Michael Thompson
Photo by Tommaso Barletta
セリーヌ・ディオン、シャナイア・トゥエイン、フィル・コリンズ、マライア・キャリー、マドンナなど数多くのビッグ・アーティストの作品やツアーに参加してきた超一流のセッション・ギタリストであるマイケル・トンプソンが自身のバンド MICHAEL THOMPSON BANDにてニュー・アルバム「Love And Beyond」をリリース。
アルバムはエモーショナルなギター・インストゥルメンタルの小曲 “Opening” で幕を開け、全編に渡り良質なメロディや卓越したアレンジによる素晴らしいヴォーカル曲が展開される中でマイケル・トンプソンのセンス溢れる極上のギタープレイが駆け巡っている。また、曲と曲の架け橋となるギターによるINTERLUDE(間奏曲)は、ギタリストとしてのマイケルの主張を感じさせるとともにアルバムに独自の世界観を与えている。快作「Love And Beyond」についてマイケル・トンプソンに訊いた。
Interview / Text Mamoru Moriyama
Translation Hiroshi Takakura
Photo by Lindsey Mejia
Muse On Muse (以下MM) : MICHAEL THOMPSON BAND名義としては前作「FUTURE PAST」(2012年)からおよそ7年ぶりとなるニューアルバム「LOVE & BEYOND」ですが、アルバムを制作することになった経緯を教えて下さい。
Michael Thompson (以下MT) : このアルバムを作ろうと思ったのは、Geffenが1988年にMichael Thompson Bandのファースト・アルバム「How Long」をリリースしてから30年経つことに気付いたからなんだ。当時のオリジナルなMTBのソウルな雰囲気を持った作品をファンに届けようと考えたんだ。
MM : MICHAEL THOMPSON BANDの3作目となるアルバムですが、今作では何を目指しましたか?
MT : このアルバムを作るにあたって目指したのは、とにかく最高の曲を作る、そしてメロディック・ロックのファン達が気に入ってくれる作品にするという事だね。
MM : 前作に引き続き、Larry Kingが”WHAT WILL I BE WITHOUT YOU”、”STARTING OVER”の2曲でリードヴォーカルとして参加していますが、彼以外の今作のメンバーについて紹介下さい。
MT : このプロジェクトは、友人であるラリー・アントニオが ”Save Yourself” という曲にブリッジか何かを付け足してほしいと頼んできた時から始まったんだ。出来上がった曲のクオリティにすごく満足したので、そのクオリティを保ったままアルバムを一枚作りたいって思ったんだよ。ラリー・アントニオについては、ベーシストで素晴らしいシンガーだという事は知っていたけど、彼があんなに素晴らしいソングライターだって事は知らなかった。彼とは全部で7曲プロデュースしたんだ。マーク・スパイロとは90年代前半からの友達で一緒に曲を作ってきたけど、しばらくの間、彼と話をする機会がなかったんだ。久々に彼に ”Supersonic” のデモを送ってみると彼はそれを凄い曲に変えてくれた。だから別のトラックも送って、それが ”Flying Without Wings” になったんだ。もちろんラリー・キングともこのプロジェクト以前から仕事をしていて今回 ”Starting Over” を共作したよ。
MM : アルバムの曲作りはどのように進められたのでしょうか?
MT : まず自分で基となるトラックを作り、その上にギターを録音する。そして出来上がったトラックを共作するプロデューサー、シンガー達に送ると彼らがメロディを付け、歌詞を書き、ヴォーカルを録音する。初期の段階では、DAW上のソフトでドラムを打ち込んでいるけど、後からティム・ペダーソンかセルジュ・ゴンザレスによる生のドラムと差し替えている。全パートの録音が終わったら友人でもあるウィン・デイビスに渡してミキシングとマスタリングをしてもらう、といった流れで殆どのトラックは出来上がったよ。
MM : アルバムでは全編に渡り良質なメロディや卓越したアレンジによる素晴らしいヴォーカル曲が展開されると共に、曲に完璧にマッチし彩を与えるあなたのギタープレイも大きくフィーチャーされており、ファンの期待に見事に応えています。
MT : アレンジやヴォーカルを気に入ってくれてうれしいよ。当初はラリー・キングに全曲を歌ってもらおうと考えてたんだけど、ラリー・アントニオやマーク・スパイロの歌い方が好きで、彼ら3人にアルバムで歌ってもらう事に決めたんだ。
MM : アルバムのタイトル曲であり、リリースに先立ち海辺でバンドがプレイするミュージックビデオが公開されていた”Love & Beyond”について教えて下さい。
MT:あのちょっとしたビデオは私のお気に入りだよ。私達の他のビデオに比べるとプロフェッショナルじゃないって指摘を受けたけど、それでも私は大好きだよ。息子のザックと娘のサハラにビデオに出て欲しかったからあのビデオを作った。撮影と編集はザックの妻で義理の娘にあたるリンジーが担当した。だからあのビデオに関してはファミリービジネスだね。
MM : 今作の特徴として、冒頭の”Opening”や5曲の各INTERLUDE(間奏曲)、そして最後の”‘TIL WE MEET AGAIN”とメロディックで印象的なギターインストゥルメンタルの小曲が効果的に配置されておりもう一つのアルバムの聴きどころとなっています。
MT : 作品中に流れがあるアルバムが好きだから、自分でも曲間にうまくはまるちょっとしたインタールードの曲は作るようにしている。私はインストゥルメンタル曲のみで構成されたソロアルバムも2枚出しているから、その流れを引き継いでるというのもあるね。
MM : “FORBIDDEN CITY(INTERLUDE)”などはアジアのテイストも感じられます。
MT : あの曲はネイザン・イーストとのツアーで中国に行った時に訪れた北京の紫禁城(Forbidden City)からインスパイアされてできた曲なんだ。私は日本の楽器である琴を弾いてアジアの雰囲気を取り入れたかった。中国や日本の伝統的な音楽は大好きだよ。
MM : 近頃の音楽シーンでは、ヴォーカル曲の間奏におけるギターソロは以前ほど求められていない、といった論調もありますが、あなたはどのように感じていますか?
MT : もちろん私はヴォーカル曲の中のギターソロは大好きだよ。私はギタリストだからね!ギターソロが曲の一部になっていて、それがメロディアスなら、それはもうリードヴォーカルと同じくらい価値がある。
Photo by Tommaso Barletta
MM : アルバムで使用したギター、アンプ、ペダル類、ピックや弦について教えて下さい。
MT : このアルバムで使ったセットアップはシンプルなものだ。全てのリードとパワーコードはアルバムのジャケットの中でも描かれているペイントされたギターを使った。友人であるグレッグ・バックが製作した一本だ。彼が作ったギターを10本も持っているよ。今回使ったギターにはローラー社のImperialピックアップが付いていて、弦はErnie Ballのレギュラー・スリンキー10-46を全てのギターで使っている。ギターピックはDunlopのMax Gripだけど、ピックの先端ではなくサイドの部分を使用しプレイしている。アンプに関してはSynergy Syn 2のプリアンプとSyn 5050のパワーアンプをセットで使用している。モジュラータイプのプリアンプでファンタスティックな音が出るんだ。Synergy 800とPlexiとBassmanを組み合わせて使用することがほとんどだね。プリアンプのシステムにはエフェクト・ループもセットアップしていてそこにStymonのBig Sky(リヴァーブ)、Dig(ディレイ)とDeco(テープサチュレーター)を配置している。それ以外にもWalrus AudioのJuliaコーラスペダルと、Neo InstrumentsのMINI VENT FOR ORGANペダルも使用している。クリーンなパートには私が1984年から使っているストラトのギターを使用した。今までリリースした全ての作品でそのギターを使っているよ。
MM : 最近は技術の進化により、実際のアンプのサウンドがリアルにモデリングされている機材やソフトウェアが数多く出ています。それらサウンドについてあなたはどのように感じていますか?
MT : 個人的には真空管アンプの音が好きで、アンプシミュレーターは全く使わないね。KemperやLine 6シミュレーターを使ったトラックで凄く良い音のものも聴いた事はあるけど、私は本物のアンプが好きだね!
MM : あなたは長年に渡り音楽の世界でトップミュージシャン達のアルバムやツアーに参加し活躍を続けています。
MT : 35年間セッションをやってきたからスタジオ内の思い出はたくさんあるよ。そのうちスタジオでの実体験を書いた本でも出そうかな。
MM : あなたのように優れたファーストコールのセッション・ギタリストを目指している人達に音楽、ギターへの取り組み方は勿論のこと、仕事に必要とされる心構えに至るまでアドバイスを頂けますか?
MT : 1979年のロスに来た時、私は誰の知り合いもいなくてゼロからのスタートだった。強い欲望と「やってやる!」という気持ちがそこにたどり着くまでのハードワークを続ける原動力になったんだ。みんなが自分の事を覚えてくれるように、強い印象を与える為にすごく努力したし常にベストを尽くしたよ。自分の夢を叶える事ができてほんとうに幸運だった。この成功を神様に感謝している。神様なしでは何も成し遂げれなかったと思っているよ。
MM : 今後の予定を教えて下さい。Michael Thompson Bandとしてのライブ、ツアーなどは考えていますか?
MT : 私の目的は皆に喜んでもらえるような音楽を作り続ける事だね。Michael Thompson Bandでもツアーをやりたいと思っている。素晴らしいバンドだから、あとはイベントのプロモーターと連絡を取ってツアーの日程を組む必要がある。
MM : ファンへのメッセージをお願いします。
MT : ファンの皆様、私の音楽を聴いてくれて本当にありがとう。日本のファンの皆様とはネイザン・イーストとで日本のブルーノートやビルボードでライブしたときに会うことができたよね。みんな最高だったよ!
MICHAEL THOMPSON / Love And Beyond
1. Opening
2. Love & Beyond
3. Save Yourself
4. Passengers
5. Red Sun (Interlude)
6. Supersonic
7. La Perouse (Interlude)
8. Don’t Look Down
9. Far Away
10. Penny Laughed (Interlude)
11. Love Was Never Blind
12. Black Moon (Interlude)
13. Flying Without Wings
14. Forbidden City (Interlude)
15. Just Stardust
16. What Will I Be Without You
17. Starting Over
18. ‘Til We Meet Again
19. Love & Beyond (Acoustic Version) JAPANESE BONUS TRACK
Guitars: Michael Thompson
Lead Vocals and bass: Larry Antonino
Lead vocals: Larry King, Mark Spiro
Drums: Sergio Gonzalez, Tim Pedersen
Keys: Guy Allison