Vol.116 BLINDMAN / December 2020

BLINDMAN

日本が誇るメロディック・ハードロックの至宝 BLINDMANが通算11作目となるスタジオ・アルバム「EXPANSION」をリリース。今作でも珠玉のメロディ、BLINDMAN節は見事に健在。ボーカルのRay、ドラムの實成峻を迎えた現在のラインナップでのスタジオ・アルバムは3作目となるが、ギタリストとしては勿論、コンポーザー、メロディメーカーとしても音楽に対してジャンルの枠に捉われないバリエーション豊かな楽曲をクリエイトする中村達也の才能があらためて示された作品となっている。メロディックなハードロックといった核の部分は継承しつつも、Ray、實成峻の加入による相乗効果が発揮された音楽的に懐が深く様々な彩どりを聴かせる楽曲群、それらバリエーション豊かな楽曲群をBLINDMAN流として統一感を持たせることへの戸田達也(Bass)と松井博樹(Key)の貢献も素晴らしく、今作は、従来のBLINDMANファンは勿論、これまで以上により幅広い音楽ファン層に響くであろう快心の作品となっている。新作「EXPANSION」についてBLINDMANの各メンバーに訊いた。

Interview / Text  Mamoru Moriyama


BLINDMAN L to R : Hiroki Matsui(key), Tatsuya Toda(b), Ray(vo), Tatsuya Nakamura(g), Shun Minari(dr)

Muse On Muse (以下MM) : 現在のラインナップでは3作目となる最新オリジナル・スタジオ・アルバム「EXPANSION」ですが、メロディックなハードロックといった核となる部分はキープしながらも、その音楽性はより幅広い音楽ファン層に対しても受け入れられる素晴らしい作品となっています。
中村 : そう思ってもらえたなら狙い通りというか、本望ですね。
Ray : BLINDMANにおける僕のミッションは、コンポーザー中村達也の楽曲に対して「いかに良い歌を歌うか」なので、ジャンルとかはあまり気にした事がないですね。「良い歌はなんぞや?」というのは、ヴォーカリストにとって、永遠の課題なのですが(笑)
戸田 : 広く音楽を愛する方々に受け入れられれば嬉しいですね。
松井 : いつもそうなんですが中村さんが作曲モードに入ると1曲、1曲、完成の状態で短いスパンで送られて来るんですが私が過去携わった4枚のアルバムの曲からは信じられないくらい振り幅の広い楽曲たちですよね(笑)今回は正直言ってここまで幅広げて良いの?と思いました。でも実際にスタジオでプレイしてみるとBLINDMANなんですよね!音やアレンジが変わっても中村節が炸裂しています(笑)
實成 : 「この5人だからできる」というのをただの慣用句ではなくて、ちゃんと音で分かる部分で証明できた作品だと思ってます。BLINDMANでこういう幅広いことをやらせて貰えると思ってなかったので、個人的にはご褒美のようなアルバムだと思ってますね(笑)

MM : コンポーザーとしてバリエーション豊かな楽曲をクリエイトできる中村さんの音楽に対する懐の深さ、そしてそれが散漫な感じになることなく、見事にBLINDMAN色として対応出来る力量を持ったメンバーが揃った故のBLIDMANならではの強み、オリジナリティに見受けられます。
中村 : 懐の深さ、良い響きですね。まあ、同じ人が歌って同じ人たちが演奏するわけなので、自然とこのバンドのカラーになるんですけど。メンバーの対応力が高いという事はコンポーザーとして自由が広がるので非常にありがたいことですね。

MM : キャッチーかつポップな曲から硬派なハードロック曲までエモーションに歌い上げるRay節は今作でも聴き手を魅了します。
Ray:ありがとうございます。この5年間BLINDMANで鍛えられたお陰で、ヴォーカリストとしての力量が一段上がったと実感しています。今回の「Expansion」の歌メロに関してはフェイクを少々加える程度で、ほぼデモ通りに歌っています。今回は出来上がりも早く、気持ち良くレコーディング出来ました。

MM : “Promise of Love”、”Love Drifter”などを筆頭にドラムの魅力も炸裂しています。
實成 : 「Love Drifter」はあまり捻ったりせず、自分なりのストレートな解釈で。逆に「Promise of Love」は自分の中で「HR/HMのお約束禁止」の制約を付けてます。多分そんな分かるようなものではないんですけど、自分なりの反骨心というか(笑)

MM : 跳ねた軽快なアップテンポの”Never Say Never”、英国ニューウェーヴなキーボードサウンドが印象的な”One Step Closer”、ゴリゴリに硬派な”Your Melody”といった曲の流れでは、それぞれ異なる性格を持った各曲が見事にアルバムの中で調和しているとともに、BLINDMANとしての音楽に対する懐の深さが伺えます。
中村 : 懐の深さ、良い響きですね(笑) ただ、今回に限らず、違った個性を持った楽曲を1つの作品にすることは常に考えているしアルバムとはそういうものだと思ってる。
Ray : 柔軟性のあるメンバーばかりなので、多様性のあるROCKが自然体で表現できたと思う。
戸田 : それがBLINDMANなのかな。僕自身の持ち味はそこだと思うし。
松井 : “One Step Closer”なんか、いわゆるHR/HMスタイルのキーボーディストだったら8分音符の刻みだけで退屈に思われるかも知れませんが私はこういったリズムのLoopは大好きです。しかもエレピですからね(笑)
實成 : 何故か分からないんですけど、このシーンって自分たちの音楽以外に対して排他的な思想のようなものがあったりする。80年代にロックスターがそういう発言をしてたことへの憧れなのかなぁ(笑)ジャンルがどうこうでなくて、全ての「良い音楽」を分け隔てなく普段から聴いて楽しめる人間が5人いる。当たり前の事なんですけどこれが本当に大きいと思いますね。

MM : アルバムのクライマックスとなる”In the Autumn Wind”は、スケール感のあるドラマティックな曲です。
中村 : こういう曲を書いて、それを各自がきちんと表現出来ることがこのバンドの強みかな。
Ray : 今の季節にぴったりの歌詞でしょ?(笑)
戸田 : 中村さんらしい曲ですね。
松井 : イントロのモノシンセのポリリズムなところが良いですよね?
實成 : 前述通りの「良い音楽」をBLINDMANで実演できたな、と思える一曲ですね。

MM : 哀愁感に溢れるメロディックなギターインスト曲”Over There”や、とても美しいアコースティック小曲”Solitude”がアルバムの中で素晴らしいアクセントとなっています。
中村 : 今まで一度もやってないし、やってもよいのかな? って思って。良いものができたと思うし、やってよかったと思ってる。

MM : ところでBLINDMANさんの曲の歌詞は今作も英語ですが、日本語よりもリズムに乗せやすいということがあるのでしょうか?
中村 : リズムに乗せやすいというか、単純に自分達の作品を良いものにしようと考えると「やっぱり英語でしょ」ってなる。日本語上手く載せてカッコ良いロックを作っているアーティストもいるけどウチの場合はね。
Ray : BLINDMANの楽曲の歌詞は、過去から一貫して英語だったので、英語で書きました。個人的には英語でも日本語でもいいのですけど。いきなり日本語にしたら、多分ファンの皆さんが戸惑うでしょ?(笑)

MM : 歌い手としての表現やファンへメッセージをダイレクトに伝えるといった観点ではボーカル的に英語、日本語に対してはどのようにお考えでしょうか?
Ray : メッセージ色の強い歌詞を書こう、って意図は元々なくて、響きとか雰囲気に合った歌詞を書いています。バンド・アンサンブルの中で、声のトーンや、うまく音の空間を生かせているか、とかの要素を大事にしています。そういった意味では、日本語より英語の方が、良いトーンを当てやすいかもです。

MM : これは前作でもお聞きした質問です。アルバムの中から1曲を挙げるのは難しいかもしれませんが、自分にとって最も印象的な曲、理由をお聞かせ下さい。
中村 : 「難しい」じゃないです。「無理」です(笑)
Ray : “Never Say Never”ですかね。この曲に関しては、はっきりと思いを込めた歌詞の内容になっているので。個人的に思い入れが強いかも(笑)
戸田 : “One Step Closer”こういう曲好きなんです、単純に。
松井 : “Your Melody”ですね。今までBLINDMANに無かったダークでヘヴィーなイントロなんですがBメロからサビになるといつものBLINDMANになる(笑)力強い曲です。オルガンソロもお気に入りです!!
實成 : んー…演奏すればするほどどれも良いなって(笑)”Tonight”は数年前の経験の浅い頃なら絶対こうなってなかっただろうと思うので、そういう意味では自分の成長が見える曲ということで。

MM : まだまだコロナ下で先行きが不透明な昨今ですが、今後はライヴストリームにも取り組まれるそうですね。
中村 : まあね、本当に先が見えないから…。自分達なりに判断して今できることを考えながらやっていくしかない。そういう中での新たな1つの「音楽活動」という感じですかね。

MM : ファンへのメッセージをお願いします。
中村 : こんな状況なので皆さん、身体に気をつけてくださいね。そんな中で「EXPANSION」が喜びとか楽しいとかいう力になれたなら嬉しいです。
Ray : また皆さんと会場で会える日が早く来るといいな、って願っています。
戸田 : 良いアルバムが出来ました。多くの人に楽しんんでもらえると思います。是非、友達や知り合いに勧めてください。
松井 : このような状況でも細やかな楽しみを見つけ日々、頑張って乗り切って下さい!
實成 : 世界中が何もかも初めての事態。ただ、今回のリリースも含めこの状況の中でもBLINDMANを好きでいて下さる人の為にできる事を一つずつやっていきたいと思っています。

BLINDMAN official site  http://www.blindman-official.com/


BLINDMAN / EXPANSION
Walkure Records WLKR-049

01. Love Drifter
02. Angel Smile
03. Promise of Love
04. Tonight
05. Over There
06. Never Say Never
07. One Step Closer
08. Your Melody
09. In the Autumn Wind
10. Solitude
11. I’m falling Down