Steve Morse
スティーヴ・モーズ(G)、マイク・ポートノイ(Ds)、ニール・モーズ(Kb,Vo)、ケイシー・マクファーソン(Vo, Key)、デイヴ・ラルー(B)といったプログレッシヴ・ロックの範疇にとどまらず、様々な音楽ジャンルに幅広くそして深く精通するとともに、それら音楽に対応するプレイヤーとしても匠(たくみ)の域に達している技量を持ったリアルなミュージシャンの集合体であるFlying Colors。Flying Colorsとしては3作目となる最新スタジオアルバム「Third Degree」は、Flying Colorsが持つプログレッシヴな音楽性、卓越したミュージシャンとしての技量に期待するコアな音楽性を持つファンはもちろんのこと、それ以外の音楽ファン、良質なロック/ポップスを好む音楽ファンの期待にも応える素晴らしい楽曲がバランス良く収録された素晴らしい作品となっている。スティーヴ・モーズに最新スタジオアルバム「Third Degree」について訊いた。
Interview / Text Mamoru Moriyama
Translation Hiroshi Takakura
Muse On Muse (以下MM) : Flying Colorsとしては3作目のスタジオアルバム「Third Degree」は、Flying Colorsが持つプログレッシヴな音楽性、卓越したミュージシャンとしての技量に期待するコアな音楽性を持つファンはもちろんのこと、それ以外の音楽ファン、例えば良質なロック/ポップスを好む音楽ファンの期待にも応える素晴らしい楽曲がバランス良く収録された素晴らしい作品です。
Steve Morse (以下SM) : ありがとう。メンバー全員からの色々なアイデアが詰まったアルバムだから、その中からみんながそれぞれに好きな曲を見つけてくれると嬉しいね。
MM : 今作ではどのような事を目指しましたか。
SM : メンバー全員が何度も聴ける作品を書くという事を今までの全てのプロジェクトで意識している。だから様々なスタイルを取り入れていて、ダイナミクスがあり、激しい感情を伴なうエキサイティングな曲で・・という感じだね。
MM : アルバムジャケットにおける倒れつつある壁を支えているキャラクターのアートワークが印象的です。
SM : 僕にはストーンヘンジ(イギリス西部にある謎の多い石の遺跡)のような石に見えるね。石が3つあるのは、これがサードアルバムである事を示唆している。3つ目の石を立てかけるのに苦労しているように見えるのは、このアートワークのアイデアを決めた時はちょうどこのアルバムを仕上げている時だったからなんだよ!さらによく見てみると、石を立てかけている男はファースト・アルバムのジャケに使われたのと同じキャラクターなんだ。
MM : アルバム用の曲は、今回も前2作と同様にメンバーが事前に用意するのではなくスタジオ入りしてから作曲されたのでしょうか。
SM : 両方だね。もちろんデモも作ったけど、なるべくメンバー皆で一から作るように呼び掛けているよ。そうする事によってバンドの色が入って、僕達のスタイルになるんだ。皆からどんどんアイデアが出てくるから、全員で集まって曲を書くのは難しくないよ。
MM : 前回のインタビューではFlying Colorsの曲作りにおいて、「CaseyとNealが歌詞を書き、あなたが音楽的なアイデアを出してMikeとDaveがバンド全体の方向性を正しい方向へと導いている。」とのことでしたが、各メンバーが集まって作曲やそれら曲のアレンジ作業を進めていく実際の作業についてもう少し詳細を教えて頂けませんか?
SM : そうだね。ただケイシーとニールはサウンドに対するアイデアや意見も多く出しているよ。そして僕がボーカルに対して意見する事もある。僕達のバンドの強みの一つは、全員がそれぞれのパートがどういう風に上手く仕上がるのかをイメージできる事だと思う。アルバムの全曲が違うプロセスで作られていて、この日はこんな感じでやろうってアイデアに対して誰が演奏していくかによって毎回変わるんだ。歌はケイシーとニールが即興で、適当な歌詞か母音だけの音でアイデアを出して、後でしっかりとした歌詞が乗っかる感じだね。僕の仕事は多くの音楽的なアイデアを出して、そのアイデアを生かす方法を提案する事だね。マイクは、可能な限りのアレンジを施す。曲の展開を考えるのがデイヴで、さらにその曲をどうするかについてみんなで決めたアイデアを正しく覚えてくれる頼りになる存在だ。
MM : “You Are Not Alone”ではボーカルのメロディやアコースティックギター、ピアノによるアレンジ、ギターソロのハーモニーの美しさに魅了されます。
SM:ニールが曲を書き始めた時は静かなバラードだったんだ。この曲に関してはニールが持ち込んだ状態から絶対に変えたくないって考えていて、それは尊重したんだけど、音数を足すなどの変更は要求した。ケイシーは過去にハリケーンの浸水被害にあった犬をレスキューするボランティアをしていて、その経験を生かして別々の人間が危機的な状況でどう協力し合うか、という事についてのアイデアで歌詞を書いた。そんな感じで、ニールが持ち込んだ曲は彼だけで完結する事ができるんだけど、それではFlying Colorsの曲にならいから色々と加えたって事だね。
MM : ファンキーなDaveのベースラインやあなたのリズムギターも聴くことができる”Geronimo”は、前2作とは違ったFlying Colorsの新たな魅力を引き出しています。
SM : どのアルバムでもデイヴのベースのアイデアを基にそこから構築した曲を入れるようにしていて、この曲ではケイシーがユニークで素晴らしいメロディーを考えてくれた。そこにニールと僕とでちょっと変わったジャズ調のコードをサビ前に弾いている。このコードはポップとロックとジャズの間くらいの雰囲気を持っていて、サビに向かって盛り上げていく事ができるから凄く気に入っているよ。ヴァースでは僕がボーカルの裏でスライドで弾いているのに対して、ケイシーはクリーンなトーンのスタブを弾いている。
MM : また、素晴らしいドゥーワップやキャッチーなメロディが魅力な”Love Letter”においてもFlying Colorsの新たな魅力を感じさせます。
SM : どこかにユーモアを持ったバンドが好きなんだ。この曲も楽しく作った曲だね。バンドメンバーの多くはBeach Boysのファンだからその影響は音に出ているよ。ニールがバッキング・ボーカルを歌っていて、ボーナスディスクに収録されている、アンプラグド・バージョンで聴くとさらにボーカルが際立っているよ。そのボーナスディスクのバージョンはドラムも入ってないからね。
MM : “Last Train Home”や”Crawl”は、Flying Colorsらしい壮大なスケール感を持つナンバーとなっています。
SM : “Last Train”では「ギターのオーケストラ」ってコンセプトを僕が考え出したんだ。壮大かつ雰囲気があって、ケイシーが歌入れをするのに素晴らしい曲だと思ったんだ。ケイシーはシンプルだけど素晴らしいメロディーを思い付いてくれて、凄く気に入ってるよ。“Crawl”には様々な要素が含まれている。デイヴが弾くヴァースと僕が弾くヴァースを分けて各ヴァースに個性を持たせている。ソロのパートも気に入っていて、メロディアスな感じでスタートしてからだんだんスピードを上げて言って即興のソロをかましたあとに、次のセクションではEbowのギターとフィードバックを使ってボリュームを抑えたストリング調のパートを入れて、それが歓喜的なパートに繋がっているんだ。個人的にはスムーズな流れになってると思うよ。ライブで演る時はシンプルでメロディアスなソロも入れるんだ。
MM : 今作では前2作以上に音楽性の幅広さ、懐の深さを提示しつつも作品として決して散漫な印象を与えることなく、Flying Colorsスタイルとしての一貫性を保つことに見事に成功しています。
SM : ありがとう!Flying Colorsをやるまで、こんなに長いアルバムを作ったことがなかったから、沢山パートがある曲をやるのはハードだったけど嬉しいよ!
MM : アルバムで使用しているギター、アンプ、ペダル類を教えて下さい。
SM : 自分のMusicmanのSteve Morseモデルと、Y2Dモデルの2本のギターを使ったよ。どちらもピックアップが4つ付いている。ボーナスディスクに収録されている曲にはクラシカルなタイプと、スティール弦を使用したタイプのアコースティック・ギターを使った。12弦のギターもどちらのディスクの曲でも使用している。アンプについては常に僕のシグネチャーモデルであるENGLのアンプとスピーカーを使っている。基本的にアンプにつなぐ際にはアンプとギターの間にはKealeyのコンプペダルのみで、そのペダルはクリーンなリズムギターのパートに使っている。ウェット・アンプ用にはペダルボードのTC flashbackペダルをショート、ロングのディレイを使用している。弦はErnie Ballのparadigm slinky stringsを使用しているよ。
MM : ところで、あなた自身は普段はどういった音楽を聴いているのでしょうか? 最近の音楽で気になるミュージシャン、ギタリストがいれば教えて下さい。
SM : つい最近ジェイク・アレンの曲を何曲か聴いたけど、彼は全てのものを兼ね備えているね。他にも最高のプレイヤー達をネットで見るけど全ての名前は覚えられないよ!普段はクラシックやもっと静かな音楽を聴いているけど、そんなに頻繁には聴くことはしない。基本的には音楽的なアイデアは自然に頭の中に回っているよ。
MM : あなたにはFlying Colors、Steve Morse Band、Deep Purpleといった素晴らしい活動拠点がありますが、今後の予定を教えて下さい。
SM : TV番組のBGMを作っているのと、他にも進めている曲が何百曲もあるよ。Deep Purpleのプロジェクトにもさらに関わって行くことになるみたいだね!
MM : ファンへのメッセージをお願いします。
SM : みんながライブミュージックをサポートしてくれている事で僕達の音楽が文化の一部として存在しているんだ。音楽だけが世界共通の言語だからね!近い将来、ツアーで会える事を楽しみにしているよ!
Steve Morse official site http://www.stevemorse.com/
Flying Colors official site https://flyingcolorsmusic.com/
Flying Colors / Third Degree
1. The Loss Inside
2. More
3. Cadence
4. Guardian
5. Last Train Home
6. Geronimo
7. You Are Not Alone
8. Love Letter
9. Crawl