Steve Lukather
Photo by Alex Solca
スティーヴ・ルカサーがファン待望のソロ・アルバム「I Found The Sun Again」をリリースした。ルークと同時にジェセフ・ウィリアムスもソロ・アルバム「Denizen Tenant」をリリースしており、お互いが各々のアルバムに参加するとともに、そこにはデヴィッド・ペイチも合流している。そのような背景もあり、ルークとジョセフのソロ・アルバムの形式とはなっているものの新生TOTOとしての新たな作品が提示されている・・とも受け止められる。今回のルークの作品「I Found The Sun Again」では、ドラムにグレッグ・ビソネット、キーボードにジェフ・バブコ、そしてベースにはヨルゲン・カールソンやジョン・ピアースといったルークと気心の知れたメンバーとともにリアルなミュージシャンによる圧倒的に素晴らしい音楽が展開されており、聴き手を魅了する。またリンゴ・スターがゲスト参加している”Run To Me”でも聴くことができるような親しみやすくメロディックな曲も収録されており、プレーヤー志向の人達からロック・ポップスを楽しむリスナー層に至るまで幅広い人達に受け入れられるであろう作品となっている。最新作「I Found The Sun Again」についてルークさんに訊いた。
Interview / Text Mamoru Moriyama
Translation Hiroshi Takakura
Photo by Alex Solca
Muse On Muse (以下MM) : ファン待望のニューアルバム「I Found The Sun Again」は、本物のミュージシャン達による臨場感に溢れた演奏、アレンジ、そして心に響くメロディを持つ楽曲が揃った素晴らしい作品です。この作品ではどのようなことを目指しましたか?
Stevie Lukather (以下SL) : 2020年から1970年代へのタイプトリップだね。スタジオでライブのように録音したんだ。メトロノームも使ってないしコンピューターで後から修正したりもしていないリアルな音楽だ。ソロは全てライブで録音されたソロをそのまま使っている。オーバーダブしたのはヴォーカルとダブルのギターと、ちょっとしたアコースティックのトラックだけだね。1日1曲をミックスできる状態までレコーディングして、8日間で仕上げたよ。
MM : 相方のジョセフ・ウィリアムスも同じタイミングで「Denizen Tenant」をリリースしますが、お二人が同じタイミングでそれぞれのソロ・アルバムをリリースすることとなった経緯について教えて下さい。
SL : そうなんだ。最後のTOTOのアルバムが2019年の10月出て、2人ともそこから制作を続けたかったからね。その後にデヴィッド・ペイチが加わった。裁判の件が終わって俺たちはTOTOの名前を保持することができた。俺たちはライブで俺たちの音楽をやりたいんだ。曲たちもやりたいって言っているからね。俺やジョーは引退なんてまだまだ先だね!音楽を死なせるわけにはいかないんだ。
MM : それぞれの作品には、あなた、ジョセフ、そしてデヴィッド・ペイチも参加していますが、TOTOとしてニューアルバムを作ることは考えなかったのでしょうか?
SL : 法的な理由じゃないよ。ジョセフのも俺のレコードもあくまでソロの作風で少しTOTOの色が入っているくらいだね。俺たちはバンドのメンバーで2人は俺のブラザーさ。ペイチは俺にどうやってレコードを作るかを教えてくれた人なんだ。
MM : ニューアルバム「I Found The Sun Again」は疾走感に溢れたロックナンバー”Along For The Ride”で聴き手は一気にあなたの世界に引き込まれます。
SL : ジェフ・バブコとちょっと変わったリフを思い付いて、それをプレイしながらTom Petty and the Heartbreakersのドラマーのスタン・リンチと短い時間で書き上げた曲だね。ジョーも手伝ってくれたのを覚えてるよ。
MM : 重厚なグルーヴとサウンドを持つ”Serpent Soul”では、ミュージックビデオでレコーディング風景の一部も公開されています。アルバムを通してレコーディングはどのように行われたのでしょうか?
SL : 俺が子供の時に影響を受けた70年代初頭から中盤までの音楽とLittle Featってバンドへのトリビュートだね。デモも作らずリハーサルも無しで全てライブのスタイルで録音した。メトロノームも使ってないね。スタジオに集まって譜面を一度だけ確認して、少し修正を行って、一部を再確認して2テイクのみ録音した。採用したテイク2がレコードで聴けるよ。オーバーダブは最低限のもので、日中にトラックをレコーディングした後にヴォーカルを録音したんだ。
MM : “Journey Through”は美しいメロディとエモーショナルなあなたのギターが聴き手の心を打つ素晴らしいインストゥルメンタル曲です
SL : ジェフ・バブコが俺のために書いてくれた曲だね。ギターのアプローチに関しては、俺のヒーローであり友人でもあるジェフ・ベックへのトリビュートとも言えるだろう。ジェフ・ベックの領域には近づけないが挑戦してるよ(笑)
MM : ミュージックビデオも公開されている”I Found The Sun Again”は、幻想的でスケールが大きい美しいバラード曲です。
SL : ガールフレンドのアンバーからインスパイアされてできた曲だ。11年間1人だった俺に安らぎを与えてくれた人だ。TOTOの裁判が終わった時、知人の不幸や他にも失ったものがあって、かなり落ち込んでいた俺と彼女はパンデミックの直前に出会った。自分の面倒を見てくれて、愛を持って世話をしてくれた。それがなければ俺は枯れてしまっていたよ。だからこの曲は彼女の影響があってできた曲で、バブコとジョー・ウィリアムスの助けがあって仕上げることができた。
Photo by Alex Solca
MM : リンゴ・スターが参加している”Run To Me”のゆったりとしたテンポ、親しみやすいキャッチーなメロディは聴き手に穏やかな気持ちを与えます。
SL : この曲は俺とデヴィッド・ペイチとジョセフ・ウィリアムスの3人でリンゴの80才の誕生日を祝う為に作った曲なんだ。リンゴ・スターをスタジオに招いてドラムを叩いてもらって、この曲と映像を使っていいかと尋ねたら快く了承してくれたよ!彼は俺のヒーローで友人でもあり兄弟のような存在なんだ。彼の事を誇りに思ってるよ。彼のRingo Starr & His All Starr Bandには9年間いたからね。彼の新しいEPもリリースされるからチェックして欲しい!
MM : ニューアルバム「I Found The Sun Again」には、オリジナル曲の他にスティーヴ・ウィンウッドのTraffic時代の曲”The Low Spark of High Heeled Boys”やジョー・ウォルシュの”Welcome To The Club”、ロビン・トロワ―の”Bridge Of Sighs”が収録されています。
SL : この時代の音楽を2020年のスタイルでやりたかったから、このアルバムの曲を書く前にこれらのカバー曲を選んだんだ。こういった最高の曲、最高の構成を持つ曲でジャムするのは楽しかったよ。アルバム全体でも言える事だね。
MM : アルバムで使用しているギター、アンプ、ペダル類を教えて下さい。
SL : シンプルなセットアップだね。俺の新しいギターMusic Man Luke IIIにMusic Manのピックアップを付けて、Bogner Heliosのアンプに繋いでいる。ペダルはライブ用のペダルボードに組んでいるStompboxをいくつか使ったくらいで、あまり使っていないから使用している箇所はよく分かるだろう。あとはYAMAHAのアコギ用アンプを使ったくらいだね。
MM : 今作でもあなたの素晴らしいギターサウンドを聴くことができます。
SL : ライブ用のギアでレコーディングしたよ。隠された秘密みたいなのはないね。この仕事に対するベストなミュージシャンを集めた事かな。彼らは最高の仕事、最高以上の仕事をしてくれたから本当に楽しかったよ!
MM : 近頃では難易度が高いテクニカルなプレイをこなす新世代のプレイヤーは多いですが、あなたのようにギターから弾き出されるトーンや紡ぎ出すフレーズに圧倒的な存在感や説得力を持つプレイヤーは少ないように感じられます。スケールの練習などでは得られない、そういった部分を身につけていこうとする場合は一体何が必要なのでしょうか?
SL : 若いギタリスト達のテクニックは俺も付いていけないくらい凄いよ!現実ではないみたいだ。俺も歳をとったから自分はオールドスクールなスタイルなんだなって思うね。俺の場合は9才からバンドで演奏していてこの歳まで続いているからそれが演奏に出ているんだと思う。ギター以外の事は何も知らないからね。ジョージ・ハリソンを目指したように色々なスタイルに挑戦して演奏して来た結果が今の自分になったという事だね。
MM : 最近のミュージシャンの中であなたの興味を引くような人がいれば教えて下さい。
SL : 俺の息子トレヴ・ルカサーと彼のバンドLEVARAはすごく良いよ。新しいアルバム「Automatic」が出たばかりだからYoutubeやSpotifyでチェックして欲しい。アルバムは俺と同じレーベルから発売されてるよ。親バカだよな(笑)でもグレイトな音楽だから聴いてみて欲しい。
MM : コロナがまだまだ収束していない昨今ではありますが・・
SL : 色々な事が本に書かれている。またライブができる日まで待つだけさ。その日が来ればクレージーになるだろうね。
MM : ファンへのメッセージをお願いします。
SL : みんなに会いたいよ!って事だけ言っておきたい。日本へは1980年からほぼ毎年行ってるからね。日本の人々や文化に恋をして、ファンも最高でファンというよりも44年来の友達と呼べるだろう。愛と友情をありがとう。同じ気持ちを俺からみんなに送るよ。またみんなにライブで会える日を本当に楽しみにしているよ!
Steve Lukather Official Website https://www.stevelukather.com/
STEVE LUKATHER / I FOUND THE SUN AGAIN
1 Along For The Ride
2 Serpent Soul
3 The Low Spark of High Heeled Boys
4 Journey Through
5 Welcome To The Club
6 I Found The Sun Again
7 Run To Me
8 Bridge Of Sighs