Jamie West-Oram
Photo by C. Jansen
80年代に世界を席巻した英国ニューウェイヴ・ロックの中でもその独自のスタイル、サウンドにより、玄人好みのディープな音楽ファンから高く評価されていたTHE FIXX。ボーカルのサイ・カーニンが放つキャッチーで憂いを帯びたメロディとU2のエッジやポリスのアンディ・サマーズがそうであるように、ギターのジェイミー・ウエスト・オーラムの楽曲を彩りTHE FIXXの中核となるギターワークで構築された楽曲は、コアな音楽ファンだけではなく幅広い音楽ファンを惹きつけ、1983年に発表したアルバム「Reach the Beach」では当時のビルボードアルバムチャートで8位を獲得、アルバムからリリースされたシングル”One Thing Leads to Another”は Billboard Hot 100 で4位を記録している。2022年にリリースされた最新作「Every Five Seconds」でもTHE FIXXらしいサイ・カーニンの個性的な歌声にジェイミーの多彩なギターサウンドとルパート・グリーンオールによるキーボードサウンドが融合した芸術的で奥深い音楽空間が健在。アルバムに収録されている全曲がとても魅力に溢れ、THE FIXXが創作能力に溢れた現在進行形であることを証明している。バンドサウンドの中核を担うジェイミー・ウエスト・オーラムに彼の個性的なギタースタイルを作り上げた音楽的バックグランドやTHE FIXXとの出会い、そして最新作「Every Five Seconds」について訊いた。
Interview / Text Mamoru Moriyama
Translation Hiroshi Takakura
Photo by C. Jansen
Muse On Muse (以下MM) : あなたは80年代に世界を席巻した英国ニューウェイヴ・ロックの中でも独自のスタイル、サウンドで高く評価されていたTHE FIXXにおいて重要な役割を果たしてきました。あらためてあなたの音楽的なバックグランドをお聞かせ下さい。
Jamie West-Oram (以下JW) : 僕は4人兄弟の末っ子で賑やかな家庭で育ったんだ。家ではみんな一日中レコードを聴いたり楽器を弾いたりしていたね。父親は気に入ったコードを見つけるとずっとそのコードでギターを弾くような人で、ある日父が”Great American Songbook”のレコードの中の1曲のコードを気に入って、そのコードをアルペジオで弾いたり即興で付け加えて弾いたりした。彼の音楽への情熱は僕にも伝染したと思うよ。父は大きなスティール弦のアコースティック・ギターを持っていて、僕は小さい時にそのギターを床に置いて演奏しようとしてたんだ。初めて耳コピで弾いた曲はLeadbellyの”Where Did You Sleep Last Night?”だったね。父はバンジョーウクレレも持っていて、僕が9才の時にはいくつかのコードを教えてくれた。そこからは自分で弾きながら色々と発見するようになって演奏に夢中になってもう止まらなくなったね。父から譲り受けたそのバンジョーウクレレは今でも持ってるよ。その少し後に兄のステフェンがスパニッシュ・ギターを買ってくれて、その後(フランシスコ・)タレガや(エイトル・)ヴィラ・ロボス、(フェルナンド・)ソルやバッハなどを弾けるようになった。そして兄のギターをたくさん弾いてジミヘンの”Hey Joe”を練習したり即興をやるようになったんだ。
MM : その当時はどのようなミュージシャン、ギタリストから影響を受けていたのでしょうか。
JW : まずは兄と姉の影響が大きいね。彼らはビートルズやストーンズ、Kinks、Yardbirds、Bob Dylanといった最新のポップ・ミュージックのレコードを買っていて、ある日兄のステフェンが吃ったように歌うシンガーの喧しい曲について教えてくれて、そのレコードを買うんだ!と言ってた。その曲はもちろんThe Whoの”My Generation”さ。僕は11才だったね。ピート・タウンゼントはギターが素晴らしいだけでなく、その曲のカオス的な部分をうまくコントロールしていて、それを聴いてギタリストになりたいと思ったんだ。その他にもキース・リチャーズ、ジェフ・ベック、ミック・ロンソン、ジミ・ヘンドリックス、ジミー・ノーレン、トム・ヴァーレイン、デヴィッド・バーン、ニール・ヤングなんかに影響を受けたね。
MM : あなたが生み出すカラフルで幻想的なギターサウンド、そしてシャープで切れがあるバリエーション豊かなリズムギターは、THE FIXXにとって欠かすことができない重要な部分です。どのようにしてそのオリジナリティの確立に努めてきたのでしょうか。
JW : The Fixxに加入した時のギターは’55ギブソン・レスポール・ジュニアで直接マーシャルのアンプに繋いでヴォリュームは全て11に設定していたよ。The Fixxのメンバーは僕のプレイを気に入ってくれたけど、サウンドに関してはもう少しクリーンな音色で弾くようにと言われた。初めは乗り気じゃなかったけどクリーンなトーンは確かにバンドの音楽に合っていた。さらにコードとエフェクトペダルに関しても控えめに使うようになって、当時キーボードを担当していたルパート・グリーンオールとのコンビネーションが良くなった。プロデューサーのルパート・ハインからもそのアプローチを勧められたね。バンドメンバー、プロデューサーのルパートと彼のエンジニアであるステフェン・テイラーとのやり取りの中で自分で色々と実験してみる事に楽しみを覚えたね。そして自分の独特の音色・サウンドにたどり着いた。
MM : THE FIXXに加入する前は、Phillip Rambowのバンドで活動していたそうですね。
JW : フィリップ・ランボーは力強いシンガー兼ソングライターでもっと大物になることもできた人物だ。アンフェタミンとLSDを摂取したヴァン・モリソンのようなスタイルの音楽だった。実際の彼のライフスタイルじゃなくて音楽的にという意味だよ! 彼とドラマーのブレア・カニングハムにベースはデイブ・コクランと僕の4人でロンドンで活動していたけど、ブレアとデイブはアメリカのテネシー州のメンフィス出身で、かなり訛りがきつかったから彼らが何を言っているか誰もわからなかったよ。2人ともワイルドな性格をしていて、やんちゃだったけど最高に楽しい2人だったね!いつもトラブルに巻き込まれていたけどナイスガイで最高のミュージシャンさ。僕の前のギタリストはミック・ロンソンっていうまたこれも凄い人だったから、彼の後任のギタリストになるのは大変だったよ!
MM : その後にTHE FIXXのメンバーとなりますが、その当時の経緯について教えて下さい。
JW : 1980年の5月の事だったね。THE FIXXの前身はThe Portraitsってバンドで彼らはパワーポップというジャンルを飛び出してもっとエッジの効いた実験的な音楽をやろうとしていた。当時Soundsという音楽誌があって彼らがギタリスト募集の広告を載せていた。僕がたまたま間違えて買ってしまった前週号にその広告を見つけて、当時のベーシストだったチャーリーに電話した。チャーリーはもう80人ギタリストをオーディションしたけど良い人にまだ出会えていないと言い、僕に加入を勧めてくれたんだ。僕らはお互いの音楽を知っていて相思相愛だったね。誰かのバンドに加入したいというよりは、一緒に曲を作る人を探していたから加入することを決めたよ。彼らの問題解決能力に長けていているところや、「なんでもできるよ。」っていう姿勢が好きだったね。僕らはロンドンのヴォックスホールにある廃工場で練習していた。電気がなかったから交代で発電機にガソリンを入れて使用していた。僕が初めてガソリンを入れた時、半分くらいを足にこぼしてしまってジーンズがガソリンでびしょびしょになってしまった。その時ある理由で彼らがマッチの火をつけていて、その火が僕に燃え移ってしまったんだ。アダムが横になれ!って叫んで僕がそれに従って、みんながバスドラ内のクッションで火を叩いてくれてなんとか火が収まって僕の命が助かったのさ。
その翌週に市の電力ケーブルが歩道の下にあるのを誰かが見つけてきて、僕はいなかったんだけどアダムがケーブルに釘を刺して、他のみんなはアダムが感電しないように彼の足を押さえてっていう作業をして、僕らはなんとか常時動く電気を手に入れることができた。毎日朝10時にそこに集合して作曲と練習、そして夕方にはクラブで演奏する生活を続けたよ。
Photo by C. Jansen
MM : 80年代はMTVが全盛であり、英国ニューウェイヴ・ロックが世界を席巻する中でTHE FIXXも活躍していましたが、当時の印象についてお聞かせ下さい。
JW : パンクが素晴らしい手法で全ての音楽を壊してくれた。僕はちょうど音楽の専門学校を辞めたばかりで、必要なのは3つの基本的なコードと力強い姿勢・アティトゥードだったって事はわかっていた。当然のようにみんながそのパンクのトレンドというバスに飛び乗ったけど、その後すぐに何か他の新しいものが必要だと気づいた。パンクは大爆発して大きな空洞を残したのでその空洞を埋める何かが必要な時期だったんだ。ジョン・ライドンはその後すぐにセックス・ピストルズを脱退してPublic Image Ltdを始めた。賢い動きだったと思うね。MagazineやWire、Cabaret Voltaire、Joy Divisionといったバンドも力強いエネルギーを放ちながら実験的な事をやっていたね。僕らはニューウェーブのムーブメントの一部だったとはあまり思っていないんだけど、間違いなく前述したアーティストから影響を受けながら、とにかく曲を作って、ライブをしてチャンスがあればそれを掴もうとしていた。転機になったのはルパート・ハインとステフェン・タイラーと仕事した事だね。ルパートと彼女のジャネット・オストシュが僕たちのミュージック・ビデオのプロデュースと監督をしたいと言ってくれた。MTVがスタートした時期でMVを募集していた時期だったからね。”Stand Or Fall”のビデオはへヴィローテーションになり、アメリカでの僕たちの知名度が上がったんだ。”Reach The Beach”の制作中にバンでアメリカ中のクラブを1ヶ月かけてツアーしたよ。1982年だったね。1983年に”Reach The Beach”のアルバムをリリースして僕らはThe PoliceのSynchronicityツアーにサポートで参加した。巨大なスタジアムでのライブもしたから、バンドはアメリカでブレイクした。政治的なメッセージも発信してたから、それまでのフォロワーのアート系のインテリな人たちだけでなく、ポップ・ミュージックのフォロワーが増えたのは驚いたよ。素晴らしい一年だったね。
MM : 現在の音楽シーンの状況についてはどのように考えていますか?
JW : Sleaford modsは大好きだね。彼らはストレートでエキサイティングな音楽をやっていて、社会や政治の問題に対して知性の高いメッセージを発している。他に好きな現行のアーティストはあまり思い浮かばないね。大人の男が泣き叫ぶようなファルセットで歌うのは理解できないし、同じように大人の女性が痛いほどの高い声で自分の歌声を見せつけるように歌うのも理解できないんだ。僕はギターのチューンをローにして、シンガーがアグレッシブに、まるで吐くように叫ぶボーカルの方が好きだね。でもそう言った曲を買いたいとまでは思わない。今の音楽はプロダクションのレベルは高いけど、ハーモニー的な実験性が皆無だね。グライムは昔でいうパンクのような音楽でストリートから生まれた音楽だ。もちろん音楽的には別物で、リスペクトはしてるけど新しい世代のための音楽だから、自分と関連づけることができない。僕の音楽じゃないね。Sleaford Modsは賢いワーキングクラスのパンクとグライムの要素を混ぜたようなスタイルだね。僕の親の世代は僕達の音楽を嫌いだったし、それが僕たちの音楽をより好きになる理由になった。最近の音楽は僕にとっては残念なものだからどうでもいいと思っているよ。もしかして僕は何かを見落としているのかもしれないけどね。リアルでエキサイティンでシュールな音楽が僕たちに必要なのは間違い無いからね。ストリーミングは今の所ほとんどのミュージシャンにとって良いものにはなっていない。レコード会社はもっとストリーミングに対してやれることがあった筈だ。それでほとんどのミュージシャンがほぼ何も金銭を受け取れない状態になっている。多くの良いミュージシャンが名声のために働く人たちのために、音楽を辞めて去ってしまった。それによって全体の品質が下がってしまったね。
MM : それではTHE FIXXの最新作「Every Five Seconds」について話をお聞かせ下さい。この作品ではTHE FIXXらしいあなたの多彩なギターサウンド、そしてRupert Greenallによるキーボードサウンドが芸術的で奥深い音楽空間を創出しています。この作品ではどのようなことを目指しましたか。
JW : これと言ったゴールは決めていなかったけど、アルバム内の殆どの曲でメンバーとリハーサルルームで対面し、曲を作っていくというプロセスを踏んだ。曲が自然に発展していくように仕向けた。もちろん僕らはお互いの演奏に関して厳しく言い合うことができるし、元々の楽曲が素晴らしいので、曲の持つ魅力を最大限にするために、曲の構成やアレンジに関しては細心の注意を払ったよ。
MM : アルバムのクレジットを確認すると全曲がバンドのメンバー全員による共作となっています。曲作りのプロセスや各々の分担について詳細を教えて下さい。
JW : 歌詞はほぼサイが書いたね。彼は多くのものを生み出せるシンガーだから、彼が思いついたメロディーに対して僕らがアイデアを加え、夢中にアレンジしていく過程はよくある。時には僕らの1人が思いついたリフやコード進行に、他のメンバーが過去にためていたアイデアの中から「そのリフにはこれが合うぞ。」という風に作っていくこともあった。例えば”Suspended in Make-Believe”は練習から産まれた曲ではなくて、僕が思いついたコード進行をサイに送り、彼がヴォーカルを入れてスタジオで最低限のアレンジを施した曲なんだ。ユニークで心に響く素晴らしい曲になったよ。ほぼ全ての曲はパンデミックの前に書いたんだけど、”Suspended in Make Believe”や”Wake Up”なんかはコロナ渦の時代に作られたって言ってもおかしくない内容になっている。奇妙だね。“Woman of Flesh and Blood”は僕が作曲して歌詞も殆ど自分で書いた。スタジオに着いてメンバーに「僕が書いたデモを聴いて欲しい。」と頼んでみたところ、メンバーが「音源をかけるよりも生で演奏してくれ」と言うからその場で演奏したよ。みんな気に入ってくれてアレンジを手伝ってくれた。サイはBヴァースの歌詞を足してくれた。サイが頭から全てのヴォーカルを歌うものだと思っていたけど、みんなに説得されて僕がヴァースを、サビはサイと僕が交代で歌う事になった。サイはマニアックなヴァースBも歌っているね。この曲は僕のクレイジーな妻ビビに捧げるラブソングなんだ!マニアックな勘繰りや疑心暗鬼的な世界観と、幸せでドリーミーな世界観を彷徨うな曲だね。かなり良い仕上がりになったよ。
MM : “A Life Survived”や”Closer”などでは、あなたの特徴でもあるクリーンで切れ味があり、曲を映えさせるセンス溢れるリズムギターを聴くことができます。
JW : ”A Life Survived”はずっと後に”Lighthouse”と一緒にレコーディングした曲だね。「この短い人生を無駄にせず最大限努力するんだ」という内容をかなり詩的に伝えている曲だね。レコーディングの最後の方で僕のクリーンでシャープなコードを加えたよ。それに対して”Closer”でのリズムギターは最初から曲の土台としてあったものだね。こういう音は確かに自分の特徴的なサウンドだと言われるものだと思う。この早口で強烈なヴォーカルは僕にとって人間の無関心な部分を揶揄したようなもので、殆どラップだね。だいぶ前に書いた曲だけど当時よりも今の時代に向けた内容になっていると思う。
MM : ミュージックビデオが公開されている”Take What You Want”では、サイが歌うキャッチーなメロディと幻想的なサウンドなどTHE FIXXの魅力が凝縮されています。
JW : ドリーミーなヴァースと力強いコーラスはそれ自身が疾走感を自己生成していくんだけど、初めから存在していた要素をうまく強調していくのは難しい部分だったね。アルバム内で最もポップな曲なんだけどシリアスな内容なんだ。この曲のアレンジで使ったトリックは、バッキング・ボーカルと最後のコーラスをハーモニー的に合わせた点だね。途中にほぼインストのみの4小節があってその後サビに続き予想外のEフラットのコードを加え、不協和音的なコードから調和されたコードに展開する事によりエネルギーを与えて。さらにサビを2回重ねて緊張感を高めてから最終章で再び不協和音からEフラットの調和音に展開して7小節をキープすると言う展開だね。
MM : “Wake Up”では冒頭からミステリアスなギターが曲を牽引し、スリリングに展開されていきます。
JW : 前述したように、コロナ以前に作った曲なんだけどパンデミックについて書いたような内容になってると思う。毎日のルーティンやレールを敷かれた人生から抜け出せずに過ごす人々への曲になっているよ。ヴァースは少し気味の悪いノスタルジック性を持っていて、サビは祝福的でエキサイティングな感じになっているよ。バースではデュアン・エディを意識して鼻にかけたような歌い方をしている。彼と同じようには聞こえないけど、めまいがするような雰囲気を醸し出せて、この曲と合っていると思うよ。サビはもっと力強さが必要だったんだけど、パワーコードを使用する事なく、高いノートで金属音のようなサウンドを弾く事で、船酔いのような効果をここでも効かせているんだ。
Photo by C. Jansen
MM : “LONELY AS A LIGHTHOUSE”でも多彩なリズムギターが重ねられ、重厚なサウンド空間を創出しています。そしてコンパクトながらも聴き手の心に染み入るようにギターで奏でられるメロディが印象的です。
JW : “Lighthouse”は何年も前に書いた曲だね。レコーディングも済んでいたんだけど出来上がりには満足していなかった。でも何回かライブで演奏した時は毎回嵐のように盛り上がったんだ。だから僕らのファンにとってはカルトな曲になったね。それもあって今回再レコーディングする事になった。2つのヴァースのなかでキーチェンジを入れたり、プログレのようなブリッジを追加したり、サイケデリックなコードを加える事によって曲がかなり良くなった。殆どのギターパートは初回のレコーディングからそのまま残っているよ。
MM : THE FIXXのようにギターと同様にコードを奏でるキーボードも入っているバンドで同じコード楽器でもあるギターがアンサンブルする上で、曲の中で選択するノートについてあなたが心掛け意識していることを教えて下さい。
JW : 僕は古いロッカーしては珍しくハーモニーやピッチ、スケールに関して知り尽くしていて、モードに関しても全て使い分けるから完全なオタクと言えるかもね。だからと言って感覚的にやることを恐れてもいない。計算しての演奏と直感的な演奏を行き来できるんだ。ルパートはもっと直感的にノートを選択するタイプだけど、彼はいつも素晴らしい結果を引き起こすね。技術的なノウハウはトップレベルだし、頭の中で聞いたサウンドをそのまま演奏することができる狂気的な才能を持っているね。彼のキーボードのフックの価値は測り得ることができないよ。
MM : ギターでのサウンド作りに対してはどうでしょうか。バンドには多彩な音を持っているキーボード・シンセがありますが、それらと調和し、かつギター独自の存在感を出すことに成功しているあなたのアプロチー方法をお聞かせ下さい。
JW : まずヴォーカルやリズム、サウンドへの配慮と、適度なスペースを空けておくこと、そして存在しているパートの邪魔をしないようにサウンドを生成して、引き立てるような高さの音を当てはめていくっていう意思決定をするんだ。コントラストを見せるのも大事だね。平坦なパートからサビ又は勢いのあるサウンドに転換する事で、お互いのパートが引き立つ事になる。適切なギターパートを見つけていくことは宝探しみたいなものだね。力強いフックを見つけ出すことは素晴らしい作業なんだ。
MM : このアルバムの全編で伸びやかで力強くエモーショナルなサイの歌声を聴くことが出来ますが、アルバムのラスト曲”Neverending”では特にダイレクトに彼の声が迫ってきます。
JW : その通りだね。”Neverending”でサイは彼にとって一番高いキーで歌っていて素晴らしい歌声を聞かせている。キーを下げたヴァージョンも試したんだけど高い方が良かった。重要な部分がキーを下げた時に無くなってしまったんだ。歌詞の”no pain no gain”(痛み無くして得るものなし)と言うフレーズはまさにこの曲の事を表しているね。彼の痛みは彼を含む僕ら全ての結果に繋がったよ!だからサイは苦しみながら歌わなければいけなかったけど、彼も真っ先に同意してくれた。
MM : アルバムに収録されている全曲がとても魅力に溢れておりTHE FIXXが、創作能力に溢れた現在進行形であることを証明しています。
JW : 僕たちは長い間バンドをやっていて、平均的なものやつまらないものは受け入れられない人間だから、今までやってきた音楽よりもさらに高みを目指しているし、フレッシュなアイデアを生み出そうと努力しているよ。僕らはバンドメンバーの人間性の違いを反映させるし、それが良い結果に繋がっているっていう珍しいバンドでもある。かなり珍しいと思うよ。そしてそのクリエイティブなエネルギーを捧げていく事に価値があるんだ。
MM : アルバムで使用したギター、アンプ、エフェクター、ペダル類を教えて下さい。
JW :
<ギター>
1.カスタムメイドのコア材を使った Suhr S-TypeとEMGピックアップ(Koa
SchecterのレプリカでニューヨークはRudy’sギターのジョン・サーが僕のために作ってくれたギターで1983年か84年に購入した。)
2. 1961年モデルの Epiphone Olympic
3. Fender Stratocaster 62年モデルの再発。
4. Musicman Axis Super Sport.
<アンプ>
1. 2 x Fender Hotrod Devilles をクリーンな音色のステレオにパンするパーツに使用
2. オリジナルの1962年モデルの Vox AC30
<エフェクター>
1. Suhr Koji コンプ
2. Ibanez Tube Screamer
3. Suhr Shiba ドライブ
4. オリジナルの1981年モデルの MXR ステレオコーラス. ( 僕らが初めてパブリッシャーと契約したその日に新品で買ったもの).
5. Boss スライサー
6. Boss DD500 ディレイ
MM : アルバムにおける多彩なギターサウンドをライヴではどのようにして再現していますか。
JW : 自分の足をたくさん使ってるよ。アンプの設定はクリーンにしておいて、3つのオーバードライブペダルを別々の設定でセットしている。Tube Screamerの代わりに今は Xotic SL DriveやVemuram Jan Ray又はFredricのGolden Eagleを使用しているよ。前述したコーラス、スライサー、ディレイペダルの他にU.A. Starlight Echo Stationを使ってる。レコーディングの時は持ってなかったんだけど美しい音色を気に入っているね。レコーディング時のサウンドをステージで再現するのは簡単ではないね。時には妥協が必要だけど、ベストを尽くすようにしている。”Sound or Fall”はレコーディング時に多重録音をしているので完全に再現するのは不可能なんだけど、ライブ感があるから現場ではいつも盛り上がるよ。正しいセッティングをして信念を持って臨むことが大事だね。
MM : 今後の予定について教えて下さい。
JW : 曲作りのセッションをスタートさせるところだね。実験的な作品になると思う。
MM : ファンへのメッセージをお願いします。
JW : ずっと応援してくれてありがとう。新しいファンへはThe Fixxファミリーへようこそと伝えたいね。次に日本に行くのを楽しみにしているよ!
THE FIXX official site https://www.thefixx.com/
THE FIXX / Every Five Seconds
01.A Life Survived
02.Closer
03.Take What You Want
04.Wake Up
05.Suspended In Make Believe
06.Lonely As A Lighthouse
07.Cold
08.Spell
09.Woman Of Flesh And Blood
10.Neverending