Steve Stevens
ビリー・アイドルの最新EP「THE CAGE」がリリースされた。このEPでもビリー・アイドルの長年に渡る盟友、スティーヴ・スティーヴンスが作曲、ギターで大きく貢献している。ロック・ギタリストとしての強力なギターテクニック、抜群の音楽センスを持っていることはもちろん、ビリー・アイドルとの一連の作品やステージ、そして今は亡きスーパースター、マイケル・ジャクソンとの共演 “Dirty Dianna”で放っていたような「華」のある強烈な存在感は健在である。
ビリー・アイドルとのこれまでの作品においては、”Rebel Yell”や”White Wedding(part 1)”などロック・ギター史に刻まれるオリジナリティあふれる印象的なプレイを生み出し、1986年に公開された映画「TOP GUN」の”TOP GUN ANTHEM”で披露した美しくもアグレッシヴでセンス溢れるギタープレイは今でもなお輝きを放っており、動画サイトでは彼のプレイをカヴァーする若い世代のギタリストの姿を数多く観ることができる。スティーヴ・スティーヴンス自身のソロとしてもこれまでにハードロックに基軸を置いた「STEVE STEVENS ATOMIC PLAY BOYS」、フラメンコギターの持つ優美さ、激しさを追求した「FLAMENCO.A.GO.GO」、ロック・ギター・インストゥルメンタルの魅力が詰まった「Memory Crash」を生み出すなど、作曲・アレンジ・プロデュースといったミュージシャンとしての総合力の秀逸さによって幅広い音楽ファンを魅了し続けている。スティーヴ・スティーヴンスにビリー・アイドルの最新EP「THE CAGE」への取組、TOP GUNへ携わった当時のことからTwo NotesからリリースされているDynIR製品「the Steve Stevens Platinum Collection」に至るまで色々と訊いた。
Interview / Text Mamoru Moriyama
Translation Hiroshi Takakura
Muse On Muse (以下MM) : あなたの盟友であるビリー・アイドルが最新EP「THE CAGE」をリリースしました。このEPでもあなたは作曲、ギターで大きく貢献していますが、制作はどのように進められたのでしょうか。
Steve Stevens (以下SS) : このレコードでの僕の役割はギタリストと共同のソングライターだね。今作に関してはトミー・イングリッシュとジョー・ジャニアックがプロデューサーで僕はプロデューサーじゃないね。彼らも共同のソングライターでもある。若くてもの凄い才能があるミュージシャンと働けるのは楽しかったね。作曲に関しては皆で集まってアコギを弾いて出てきたアイデアをエレキギターやドラムに変換していくっていういつものやり方で作ったよ。僕たちにこれがとってベストのやり方だと思っているよ。
MM : “Cage”や”Rebel Like you”ではみんなで盛り上がりたいパワーを持つロックであり、あなたによるスケールの大きなギターのリフ、コンパクトながらロックギターのカッコ良さが濃縮された解放感があるソロも印象的です。
SS : “Rebel like You”はビリーの祖母に関して歌った曲だね。彼女はビリー・アイドルそっくりの格好で僕らのライブに来たことがあるんだ。ビリーが本当に彼女を愛していることがわかる素晴らしい経験だったよ。”Cage”は1年半にも及んだロックダウンが終わったことに対してのお祝いの歌として書いたものだ。
MM : Running From The Ghost”では、美しいピアノからあなたのギターによるシーケンスフレーズにつながり、その後、曲は哀愁を放ちながら疾走していきます。
SS : “Running From The Ghost”はビリーの曲の中でも恐らく一番実験的な曲になったと思う。アイデアっていうのは前もって計画する事が出来ないから、心から出てくるアイデアについていくしかないんだ。この曲をレコーディングした日は僕らは交響楽の気分だったから、オーケストラと一緒に演奏するようなアプローチでロックンロールの楽器をレコーディングしたんだ。
MM : “Miss Nobody”ではグルーヴ感のあるベースライン、そしてお洒落なアレンジがとても気持ち良く響く曲です。
SS : “Miss Nobody”はサム・ホランダーとの共作だね。今までの僕たちの曲では避けていた70年代後半のディスコの雰囲気がある曲になった。この曲が大好きだよ。この曲のストーリー、細部やスタイルがローリング・ストーンズを思い出さしてくれるね。ジミ・ヘンドリックスを模擬しようとしたアーニー・アイズレーを真似しようとする気持ちが自分の中にあったと思う。
MM : このEPでは、ビリーが歌うボーカルのメロディ、そしてあなたのギター、楽曲のアレンジに至るまでロック音楽の魅力が濃縮されており、多くのロックファンにアピールするものです。ビリーとあなたによる化学反応がいまだに力強く続いていることをあらためて私たちは知ることとなりました。
SS : ビリーとはいつも自然に心に浮かんだことをやろうとしているよ。長いパートナーシップの中で僕たちはお互いが考えている事が予測できるし、一番重要なことはその曲が最高になるように演奏することと、曲が持つメッセージを届ける事だね。
MM : ビリー・アイドルとしては2021年に4曲を収録したEP「THE ROADSIDE」もリリースしています。今回のEP「THE CAGE」と併せて1枚のフルアルバムとしてリリースすることは考えなかったのでしょうか。
SS : 出来上がった曲をできるだけ早くファンに届けたいといった考えからだね。アルバムはEPよりもはるかに時間がかかる。EPだと曲が完成したらすぐにファンの耳に入るところが好きなのさ。このやり方を続けるとともにもちろん完成したアルバムにも収録する予定だよ。
MM : 最新EP「THE CAGE」で使用したあなたのギター、アンプ、エフェクター、ペダルについて教えて下さい。
SS : このレコード制作ではトミー・イングリッシュのスタジオ内の素晴らしい機材を使用する事が出来た。もちろん僕はシグネチャーモデルのKnaggsのギターも持ち込んだけどね。スティーヴ・スティーヴンスモデルのKnaggsはいわゆるジミーページ配線になっていてシングルコイルから位相を逆相で出すことができて、想像しうるギターの音全てが出せるんだ。アンプはFriendman Amplificationのアンプを使用している。自分にとってはその曲に合った音が出る事、しっかり機能していることが大事だね。時にはプラグインを使うこともあるし本物のアンプを使って耳に異常をきたすほどのヴォリュームまで上げることもある。ルールはないと思っているよ。
MM : Two Notesから「THE STEVE STEVENS PLATINUM COLLECTION」という製品がリリースされていますが、この製品について教えて下さい。
SS : 1979年から僕が集めてきたスピーカー・キャビネットのコレクションをプラグイン化したものだね。何百万枚のヒット曲となった”Rebel Yell”や”Top Gun Anthem”や他のレコードで使用してきたキャビネットが含まれているよ。録音は有名なStudio 606でレコーディングし、ミキサーは伝説のSound Cityスタジオで使用されていたNeve 8078を通しているんだ。
MM : 今年は映画Top Gunの続編であるTop Gun: Maverickが公開され大ヒットしました。Top Gunといえば、グラミーを受賞したHarold Faltermeyerとあなたによる”Top Gun Anthem”が多くの人々の心に残っています。これまでに色々なところで何度もあなたが質問を受けているのは十分承知の上、当時を知らない世代のためにここでもお聞かせ下さい。この曲に取り組むこととなった当時の経緯を教えて下さい。
SS : ビリー・アイドルのアルバム”Whiplash Smile”にハロルドがキーボード奏者として招かれたのがきっかけだね。ある日ハロルドが僕にTop Gunっていう映画のサントラの仕事をしていると言ってきた。豪華スターと共に人気上昇中の俳優トム・クルーズってのが出演するってね。ある日、ビリー・アイドルとの仕事を終えた後、ハロルドはTop Gunのマスターテープを出してきて、そして僕たちはたった2、3時間で録音を完成させた。だからあの曲があんな成功を遂げるとは思っていなかったね。グラミーを受賞したのはハッピーな出来事だった。まるで自分がロックンロールを代表しているような気分だったよ。
MM : 当時、この曲のレコーディングで使用したギター、アンプ、エフェクター、ペダルについて教えて下さい。
SS : ビリー・アイドルとのアルバムで使った機材は67年式のマーシャル100W plexiアンプ、ギターはCharvelle San Dimas. サステイン用にはBOSSのコンプレッサーペダルを使用した。長年使ってきたギターやアンプを今も使用しているよ。
MM : この曲は多くの人々がカバーし動画サイトにアップしていますが、それらを観たことはありますか。
SS : 自分の音楽を他の人がプレイしているのはなるべく見ないようにしているんだ。見るとしたらすごく若い人がカバーしている時だけでそれは応援してるよ。ほとんどの場合・・例えば、”Rebel Yell”などのシンプルな構成の曲を間違っていているのを見ることになるからね (笑)
MM : この曲の2分6秒のところで聴けるプレイは、ギター3弦の5フレット上のハーモニクス音を出し、アームバーでアップしている音でしょうか。この部分についてあなたが実際はどのようにレコーディングでプレイしたのか教えて下さい。
SS : 使用したギターにはFlloyd Roseのワーミーバーが付いていていたんだけど、正直いうとどうやってあの倍音を生み出したか覚えていないんだ。僕は感覚でプレイするからね。今聞いてもどう即興であの音を出したか覚えていないね。
MM : String RevolutionがYoutubeチャンネル( https://youtu.be/Ffir3iP2dfc )で公開しているランディ・ローズへのトリビュート曲 “Crazy Train (A Tribute to Randy Rhoads) feat. Steve Stevens” について教えて下さい。フラメンコ・ギターによるあなたならではの素晴らしい”Crazy Train”を聴くことができます。
SS : ランディー・ローズへのトリビュートに参加した1番の理由は彼がロックの殿堂入りした事を祝うためだね。ランディーがクラシック・ギターやフラメンコ・ギターが好きなのは知っていたからフラメンコで彼の曲を表現したら喜んでくれるんじゃないかなと思ったんだ。ちなみに初めてランディーの写真を見たのは日本のMusic Lifeマガジンだったと思うよ。彼は本当に素晴らしいミュージシャンだったね。
MM : ストリーミングでの音楽配信が中心となっている昨今の音楽状況についてどうお考えですか。
SS : 正直なところ、音楽においてビジネス面を重要とは考えていないんだ。まず自分が納得いく音楽にすることが大事で、自分がハッピーで他の人も同じように捉えてくれると良いなと思っているよ。スタイルや流行を追いかけることは大きな間違いだと思う。インターネットに関して1つ好きなのはレコードレーベルや大きな予算なしで音楽をファンに届けることができることだね。
MM : 現在は、以前に比べるとネットを通じて世界中の人々に音楽を聴いてもらうチャンスは拡がっているかと思います。プロデューサとしても多くの実績を築いてきたあなたから見て、日本のロックミュージシャン達が国内ではなくより多くの世界規模エリアでファンを得て活動するために必用だと思うところをお聞かせ下さい。
SS : 音楽は世界の共通言語だから例えばYoshikiなんかは世界でも大成功を収めている。インターネットやYouTubeのようなサイトがインターナショナルなアーティストに活躍の場を与えていると思うよ。
MM : あなたのソロアルバムやATOMIC PLAYBOYSのような自身のバンドでの活動を期待しているファンも多いと思いますが、今後にそのようなプランはございますか。
SS : 2022年は全てのエネルギーをビリー・アイドルのレコーディングとツアーに費やした。2023年は他のプロジェクトにも力を分散できたらいいね。
MM : ファンへのメッセージをお願いします。
SS : まず日本は世界の中でも好きな国で、氷室とツアーしたこともあるしたくさんの時間を過ごした。欧米のアーティストが絶対に行かないような街にも行ったよ。日本にいるときはいつも安全だと感じる。ファッションも好きだし大都市が超近代的なのに人々は繊細さを持っているところも好きだね。歴史と伝統も重んじているね。もちろんパンデミックにより旅するのが難しくなっているけど2023年は日本に戻れると良いね。日本の全てのファンには今までずっとサポートしてもらっていて、手紙を送ってくれる人もいたりして、とても感謝しているよ。
Steve Stevens official website https://www.stevestevensguitar.com/
Billy Idol / The Cage EP
1.Cage
2.Running From the Ghost
3.Rebel Like You
4.Miss Nobody
Billy Idol / The Roadside EP
1.Rita Hayworth
2.Bitter Taste
3.U Don’t Have To Kiss Me Like That
4.Baby Put Your Clothes Back On