Vol.114 Bill Leverty / October 2020

Bill Leverty

ジョン・ボン・ジョヴィの後押しにて1990年にデビューアルバムをリリースしたファイアーハウス。そのデビューアルバム「FIREHOUSE」では、ヒット曲となった”ラヴ・オブ・ア・ライフタイム”、”ドント・トリート・ミー・バッド”、”オール・シー・ロート”など、キャッチーかつメロディックな楽曲で多くのロックファンを惹きつけ、以降の活躍へとつながった。そのFIREHOUSEのサウンドの中核を担い、印象的なギターリフ・ワーク、そして起承転結のあるギターソロでフラッシーさと聴き手の心に残るキャッチーでメロディックな旋律を見事なバランスで融合させていたギタリストがビル・レバティ。そのビル・レバティによる最新ソロ・アルバム「DIVIDED WE FALL」でもFIREHOUSEのファンは勿論、幅広いロック音楽ファンに受け入れられるであろう快心のロックを聴くことができる。ビル・レバティに快心作「DIVIDED WE FALL」について語って貰った。

Interview / Text  Mamoru Moriyama
Translation         Hiroshi Takakura

Muse On Muse (以下MM) : 最新作「DIVIDED WE FALL」では、FIRE HOUSEのファンは勿論、幅広いロック音楽ファンに受け入れられるであろう会心のロック作品となっています。
Bill Leverty (以下BL) : ありがとう。この作品でやろうとした事は、シンプルにベストな曲をアルバムに入れるといったものであり、方向性などは特に考えていなかった。1曲書いたらすぐにシングルとしてリリースして次の曲を書くという方法を取ったんだ。このコレクション(アルバム)の為に作った1曲目は6年も前なんだ。このやり方はいつまでにアルバムを仕上げるってプレッシャーがないから、最高の曲を作れる状態だったよ。

MM : 作品は何度も繰り返し聴く度に曲の魅力に気づかされる、様々な音楽的要素が詰まった味わい深い点が印象的です。
BL : 本当にありがとう。どういう曲が良いか、といった先入観に囚われる事なく、それぞれの曲がどうあるべきかにこだわって作ったサウンドだね。メロディー、歌詞、ギターのサウンド、オーバーダブやその他の要素が、最高に輝く状態になるように実験を重ねたよ。全ての音がちゃんと聞こえるようにミックスにもかなりこだわったんだ。

MM : 今作のための楽曲作りはどのように進められたのでしょうか? もしよろしければ普段の曲作りやアイディアのストック方法について詳細をお聞かせ下さい。
BL : FireHouseでは年に55-60回もライブしているし、俺のスタジオではコンスタントにアーティストがレコーディングを行い、俺がミキシング作業をしている。だからこのプロジェクトは忙しい中、愛を注いで作り上げたものだね。このアルバム制作に締め切りはなかったから、好きなようにやることができた。情熱とエネルギーを注ぎ込んで1曲ずつレコーディングした。曲によっては完成に数ヶ月もかかったよ。制作のやり方としてはメロディーとバッキングのコードから作ることが多いね。でも ”Ace Bandage”に関してはサビ全体が一度に思い浮かんだ。通常はサビと曲名を考えてから他のパートを書くことが多い。コーラスを完成させてから、いわゆるプレ・コーラス、ヴァース(Aメロ部分にあたる)を書いて、その曲が必要としていればブリッジを入れるって流れだ。ギターリフに関しては何時間もかけてプレイする事、練習する事によって生まれる。”Divided We Fall”に関してはリフから先に浮かんだんだ。こんな風に曲作りには法則はないんだ。ただプロダクションについて考える事が大事で、そうでなければ何も浮かばないからね。

MM : コロナによる状況下で色々と活動への制限があるかと思いますが、レコーディングはどのように行われたのでしょうか?
BL : “Divided We Fall”以外の9曲に関してはパンデミックが起こる前に完成したものだ。 “Divided We Fall”のみはコロナ時代に入ってから完成した曲だね。全曲は俺のスタジオでレコーディングして、ほとんどの曲は王道ではないやり方で録音した。まず基本的なギタートラックと、ベースラインと俺のボーカル、プログラムしたドラムでデモを作る。その後にマイケル・フォスターとアンドレ・ラベルをスタジオに招いてドラムを録音する。彼らはその道のプロで、曲に素晴らしいエネルギーと創造性を与えてくれたんだ。その後にキース・ホーンにスタジオに来てもらいベースを録音するんだ。彼は真の天才だね。何をどうプレイすれば最高のサウンドになるかを理解している。彼らと曲のビジョンを共有し、彼らが思うようにプレイする事で創造性が生まれ、曲に命が芽生えるんだ。その後にミックスの作業に移る。その段階でもキーボードを加えたり、ギターやヴォーカルのトラックを増やしたりする時もある。時間に追われてないっていうのがよかったね。録音よりもミックスの作業により多くの時間を費やす事ができた。世に出ている曲の中で、ベストにミックスされている曲に匹敵するものにしようとしたんだ。

MM : “You’re A Natural”や”Strong”、”Love Is Like A Song”では、メロディックでキャッチーな曲調、曲に華を添えるフラッシーなあなたのギターソロが印象的です。
BL : “You’re A Natural”は俺が大好きなFマイナーの曲だね。ヘヴィーなキーだからこの曲もアルバムの中で一番ヘヴィーな曲になった。曲を作っている時、何点か変えればさらにディープな曲になると思ったから、ソロの部分にハーモニーを加えて、まるで2人のギタリストが同時にプレイしているようにしたんだ。そういうバンド好きなんだよね。

“Strong”はサビ部分のリフから構築していった曲で、ヴォーカルのメロディーと歌詞が上手くマッチしたと思う。歌詞で妻について歌っていて、彼女からのインスピレーションも反映されている。ソロ部分は自分が心地よく演奏することができるAマイナーのキーで弾いたから、かなり難しいテクニックも試したし、メロディックなパートもあって、曲中にもう1曲あるような展開にしたんだ。後半部分では右手で倍音や他のノートを弾いているよ。ソロを引くときはいつもストーリー性を意識している。ソロが曲のクライマックスになってほしいからね。リスナーには俺のソロを聴いて感情を感じて欲しいんだ。それが俺にとって一番大事なことだね。

MM : “The Bloom Is Off The Rose”では、曲のドラマティックで美しい展開に惹かれます。
BL : ソフトにミステリアスに始まる曲だね。イントロのギターにクレッシェンドをかけて、さらにクリーンなギターを被せる事によってグルーヴを生み出している。歌詞の内容に合ったムードにしたかったのさ。サビの部分では歪んだギターを入れてヘヴィーな展開へと持ち上げて、ヴァース2に入る前の短いソロでは、マイケル・フォスターがシンバルのスタンドを鳴らした面白い音をパーカッションとして加えてくれた。 曲の中間となるブリッジではオーケストラのサウンドを加えて、他のパートとのコントラストを付けて、そこからソロに繋げているんだ。この曲のソロでは速いソロが合うと思ったからかなり速く弾いているよ。最後のサビでは怒りの感情を爆発させてこの曲の本当の意味を伝えているんだ。

MM : アルバムのタイトル曲である”Divided We Fall”について教えて下さい。
BL : この曲はすごく時間がかかった曲だ。歌詞よりも楽曲から先に作った曲で、リフ、コード進行を決めて、次にヴォーカルのメロディーが浮かんだ。でも何について歌詞を書くかが浮かばなかったんだ。何ヶ月も考えてこれってのが思いつかなかったんだけど、” United we all stand tall, but divided we fall(僕らは団結すれば上を目指せる、バラバラになれば失敗する)”っていうフレーズが頭に浮かんでこの曲に完璧だと思った。人間について、人間が結束した時の力強さを歌詞にしたかったからね。僕たちはお互いを支え合う事ができるし、もしそれができなければ僕たちは失敗するんだ。だからこの曲は互いに助け合おうって曲だね。音楽的にはシャッフルのグルーヴがある曲だから演奏するのはすごく楽しかった。Aフラットマイナーのキーは俺にとってとても難しいキーなんだけど、この曲、特にサビの部分のコード進行にはピッタリだったからね。

MM : ブラスサウンドが加えられた”Memorable”や、カントリー、ブルース調の曲”The Heart Heals The Soul”、”For Better Or Forget It”などはアルバムの中でとても良いアクセントとなっています。
BL : ヴァージニア州の出身だからアメリカ南部のロックやカントリーは俺にとって自然なんだ。レーナード・スキナードやZZ Top、ディキシー・ドレッグス、イーグルス、オールマン・ブラザーズやその他のアーティストからも影響を受けてきたから、このスタイルは俺の一部と言えるだろう。 君が名前を挙げた”Memorable”などの曲は南部の雰囲気を持っているね。

“The Heart Heals The Soul”は指弾きのフォークソング的な要素がある曲で、ドブロとマンダリングの音がサビを際立たせている。歌詞の内容は、君が落ち込んでいる時、その感情のトンネルから抜け出す時の光を表している。俺たちは難しい時代を経験して強くなるんだ。そしてその時に俺たちは魂を感じるのさ。

“Memorable”は南部のフィーリングを持ったファンクの曲だ。最後のサビの後にホーンセクションが入って、ジャムして曲の最後を迎える構成になっている。ファンクは大好きなんだよ。聴いていると元気になる、楽しくなるって気持ちをこの曲を聴いたみんなに感じて欲しいね。ギターソロの前のオルガンソロを弾いているのも俺さ。

“For Better Or Forget It”はハードロック/カントリーのスタイルだ。リズムギターはTelecasterしか出せないヘヴィーなトーンで弾いて、ブリッジの歌詞は俺の妻が書いたよ。歌詞の内容は男と若い女が結婚して幸せな時間を過ごすって内容だ。この曲ではドブロ、マンダリン、オルガンとスライド・ギターを弾いたよ。カントリーの音にしたかったからそうなるようベストを尽くしたよ。

MM : 曲の魅力を引き立たせる感情溢れるメロディックな旋律と様々な音楽ジャンルに精通したテクニカルでクレバーな部分を見事に融合させたあなたのギター・プレイはとても魅力的です。楽曲におけるバッキング、リード・ギター、それぞれに対するあなたのアプローチ方法について詳しく教えて下さい。
BL : ありがとう。スタジオ作業においては十分な時間があるかが大事なんだ。時間があれば別のアイデアを試したり実験的な事ができるからね。リズム・トラックの上にヴォーカルを並べて、そのヴォーカルの間を埋めるアイデアを試していく。その隙間はそのままにしていた方が良い場合もあるけど、色々と試す時間がある時は試行錯誤して、音をよく聴いてより良い判断をしていくんだ。指で弾くんじゃなくて頭の中にあるアイデアをプレイするのが大事だね。リードに関しても同じ事で、例えば ”Love Is Like A Song” では、リードギターとリズムギターがうまく絡み合っていて、サビに入ると2つのリズムギターが別のパートを弾いているんだ。お互いを補完しているように聞こえればと思っているよ。いつも心掛けているのはメインのメロディーと同時に響く旋律を入れることだね。みんなに曲を聴きながら、ヴォーカルではない別の旋律で鼻歌を歌ったり、口笛を吹いて欲しいって思っているよ。

MM : 今回のアルバムの中で使用したギター、アンプ、エフェクター、ペダル類を教えて下さい。
BL : ギターは CR Alsipのを2本、”For Better Or Forget It” だけはTelecasterを使用している。CR Alsipのギターは最高で、俺が使っている13は他にない中音域の音が出るんだ。もう1本の俺がハウリと呼んでいるモデルは13と似た音色なんだけど、スイッチ類がヴァラエティに飛んでいる。2本ともスルーネック式のギターで主にパープルハートの木が材料に使われているよ。ギターはFractal Audio Axe FXシミュレータに接続されている。初めの7曲を録った時はFX2を使っていてその後にAxe FX3を購入したよ。Fractalには俺がアンプとキャビネットに求める全ての音が入っているから、それまでに持っていたアンプは2つを残して全て売却した。自分が必要なエフェクトも全て入っているから、他にペダルも使っていないんだ。 もともとエフェクトはほとんどかけない人だからね。だからFractalで全てのサウンドを生み出すことができる。リヴァーブやディレイもほとんど使わない。ギターはドライで録音して、ミックスの段階で少し自然なリヴァーブを入れるくらいだね。

MM : コロナの影響であなたのソロでの活動やFireHouseとしての活動に支障が出ているかと思いますが、今後の活動の展望についてお聞かせ下さい。
BL : 3月時点での状態では何もかも上手くいっていたんだけど、突然ロックダウンが始まった。ライブやコンサートっていうのは一番最初に禁止されて、一番最後に再開される類のものだ。このウイルスはバンドにとってもかなりタフなウイルスだね。FireHouseのライブも3月から1回しかやってないんだけど、その1回は今まで自分が出演したどのショーよりも有難いものだったよ。長い時間プレイして、音楽を感じて、最高の気分だった。幸いな事に、ウイルスによってライブができなくなった直後にソロアルバムをリリースする事ができて、ファンのみんなが俺のウェブサイトからアルバムやTシャツ等買ってサポートをしてくれた。FireHouseとしてみんなの前で演奏する事が待ちきれないよ。30周年のツアーで日本にいく事も待ち望んでいる。このツアーでは俺たちのファーストアルバムから新しいアルバムまで時系列に演奏していて、すごく楽しんでいるんだ。

MM : ファンへのメッセージをお願いします。
BL : 30年間もサポートしてくれて、感謝してもしきれないくらいだ。今年ツアーで会えたら良いね。機会があれば新しいCDをチェックして欲しい。俺のウェブサイトから買ってくれたらサイン付きで発送するから、その旨メッセージを入れてね。何十年間もサポートしてくれてありがとう!!

Bill Leverty Official site  https://www.leverty.com/


Bill Leverty / DIVIDED WE FALL

01 You’re A Natural
02 Strong
03 The Bloom Is Off The Rose
04 Divided We Fall
05 Memorable
06 Love Is Like A Song
07 The Heart Heals The Soul
08 My Right Mind
09 Ace Bandage
10 For Better Or Forget It