Vol.122 Jeff Kollman / June 2021

Jeff Kollman

ジェフ・コールマンがニューアルバム「East Of Heaven」をリリースした。全曲がインストゥルメンタル曲で構成されたこの作品は、巷に溢れるロック・ギター・インストゥルメンタル音楽とは異なり、映画のシーンが流れていくような時間の経過、情景の変化を聴き手にイマジネーションさせる深みのある音楽作品となっている。それら楽曲を彩るアコースティックギターの美しく豊かな響き、ドライヴしたエレクトリックギターとエフェクトによる幻想的なサウンド、そしてジェフのダイナミクスに富むギタープレイも素晴らしく、聴き手の心にダイレクトに響いてくる。ジェフ・コールマンにニューアルバム「East Of Heaven」について訊いた。

Interview / Text  Mamoru Moriyama
Translation         Hiroshi Takakura

Muse On Muse (以下MM) : 今回のアルバムは、コロナの状況下での2020年に関する音楽による日記のようなもの、とのことですが詳しく教えて下さい。
Jeff Kollman (以下JK) : 音楽による日記って言うほどのものではなくて、いつもならツアーに出ている期間を有効に活用するやり方といったほうが良いかもしれないね。昨年予定されていたツアーはすべてキャンセルになったから、新しい作品をリリースするのに絶好の機会だったんだ。自分の頭の中や内面についてよく考える良い機会でもあったね。

MM : この作品は聴き手の心ににダイレクトに訴える力を持った素晴らしい作品となっています。
JK : ありがとう。僕の他のリリースとは違うフィーリングになったと思っているよ。激しさは少ないんだけど、メロディックで映画のような雰囲気になったかもしれないね。

MM : アルバムの参加メンバーについて教えて下さい。
JK : ドラマーは2人、まずシェーン・ガラースには4曲でドラムを叩いてもらった。シェーンはもう何年も僕のアルバムに招いてるよ。ジョノ・ブラウンにも ”East Of Heaven” と ”Hidden Dimensions” の2曲で共同プロデュースとドラムを担当してもらったのさ。彼と僕とは一緒に映画音楽をたくさん作っているんだ。ガイ・アリソンには僕から連絡して ”67 XR-7” でキーボードを弾いてもらったよ。ガイは矢沢永吉とも仕事しているキーボード奏者だね。ベースは古くからの友人であるポール・シハダーに依頼したよ。彼にはアルバム「Guitar Screams Live disc」でも演奏してもらったね。

MM : アルバムの曲作りやレコーディングはどのように進められたのでしょうか?
JK : かなり個人的でプライベートな曲もあるから、まずは単体のトラックやギターとベースだけのレイヤーから作業を始めるんだ。良いメロディーや面白い構成を思いついたら、その曲にボーカルを入れるのが適しているのか、フルバンドでのインストが合うのか、それとも楽器を減らした方が良いのか、という風にその曲に最適なプロダクションを探して行くんだ。

MM : アルバムは憂いを帯びた内省的な”Loss”から幕を開けます。
JK : TV番組のための音楽としてアイデアが浮かんだ曲で、哀しげな弦楽器のパッドから音をスタートさせて、その上にピックアップをフェイズアウトしたLes Paulのギターの即興を乗せたんだ。曲を書いてレコーディングするまで10分とかからなかったね。

MM : “The Mass Exodus”では冒頭から哀愁溢れるメロディが印象的です。
JK : この曲はリードギターのハーモニーを重ねるところから作り始めたんだ。朝日のように明るくポジティブな音だっんだけど、そこからもっと暗くマイナーコードの曲になった。今のロサンジェルスの雰囲気が反映されているね。たくさんの人がこの街は危険で住むのに難しい都市だっていう事を感じてこの街を離れているんだ。

MM : “Homage To King Edward”はエディ・ヴァン・ヘイレインに捧げられていますが、彼についての印象深い思い出をお聞かせ下さい。
JK : Van Helenを見たのはすごく若い時で、1984年のデトロイトでのライブだった。特にエドワードに衝撃を受けたよ。彼は間違いなくみんなのギターヒーローだったね。ハリウッド・ボウルでの最後のショーも見たよ。エドワードは独特のギターの弾き方でライブをしていて、まるで炎のように燃え上がっていたね。2012年に個人的に会った。彼と一緒にプライベートのパーティーで演奏したんだ。彼とライブできたのも、バックステージでギターについて語ることができたのも最高だったね。彼が亡くなったって言うニュースを聞いて本当に心が傷んだよ。キングへの哀悼の意を込めて、この曲は彼の死の翌日にレコーディングしたんだ。

MM : ミュージック・ビデオも公開されているロック・フィーリングに溢れたインストゥルメンタル曲”Superstring Theory”について教えて下さい。
JK : そうだね。この曲は比較的ストレートなロックの曲として書いたね。AC/DCのようなアプローチでロックが持つ力を表現したんだ。シェーンのドラムが特別なものをこの曲にもたらしてくれた。ミュージックビデオもLAにあるシェーンのスタジオで撮ったもので、ストレートなロックを楽しもうぜ!といったコンセプトのビデオになったね。

MM : “Ghostly”、”Insomnia”などはポジティヴではない曲名ですが、曲が持つ雰囲気や美しさに救われます。
JK : それは言えてるね。暗い曲の中にも希望が芽生えるような曲もあるんだ。こういうダークで哀しい曲は大好きだよ。”Ghostly” はこのレコード中でお気に入りの曲の一つで、Bセクションの展開と対照的なメロディーが紡がれているんだ。”Insomnia” は眠れない朝の5時に作った曲だ。普段の作曲のスタイルとは違うハーモニーのアイデアを試した曲だね。

MM : “67 XR-7″は、車のマーキュリー クーガー XR-7のことでしょうか?
JK : そうだよ!僕が大好きないわゆるマッスルカーで、67年は俺が生まれた年でもあるからね。

MM : “Montecatini Waltz”や”So Long Ago”ではアコースティック・ギターによる表現力豊かな旋律が聴き手を魅了します。
JK : “Montecatini Waltz” は僕がMSGとのライブで訪れたイタリアの町からインスパイアされて作った曲だ。シンプルなイタリア的なメロディーとギターソロで構成されているよ。この曲ではMartin00018で演奏して、ポール・シハダーが素晴らしいベースソロで花を添えてくれた。僕が大好きな友人のカーラ・バッファの弾いたアコーディオンをオーバーダブしてイタリアの雰囲気を加えたよ。”So Long Ago” はもう戻ることができない時代の思い出や憧れのようなものを込めた曲なんだ。ほろ苦くて感傷的な曲だね。ナイロンストリングのギアーをメロディーとソロに加えているよ。

MM : “Isolation 2020″、”East Of Heaven”ではエフェクティヴなギターサウンド、そしてあなたのエモーショナルなギタープレイが独自の世界を生み出しています。
JK : “Isolation 2020” はたくさんのギターのレイヤーを重ねていて、スライド奏法も使っている。過酷な状況の中で行きている人たちの声を反映させたような曲だ。”East of Heaven” ではポストプロダクションの段階でディレイを使って曲に必要な雰囲気を作り出している。使用したのはSoundtoysのEcho Boyプラグインだね。映画的で不朽な感覚を持った曲で狂気的なソロに向かってだんだん盛り上がっていく構成をしている。このソロでは僕のLes Paulに古い59 PAFのピックアップを付けて、さらにElectro Harmonicsのmicro chorusペダルを使って少し違ったサウンドを作り上げたよ。このアルバムの中でもお気に入りのソロだね。

MM : “Hidden Dimensions”、 “The Darkness Resides”は美しくありながらも聴き手を不安な気持ちを伝えます。
JK : そうなんだよ。どちらの曲も不協和音を使っている。自分のその時のムードを曲に反映させるのが好きだからね。”The Darkness Resides” は50年代のホラー映画のような雰囲気を持った曲で、Carvinのエレアコを使った。”Hidden Dimensions” はジョノ・ブラウンと一緒に書いた曲で何回か展開が変わる構成を採る事で緊張感を生み出している。今は不安定な時代だからそういった雰囲気をわざと醸し出しているんだ。

MM : あなたの兄であり、EDWIN DAREの元バンドメイトでもある故トミー・コールマンへのトリビュート”See You On The Other Side” について教えて下さい。
JK : この曲は2012年に亡くなった僕の兄トミーに捧げているんだ。ソロでのアコースティックの音でを中心に、曲の最後に向けて弾いた魂を込めたソロはHamerのsemi hollow ボディーエレキギターでレコーディングしたよ。アコースティックのパートはバリトンチューンのTaylor 414を使用している。この曲がアルバムの最後にふさわしいと思って収録した。

MM : アルバムで使用しているギター、アンプ、ペダル類を教えて下さい。
JK : ペダルはFree the Tone社のFlight Timeディレイ、avatarコーラス、リバーヴもFree the Toneのものだ。ゲインペダルにはKollmanation、ファズにはF Bomb 3とuni-vibe的な音を出すのにDigitechのEX7も使用している。ギターはフェンダーのWildwood Strat、Les Paul、HamerのSemi Hollow body、Fenderの1960 Tele、Martin 00018アコースティック、Taylor 414とKenny Hillのナイロンストリング、Yari Nylon Alverezを使用した。アンプはMarshallのMk2 1978のヘッド、そして僕がWarhorseと呼んでいるBognerにモデファイされたMarshallを使っている。古いGreenbacksを付けた1968か1970のMarshallのキャビネットもいつも使用しているね。クリーンな音色用にFenderのtwinか1967 Pro Reverbも使ったね。

MM : そちら(米国)では、MLB(野球)など一定数の観客をスタジアムに入れて試合が開催されていますが、音楽に関するコンサート開催についてはどのような状況なのでしょうか、今後の展望は開けてきていますか?
JK : 6月にはライブができるようになるみたいだね。アリス・クーパーが主催した野外のチャリティーライブでも演奏したよ。どうやらパンデミックは終わりに近づいているようで、すぐに生活も元どおりに戻りそうだね。

MM : ファンへのメッセージをお願いします。
JK : 日本のファンは大好きで彼らの音楽に対する情熱は素晴らしいよ。また日本で演奏する事を楽しみにしている。僕の音楽をサポートしてくれて、心の底からお礼を言いたい。いつも聴いていてくれてありがとう!!

Jeff Kollman official site  https://jeffkollman.com/


Jeff Kollman / East of Heaven

01. Loss
02. The Mass Exodus
03. Homage To King Edward
04. Superstring Theory
05. Ghostly
06. Insomnia
07. 67 XR-7
08. Montecatini Waltz
09. Isolation 2020
10. East of Heaven
11. So Long Ago
12. Hidden Dimensions
13. The Darkness Resides
14. See You On The Other Side

https://marmadukerecords.bandcamp.com