制作に使っているよ。僕は作曲家というよりリスナーとして音楽制作にアプローチしている。僕にとって音楽は生活の中で動いている川の流れを見たいようなのもので、僕たちミュージシャンはその水の流れの一部を捕らえているのに過ぎない。それで僕が新しい音楽を作るときは、例えば携帯のボイスメモに残した小さな音楽のかけらからスタートする。その小さな破片を録音した後、次に何を聞きたいかをじっくり想像してみるんだ。レコードに針を落とす時の感覚に似ているかもしれない。この針を落とした時にどんな音が鳴って欲しいかっていうことを考えるんだ。そのサウンドを頭の中で演奏してみて、その後、実際にその音をどう演奏するかを考えてレコーディングする。僕にとってのソングライティングとレコーディングは曲が完成するまでこの作業を繰り返すって事だね。
MM : あなたはフランク・ザッパのバンドで活動していた頃、ザッパの曲作りを近くで直接に見ていたかと思いますが、当時の想い出で強く印象に残っていることを教えて下さい。
MK : 彼はバンドメンバーを効果的に使うのが上手な人で、僕たちは彼にとっての生きた楽譜だったね。1988年のツアーで演奏した全ての新曲は練習中に彼がその場で書いた曲だった。まず彼がギターでキーとなるラインを弾くか、歌って僕たちに聞かせてくれる。それを僕たちが練習して演奏する、そしてまた彼が次の展開を示してくれるんだ。たった数時間で全てのアレンジメントを完成させたんだ。彼の創造性や生産性、少ない時間で効果的に制作を進める事。忍耐強く物事を進める姿勢など全てにインスパイアされたよ。ホーン部隊が5人もいる大所帯のバンドだったから簡単な仕事ではなかったはずなのに、彼は彼のやり方をわかっていたね。そして制作過程は僕たちにとっても楽しいものだった。作業が終わったときは僕たちは大笑いしていたね。苦痛を伴うような難しい作業ではなく、活気があってエンジョイできる仕事だったという事にも大きな影響を受けたよ。メンバーがみんな仕事の過程を楽しんでいるというのは作品に好影響を与えるからね。彼のようなバンドリーダーに僕もなりたいと思ったよ。
MM : 今後の予定を教えて下さい。
MK : 今は8週間にも及ぶデヴィン・タウンゼンドとのヨーロッパツアーの真っ最中さ。彼とは2020の3月にもツアーしていたんだけどコロナの影響でツアーが中止になり飛行機で自宅に戻ることになったから、またデヴィンとこうしてツアーを廻れるのは嬉しいね。彼の音楽は大好きだから素晴らしい仕事だよ。コロナ渦になってからもう3年もたったことにも驚いている。奇妙な3年間だったよ!
今年の終わりには ProgJectというプロジェクトのツアーに参加する予定だ。70年代からのプログレの名曲を演奏するっていう企画さ。僕のバンド Mike Keneally & Beer For Dolphinsでもツアーを企画している最中だから新しいアルバムからの曲と以前のアルバムからの曲の両方をみんなに届けることができるね。1月に南カルフォルニアで小規模のツアーをしたことによってもっともっとツアーをしたいって気持ちになっている。それとフランク・ザッパのバンドメンバーとThe Zappa Bandとしてのライブもあるし、昨年の後半に僕がメンバーのバンドThe Bird BrainのファーストEPをリリースしているからそのEPをプロモートするツアーもやりたいね。僕は多すぎるくらいたくさんのバンドに所属しているね。でも全て違う音楽性を持っているから全て楽しんでいる。全てのプロジェクトに対して時間を作ってライブしていきたいと思っているよ。
その他にもヨーロッパでのトリオで The Mike Keneally Reportというバンドもやっていて昨年ドイツのバート・ドベラーンで行われたZappanaleフェステバルのヘッドラインを務めたんだけど、彼らとももっとギグをやりたいね。それと同時に今回のアルバム「The Thing That Knowledge Can’t Eat」の制作期間2年の間に作った他の曲たちは僕の次のアルバムに収録する予定でそのアルバムも完成させたいね。今回のアルバムと違って全てインストの曲を予定していて、こちらもまた少し変わったものになると思うけど、また制作モードに戻った時にどういう仕上がりになるかはまだわからねいね。仕上がりを自分でも楽しみにしているよ。アルバム作りは大好きなんだ!
MM : ファンへのメッセージをお願いします。
MK : 長年にわたって僕の作品にチェックしてくれている日本のファン一人一人にお礼を伝えたいね。20年以上も前に名古屋でライブしたのを今でも覚えている。長い間僕の音楽をみんなに披露していなから早く日本に行ってライブしたいと心から思っているよ。
Mike Keneally official website https://www.keneally.com/
Mike Keneally / The Thing That Knowledge Can’t Eat
1. Logos
2. Both Sides of the Street
3. Mercury in Second Grade
4. Celery
5. Spigot (Draw the Pirate)
6. Ack
7. Lana
8. Big Hit Song
9. The Carousel of Progress
https://store.keneally.com/
https://mikekeneallymusic.bandcamp.com/